異世界もふもふ召喚士〜白虎や幼狐ついでにイケオジ達とスローライフをしていたら最強に〜

大福金@書籍発売中

エスメラルダ帝国編

第1話 異世界!?

「今回のも気に入ったぜ。また頼むな」

「はいっ、毎度ありがとうございます!」


 客を送り出し仕事場に戻る。


 今日の蝶は中々生気いきが良く描けたな。我ながら自信作だ。


 まだまだ彫師ほりしとしては未熟だが、俺にタトゥーを入れて欲しいと言ってくれる客もやっと増えて来た。


 もっと実力を付けて少しでも師匠に近付きたいもんだ。


 師匠はこの俺を、この彫師と言う世界に、引き込んでくれた人なんだが……。


 今思いだしても……師匠との出会いは不思議だったな。


 俺が十八の時、世界をもっと知りたいと思い、無計画に色んな国へと歩き旅バックパッカーをしていた。そんな時出会ったのが師匠。

 飲み屋で意気投合し、仕事場で見せてくれた絵の素晴らしさに惚れ込み、俺にも描いてくれと、その場で頼み込んだ。


 俺の背中に描いてくれた、師匠魂心の神龍は、まるで生きてるかのように圧倒的な存在感放っている。


 いつか俺もそんな絵を誰かに描きたいもんだ。


 この神龍に惚れて、弟子入りをお願いしたんだよな。

 まぁ、秒で断られたけど……ははっ。それもまた懐かしい思い出。



 さてと……いま何時だ? 



 机の上に無造作に置かれた、時計に目をむける。

 0時過ぎか、次の予約客までまだ時間があるな……汗いっぱいかいたし、風呂にすっか。

 仕事場は自宅も兼ねてるからこんな時は便利だな。


「はぁーあちぃあちぃ。Tシャツが汗でビショ濡れだな……」


 絵を描く時はいつもこうだ。

 気持ちが入り過ぎて、めちゃくちゃ体力を使うんだよな。


 俺は雑にTシャツを脱ぎ捨て、上半身裸で風呂場に入ると、ふと中にある鏡と目が合う。


「我が身体ながらスゲーカッコイイな」


 右肩から腕まで描かれている、存在感抜群の鳳凰は、墨入れを覚えて師匠に初めて褒めてもらえた、思い入れのある作品。


 ははっ懐かしいや。


 なんだろうな。今日はヤケに師匠の事を思いだす。


 師匠は元気にしてるのか? 今はどの国を旅しるんだろうな。


 師匠の事を思い出し、魂心の作品が見たくなり、思わず背中を鏡に写してみる。


 すると、師匠が描いてくれた神龍が、俺を睨み付け鏡越しに威嚇いかくしてくる。


「くそぉ……めっちゃイカツイなぁ。いつ見ても見惚れる」


 これを見ると、自分がまだまだ未熟なのが身に沁みて分かる。


 まだまだ頑張らないとだな。


「なぁ、琥珀こはく


 俺は左ふくらはぎに描かれた、歪な白虎に話しかける。線も綺麗に引けてないし……なんなら顔だって少し歪んでいる。


 この琥珀は、墨入れの仕方絵の書き方も知らなくて、でも師匠に認められたくって、必死に描いた俺の処女作白虎。


 下手だが俺は琥珀こいつに一番思い入れがある。

 琥珀これを見て師匠は俺を弟子にしてくれたから。


 その時師匠に……。


「……見た目は置いといてコイツには魂が宿ってる。だが白虎にしては少し可愛いかもな。クク」


 なんて言われたっけ……今思いだすと、可愛いとか見た目は置いといてって、失礼な話だな。


 まぁ……師匠らしいけどな。



 などど感慨深く思い出に浸っていたら。


「はっ!? 何だよこれ?」


 急に足元を照らすナゾの光、その輝きはどんどん増し、床一面に広がっていく。


「うわっ!?」


 魔法陣みたいな模様が俺の足元に現れっ?! あっ……やばい意識が飛んでいくのが分かる。これ……ちょっと待ってくれ俺どうなっちゃ……


 ここで俺の意識は完全に途絶えた。





★★★




「素晴らしい! なんと! 見えている上半身だけで聖印せいいんが四紋もあるぞ!?」

「あり得ない……」

二紋にもんでもすごい事なのに」

「これは大召喚士様だ!」

「こんなお方は過去に例を見ないぞ!」

「ああああっきっと素晴らしい召喚を見せてくれるに違いない」

「背中に描かれている神龍の神々しいこと!!」


 セイ……イン?

 ショウカン?

 なんだ?


 何やら騒がしい声が頭にガンガン響き、余りにも五月蝿くて飛び起きる。


「………うるせえな!」



 目が覚めた時には、見た事もない黒い同じローブを着た奴らが、何十人も周囲に集まり、俺を見つめている。ッて言うか服を着ていない裸の上半身を、恍惚とした表情で見つめていた。

 

 ———なんだ!? 


 この気味の悪い奴等は。

 

 それにこの場所は何処なんだよ? 

 さっきまで風呂場にいたってのにさ。


 今は丸い形をした、ホールのような何も無いただっ広い空間に、二十人ほどの男たちが俺を囲んで見ている。


 ハッキリ言って気味が悪い。


 ちょっと待ってくれ!? 

 俺に何があったんだ。

 ここはどこだよ!?

 

 コイツらは何で、俺の裸をそんな目で見てくるんだよ! 


 お前ら変態の集まりか?! 

 正直気持ち悪いわ。


 余りの気持ち悪さに、ボウッと思考停止していた脳みそが、パキッと甦り冷静になる。


 落ち着いて周りを見回すと、どうやら俺以外にもう一人、困惑している男が横にいる事が分かる。


 変な服を着ている奴コイツらの言っている言語は理解できる。


 どう考えても姿形は日本人に見えないのに。


 なんなら俺の隣で呆然とし、同じ状況の男も何人なんだ?! ハリウッド映画に出て来そうな、服装と顔をしてるし。ホントにここはどこなんだよ……。


 俺が怪訝そうな顔をしながら、周りを観察しているのを気付かれたのか、一人の男が近寄ってきて「さぁ大召喚士様、その体に描かれている美しい聖印から、召喚獣を召喚してください」と瞳を輝かせ言ってきた。


 なにを言ってるんだ? 

 

 俺の体に描かれた聖印!? 


 神龍の事か?


 ええと……これはタトゥーですが?


 お前ら何を言ってるんだ?



★★★




——————————

【あとがき】

大福金の新作。

よかったら作品フォロー、★★★、コメント、レビューなどしていただけると嬉しいです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る