第9話 魔力なし


 ん? あれ? 俺って魔力なしって言われなかったか?


 だがステータス画面を見ると、俺の魔力数値は既に上限値MAXだ。

 魔力 SSS/SSS ってことはだな? もう最高ランクまで上がってるってことだろ?

 何で俺は魔力なしってバカにされたんだ?


「なぁ琥珀? 楽しそうに踊ってる所悪りぃんだが、俺って魔力なしなのか?」

『ぬっ? らんどーちゃまがでちか?』


 琥珀は踊りを止め俺をジッと見つめる。


『そうでちね? ヤバいくらいありまちね。ワレもビックリでちよ』


 ヤバいくらいって、やっぱ魔力あるんじゃん。


「でもさ? 俺この国の奴らに魔力測定されて、計測不可能って出てさ? めっちゃバカにされたんだぜ?」


『ああ、そりゃそうでちよ。魔力測定器ごときで、らんどーちゃまの凄い数値は測れないでち。計れてもせいぜいAレベルまででちよ? ワレはこの世界に、Sレベルはいないと思うでち』


 ああなるほどな。そう言うことか、計測不可能ってのは無くて計れないじゃなくて、あり過ぎてってことか。


 Sレベルがいねーから……!?


「えええええっ!?」


『急に変な声だしてどうしたんだでち?』


「いやさ? Sレベルがいねーってさっき琥珀は言ってたけど、俺SSSレベル何だが?!」


 琥珀が今更何を? とでも言いたげに両肩を軽く上げて首を傾げる。何だその小馬鹿にしたジェスチャーは?


『あのでちね? らんどーちゃまの数値は異常なんでちよ。まさしくチート能力ってやつでち! 理解したでちか?』


「おっ、おん……」


 琥珀に上から言われ、なんか変に喜んで恥ずかしいんだが。


「ん?」


 扉の奥が騒がしくなってきた。宴が終わって人が出てくるんじゃ?

 出てきた奴らにまたなんか嫌味を言われても嫌だし場所を移動するか。


「琥珀ここはちょっと落ち着かないし、どこかに人気のない場所に移動しようぜ」

『そう言うことならわワレに任せるでち! 気配探査サーチで良い場所を探すでち』

「うわっ!?」


 琥珀のまんまる目が、懐中電灯のようにピカっと光り出した。その姿はもう……目立って仕方ない。


 勘弁してくれ!


「ちょ!? 琥珀さん? ありがたいんだが、今は大丈夫だ」

『ふぇ? せっかくワレの力をらんどーちゃまに見せつけたかったんでちが…….』


 俺は琥珀を急いで抱き上げ、人のいなさそうな所へとダッシュした。

 何故なら、今すぐにでも扉が開き中から人がワラワラと出て来そうな気配がしたから。


『らんどーちゃま? そんな慌てなくっても』

「良いんだよ! 俺はこの世界の奴らと顔を合わせたくないの」


 そうだ! 俺が召喚された場所に戻ろう。もう夜中っぽいし、誰もいないだろう。

 俺は琥珀を抱えて、召喚された場所へと走って行った。



★★★



『これはまた広い場所でちね?』


 琥珀が楽しそうに広いホールでクルクルと回っている。


 掃除に来ていた三人のおっさん達は、どうやら掃除が終わったのか、広いホールには誰もいなかった。


「ふぅー! ひとまず安心だな」


 電気がどこにあるのか分からねーが、明るくって安心したぜ。

 誰もいないホールが煌々と明るいなんて、日本なら無駄遣いだーって言われそうだな。


『む? らんどーちゃま? この歪で気持ち悪い紋は何でち?』


 ホールで遊ぶのを満喫したのか、俺の所に戻ってきた琥珀がぷにぷにの肉球で下民紋に触れる。


「ああ……これか? この国の奴らに勝手に入れられた紋だ。下民紋だとよ、これがある限り爺さん達には逆らえないんだ。クソッ」


 バカにされたことを思い出し、思わず床を殴りつける。

 そんな俺を琥珀は何故かニヤニヤしながら見ている。


『ふふふ。やっとワレの力を見せる時がきたでち! その下民紋ワレならちょちょいって消せるでち!』


「え? マジで?」


『うんでち!』


 琥珀はドヤァ~っと効果音がついてるかの如く踏ん反り返った。


★★★


次の更新は十二時十一分です

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る