後天的貞操逆転世界の異端者〜ある日突然貞操観念が完全に逆転してしまった現代日本でなぜか元のままだった俺、ギラギラした美少女達からロックオンされてしまう〜

水島紗鳥@2作品商業化

第1章

第1話 だからそういう発言を男子の前でするのもセクハラになるからな

 ある日突然この世界は激変した。と言っても宇宙から巨大な隕石が落ちて来たりゾンビウイルスがパンデミックを引き起こしたり、現実世界にダンジョンが出現したりしたわけではない。


「まさか貞操逆転した世界になるなんて誰も思わないよな」


 何が原因でこうなったのかはいまだに判明していないが日本を含む全世界で男女の貞操観念が逆転するという超常現象が起きた。

 もっと分かりやすく言えば女性の性欲が凄まじく強くなり、逆に男性の性欲がめちゃくちゃ弱くなったといった感じだ。

 全世界同時にそんなとんでもない現象が起きたため一時期はパニックにもなったが慣れてきた事もあって今では落ち着きを取り戻していた。

 だから人々は貞操観念が逆転する前とほとんど変わらない生活を今まで通りに過ごしている。だが貞操逆転によって大きく変わった事もあった。


「相変わらず最近のニュースはマジで女性の性犯罪事件ばっかりじゃん」


 性欲が強くなった影響で性犯罪の男女比率は完全に逆転しており、今や男性が被害者で女性が加害者が当たり前になっている状況だ。

 清楚系を売りにしていた某女優が逆レイプ事件で逮捕された時は世間に大きな衝撃が走った事は言うまでもない。まあ、その女優の場合は貞操逆転前からビッチだったらしいが。


「……それにしても何で俺は元のままなんだろうな」


 そう、これに関しても理由は不明だが何故か俺は何も変わってなかった。性欲に関しては特に変化もなく今日もいつも通りムラムラしている。

 ちなみに男性向けエロ動画やエロ漫画などは貞操逆転の影響で需要が無くなり新規生産される数が激減しているらしい。いつか夜のおかずを探すのも大変な日がやってきそうだ。

 そんな事を思いながら俺は学校へ行く準備をして家を出る。学校に近づくにつれて制服姿の男女が増え始めるわけだが女子達は男子に対して性的な視線を向けていた。

 今まで女子に向けていた視線を今度は逆に俺達男子が向けられるのは少し変な気分だ。まあ、俺に関しては全然ウェルカムだが。そんな事を思っていると後ろから突然肩を掴まれる。


じゅん、おはよう」


「おはよう玲奈」


 肩を掴んできたのは幼馴染でクラスメイトの芦田玲奈あしだれなだった。


「俺は別に気にしないけど今の世の中だと男子の体をあんまりベタベタ触ったらセクハラになりかねないから注意しろよ」


「ごめんごめん、つい昔と同じノリで触っちゃった」


 そう謝罪の言葉を口にしている玲奈だが間違いなくわざとに違いない。その証拠に玲奈は明らかに下心丸出しな様子であり目がギラギラしている。多分本人は俺に気付かれているとは思ってすらいないだろうが。


「まさかアニメや漫画みないた現象が実際に起きるだなんて夢にも思わなかったよね」


「だな、世界中で色々な研究者達が原因を血眼になって調べてるらしいけどまだ何も分かってないみたいだし」


「最近は本当に体が火照るから困っちゃう」


「だからそういう発言を男子の前でするのもセクハラになるからな」


 貞操逆転前は普通の女の子だった玲奈が今やエロい事に興味津々の男子中学生みたいになっていて少し複雑な気分だ。

 ちなみに性風俗は男性用はそのほとんどが姿を消してしまったが代わりに女性用が急激に数を増やしているらしい。

 世界中で女性の性犯罪が多発しているため抑制するためにも女性用の風俗は必要なのだろう。そんな事を考えながら俺は玲奈と一緒に通学する。


「よう、潤」


「彰人か、おはよう」


 教室に入ると中学時代からの仲である式波彰人しきなみあきとが話しかけてきた。


「今日の英語の予習はちゃんとやってきた?」


「ああ、やってきたけどもしかして彰人はまたサボったのか?」


「実はそうなんだよ、だから潤のノートを見せて欲しくてさ」


「いやいや、自業自得なんだから自分でどうにかしろよ」


 俺達がそんなやり取りをしているとうちのクラスの委員長である白石麻里が話しかけてくる。


「もし良かったら私のノートを見せてあげようか?」


「いや、白石さんの気持ちは嬉しいけど大丈夫」


「そうだぞ、真面目にやって来なかった彰人が全部悪いんだから甘やかす必要はないって」


 俺と彰人はそれぞれそう答えた。それから俺達は残念そうな表情を浮かべた白石さんをその場に残して教室を出る。


「貞操逆転してから女子が飢えた肉食獣にしか見えないんだけど」


「確かに白石さんは色々とあからさまだったもんな」


 一応平静を装っていたようだが明らかに目がぎらついていた。先程の親切の裏には間違いなく下心があったに違いない。


「てか潤は大丈夫か? ここ最近明らかに芦田さんから狙われてるように見えるんだけど」


「ああ、大丈夫。万が一の事があっても力は俺の方が強いから」


「それだけは救いだな」


 逆転したのは貞操観念だけであり身体能力差に関しては一切変わっていないため普通の女子にはまず力負けしないだろう。


「でもちょっと前までエロ動画とかを見て毎日抜いてたのが嘘みたいだよな、あの日から全く性欲が湧かなくなったし」


「それな」


 俺の場合は全く変わっていないため性欲も今まで通りだが怪しまれては面倒なため適当に話を合わせておいた。果たして貞操観念が元に戻る日は来るのだろうか。

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