第33話 七海ショートストーリー:3
七海ショートストーリー:3
七海ショートストーリーは本編とはまったく関係ありません。もしも七海がやらかしたら、のコーナーです。
『バッティングセンター』
七海は近所の草野球チームに参加している。ポジションはピッチャーだ。七海の投げる球は速く、軟球なので50cm以上ホップしてだれも打てない。計測すれば優に160Kmは超えているいるであろう。キャッチャーはプロテクターに鉄板を入れ、ミットにも綿を詰め、米軍のヘルメットを被っている。弱小草野球チームが強豪チームに変わった。七海の美貌と短パン姿の美しい足が話題となり、近所のおやじ連中のアイドルになっている。試合ではおやじ連中の「七海ちゅわーん」という気持ち悪い声援にクレームが殺到している。ここ10試合は被安打0で防御率の0.00だ。完全試合が8試合、2試合はデットボールでランナーを出してしまった。しかしデットボールを受けた二人は骨折で病院に運ばれ、ランナーにはなれなかった。
七海はピッチングは凄いがバッティングがからきしだった。私は七海のバッティング技術を向上させる為に七海をバッティングセンターに連れてきた。
七海はバットを持ってバッターボックスに立つ。このレーンは球速が時速130Kmで一番速いレーンである。
七海は大きく空振りをした。その後もファールチップがせいぜいで球は前に飛ばない。
「もう、悔しいの! 当たらないの。ホームランが打ちたいの」
七海はバッティングに苦労している。私はなぜか少し安心した。七海にも苦手なものがあるのだ。
「七海、ちょっとトレに行ってくる。あと12球ある。ここにコインを置いとくから、まだ続けたかったら
これをここに入れるんだ」
「うん、わかった」
私は腹が痛くなったのでトイレに行った。多分下痢だ、昨晩飲み過ぎた。漏れそうだ。個室に入ると脳が安心したのか肛門ロックを解除した。やばい、まだ早い! 勝手に解除するな! まだズボンを下していないし便器に座っていない。人間の脳は完璧ではない。脳は勝手に肛門ロックを解除することがある。個室に入った時、外から我慢して帰って来て玄関を開けた時などは『安心のロック解除』に注意が必要である。『やった、間に合ったと』と思ってはいけないのである。トイレに間に合ったのに漏らす。ベルトに手を掛けながら漏らす等の事故は誰にでもある。
大きな駅などでやっとトイレを見つけて入り、全ての個室が使用中だった時は『絶望のロック解除』に注意しなければならない。
『パンッ』という大きな音とともに便器に勢いよくぶっ放すと気分爽快だ。ショットガンを撃った気分だ。トイレから戻ると歓声が上がっていた。
「すごーい」、「えっ、何? あの娘何やってんの」、「危ないよ! でも凄いなあ」、「スタイルいいしカワイイなあ」
七海がホームベース上に仁王立ちになっていた。オレンジ色のタンクトップに白いミニスカートの七海。スタイルは抜群だ。
胸の形は理想的なお椀型だ。足は細目だが健康的で美しい。ふくらはぎの形が素晴らしい。
ピッチングマシーンから球が飛び出す。七海は右腕を突き出しそれを掌底で弾き返した。球はネットのホームランの的に当たってサイレンが鳴った。
「七海、何やってるんだ! ルールが違う、バットで打つんだ! 勝手にルールを変えるな!」
「こっちの方が簡単なの、バッティングは面白いの」
「それはバッティングじゃない、とにかく違う! まるで珍百景だ! 少林寺の修行僧でもそんなことしないぞ!」
次の球がマシーンから飛び出した。七海は腰を落として頭を少し後ろの引いた後、前に首を振った。球は七海のおでこに当たり、弾丸ライナーとなってネットに刺さった。見事なヘディングだった。
「七海やめろ、めちゃくちゃだ! 恥ずかしいだろ!」
「サッカーの練習にもなるの」
「だからバットで打つんだ!」
「道具を使うのは苦手なの。それになんかズルい気がするの。体を使うべきなの」
「もういい、帰るぞ!」
「タケル、200Kmに挑戦したいの!」
七海は笑顔でとんでもない事を言う。このバッティングセンターは130Kmが最速だ。時速200Kmの球を投げる投手はこの世に存在しない。
帰りの電車の中、七海は満足そうな顔をしている。
「バッティングのコツを掴んだの。次の試合ではホームランが打てそうなの。タケル、運動したらお腹が減ったの、牛丼が食べたいの。並盛り3つに生卵をかけるの。特盛だと生卵とのバランスが良くないの」
「七海、バットを使うんだぞ」
「それは無理なの。手で打つの。スポーツは楽しいの、MM378には無いの」
次の試合の事を考えると頭が痛かった。
「タケル、今度マラソン大会に出てみたいの、東京マラソンがいいの」
イヤな予感がした。予感ではなく確実な予想だ。七海がマラソン大会に出れば世界新記録が生まれるであろう。四足走行なら30分を切るかもしれない。もはや新記録というレベルではない。世界中で話題となる。なんとか阻止しなければならない。
「七海、マラソンコースにはヘビが出るんだ。ヘビはマラソンが好きなんだ」
「ほんと? それはダメなの。ヘビは怖いの! マラソンは止めるの! 格闘技大会に出るの」
また頭が痛くなった。これも阻止しなければならない。人命が掛かってる。でも、七海と過ごす時間は凄く楽しい。良くも悪くもこんなにドキドキさせてくれる女性は他にはいないであろう。
七海は最近スポーツに目覚めた。トレーニングジムの見学でベンチプレスをいきなり200kgあげてトレーナーの度肝を抜いた。総合格闘技のジムの体験入会ではジムの選手全員にKO勝ちしてしまった。近所のフットサル大会ではボールを3つ破裂させて退場となった。七海にスポーツを止めさせ、文科系的な趣味をもたせなければならない。七海は本当に世話が焼ける。でもカワイイ。カワイイは正義だ。
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