第32話 うっ、それを言われると何も反論出来ない……
母さん達が出て行ってからしばらくしてインターホンが鳴り響く。玄関のドアを開けるとそこには勝ち誇ったような表情を浮かべた玲奈が立っていた。
「可愛い幼馴染が来てあげたよ」
「悪いがチェンジで」
「ちょっと、何でそんな酷い事を言うのよ」
「だって玲奈だし」
玲奈のドヤ顔にイラッとした俺はそう毒を吐きつつひとまず家の中に招き入れる。猛獣を家の中に招き入れてしまった気分だが流石に手は出して来ないだろう。
「それで今から何して遊ぶ?」
部屋に入った途端玲奈は開口一番にそんなふざけた事を言い始めた。一応俺のお世話をするという名目でここに来た事を忘れてしまったのだろうか。
「何言ってるんだよ、期末前最後の土日なんだからテスト勉強をする以外はあり得ないだろ」
「えー、潤の成績なら赤点の心配とか全くないじゃん」
「いやいや、赤点を取らないのは当たり前だからな」
今回の期末テストで赤点を取るか取らないかのギリギリの攻防を繰り広げている玲奈とは目指しているところがそもそも違う。
「昨日も言ったと思うけど俺は勉強で忙しいからあんまり構ってはやれないぞ」
「分かったよ、とりあえず私はおばさんに頼まれた家事を終わらせておくから」
どうやら母さんは残っている家事を全部玲奈に押し付けたらしい。料理は出来ないがそれ以外ならそれなりに出来るはずなので頼んだのだろう。
「くれぐれも余計な事だけはするなよ」
「分かってるって」
「……本当かよ」
「じゃあ行ってくるね」
そう言い残すと玲奈は部屋から出て行った。色々心配な事もあるがとりあえず勉強の邪魔さえされなければ問題ない。それから俺は集中して期末テストの勉強を進める。
部屋の外からは掃除機の音などが聞こえてきていたため玲奈は一応真面目に母さんから頼まれた家事をやっているらしい。
しばらくしてひと段落ついた俺は席から立ち上がりトイレに行き、そのついでに玲奈が真面目に家事をやっているかの確認をする。
玲奈は洗面所で洗濯の準備をしているようだが何故か呼吸が荒い。洗濯をするだけで呼吸が荒くなる要素なんてないだろと思いながらこっそりと覗くと玲奈は男物の下着を握りしめていた。
「こ、これ潤のパンツだよね。こっそり一枚持って帰ろうかな……?」
うん、想像していた以上に酷い理由だわ。玲奈を見ていると性欲に支配された人間がどれだけ愚かになるかが本当によく分かる。
「一人でトリップしてるところ悪いがそれは俺のじゃなくて父さんのだぞ」
「い、いつから後ろにいたの!?」
「えっ、ついさっきだけど」
普通は足音などで気付くと思うが玲奈は完全に自分の世界に入っていたようで俺の存在に気づかなかったようだ。そして手に持っていたパンツが俺のではなく父さんのものだと分かった瞬間床に投げ捨てていた。
やはり中年のパンツには興味がないらしい。まあ、俺も熟女には興味がないため同じようなものか。それよりも玲奈が想像以上にやばい変態である事が分かり幼馴染としてちょっと悲しい。
貞操逆転前なら男のパンツを持って帰っても笑い話で済むが今の世の中なら社会的に死ぬ可能性しかないのだ。マジで俺が貞操逆転してなくて良かったな。
「真面目に家事をやってくれてるのかと思ったらこれでめちゃくちゃ悲しいんだが」
「ごめん、幼馴染のパンツっていう甘い誘惑には勝てなくて」
「しょっちゅう雨宮先生をよくいじってるけど玲奈の方がやってる事ははるかにやばいからな」
「うっ、それを言われると何も反論出来ない……」
雨宮先生の場合は意図せず色々とやらかしているが玲奈の場合は大体故意だから悪質だ。世の中の女性は突然増大した性欲に振り回されて苦労しているとはよく聞くが玲奈なんてまさにその典型だろう。
「それより俺はそろそろお昼にするつもりだけど玲奈はどうする?」
「あっ、もうそんな時間なんだ。それなら私もお昼にしようかな」
俺と玲奈は何を食べるか話し始める。しばらく二人で話し合った結果近所にあるレストランでパスタを食べる事にした。俺達は戸締りを済ませてから家を出る。
「そう言えばもうすぐ夏休みだよね」
「ああ、玲奈の場合は期末テストで赤点が回避出来ればだけど」
「嫌な事を言わないでよ」
「一応現実を直視させておこうと思ってな」
中間テストの際に英語が赤点ギリギリだった玲奈は期末テストで失敗するともれなく夏休みに補習を受けなければならなくなるのだ。だからここ最近叶瀬も交えて勉強会をやっていたわけだし。
「でも今年の夏休みは色々と事件も起こりそうだよね」
「ああ、貞操逆転現象が起こってから初めての夏休みだし」
「だよね、潤も変な女に捕まらないようにしないと」
「ああ、面倒事には絶対巻き込まれたくない」
絶対にハメを外した性欲旺盛な女子達が何か事件を起こしそうな気がする。言うまでもなく玲奈は問題行動を起こしそうな女子の筆頭だ。マジで警察のお世話にだけはならないでくれよ。
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