私とトーカの将来の夢



 今回は私とトーカの昔の小学校のアルバムに載せていた"将来の夢の欄"に書いたことについての話です。














 「はぁ?」



 私はトーカが言うことに少し引いていた。



 「いやだからー……」

 「いや言ってる意味が分からないとかじゃねーよ」

 


 アイツが何を言ったかって言うと……



 「ユウってどの昆虫が好き?」



 と言う言葉だ。

 今日はトーカの家の中のトーカの寝室で話をしていた。

 コイツの家には久々に遊びに来た。



 それで少し雑談していたらこの会話になった。



 「んーー、どんな昆虫…………"てんとう虫"とか?」

 「そうなんだー………」

 


 トーカは床に座りながら答えた。

 私はトーカの寝室にあるベッドに寝っ転がっている。



 「え?それだけ?」



 私は『そうなんだー』としか反応しなかったトーカに質問し返した



 「ん?何が?」

 「他に何か質問とかないの?『何で好きなの?』とかさ」

 「いやー、虫の中で唯一愛着が湧くフォルムをしているからとかって言いそうだからさ」

 「まぁ、ある意味正解だけど…」

 「それじゃあどうしててんとう虫が好きなの?」

 「ほら、とても丸っこくて見ていて不快にもならないし触ることにも抵抗が私にとって一番湧かないからさ。それに、luck《ラック》を運んでくる虫だし」

 「やっぱな」



 トーカは笑った。


 んーー……


 まぁ確かにトーカが言っていた理由とあまり変わらないな…



 「つーかなんで聞きたくなったの?私が何の昆虫が好きかって」

 「いやー、こうやってただ家でゴロゴロしてんのも暇だからなんか話の話題を作ろうと思ってさ」

 「なるほど」

 「それにお前とは虫取りして"遊んでる"しな」

 「昔でしょ?今は私は全く虫を取るなんて遊びは出来ないんだけど」

 「あ、そうだっけ?昔つっても中学でも少ししてたじゃん」

 「少しな?」



 あ、全然昔じゃねーわ。

 

 …………あ!

 

 私は突如思い出した。



 「そういやアンタ、よく虫取り網を私の頭全体に被せてくるやつ…マジでしつこいぐらいやってきたよね?マジで髪の毛が網に引っ付いたりしてボサボサになるからやめろっつてんのに何度も何度もさ」



 私はジト目をトーカに向ける。



 「あーー、悪かった悪かった」

 「それに、"虫を捕まえた後の虫取り網"でも被せてきたじゃん。マジで信じらんないからね?人として」

 「悪いって……まぁ、確かに俺がガキだったな……」

 「ガキっつっても中学生の時ってトーカ自身が今言ったけどな」

 「あ、そんな最近だったっけ?」

 「うわっ、最低」




 私は更に冷たい瞳を向けた。




 「ま、まぁ、俺達もわんぱくだからな!」

 「"だった"とはつけないんだ……まぁ、アンタは今現在もだけど……」

 「でも懐かしいなー………




 あ!アルバムでも読むか!」

 



 突如トーカが言い出した



 「アルバム?」



 まぁ、私も見たくなったけど……




 そうしてトーカがクローゼットの奥から小学生、中学生のアルバムを取り出した。




 「さて、どっちから見る?」

 「どっちでもいいよ。まぁ、セオリーに小学生の時からので」

 「セオリーってなんだよ」




 そうして私達はアルバムを見始めた。




 「あ、お前、こん時は髪型ショートだったっけ?」




 まずはクラスごとの1人ずつ載ってる写真から見始めた

 いやー、自分でも思うけど私は結構変わってたな。




 「アンタは全く変わらないよね」

 「いやー、それが取り柄だからな」




 ニヤけるトーカを横目に私は次のページへと進もうとした。




 「あれ?お前……」



 あるページを見てトーカが呟いた。



 「ん?何?」

 「お前ってこん時メガネ掛けてたっけ?」



 そう……

 小学校の6年の遠足の時に班で行動してる時のある写真だ。

 その時、班の1人に私が写っていた。




 「あー、これ伊達メガネ」

 「だよな?お前って視力は結構良いもんな?」

 「良いと言っても2.0くらいしかないよ」

 「いやいや、それはよ過ぎる。数値化できるマックスじゃん」

 「と言うのは冗談じゃなくてマジなんだよねー」

 「マジか……つーか自称2.0もあるんだったら何で伊達メなんてしてんの?」

 「………………」



 私は少し言い淀んだ。



 「頭良く見られるかなって……」

 「え?」

 「なんかあの頃は厨二病って訳ではないけど誰よりも頭良く見られたいって気持ちがあったからあえてカッコつけてメガネを買ってもらった……」




 私は少し顔を赤らめながら話した……

 いや、本当に恥ずかしいな……




 「んなことしなくてもお前はめっちゃ頭良いだろ。それじゃあ何で今は眼鏡してねーんだよ」

 「別にしなくてもいいやって気づいたから。以上」

 「お前ってやっぱ可愛いな」

 「うるさい」



 ベッ。


 私は舌を出した。




 そうして、授業中、林間学校、運動会、修学旅行と色々な写真を見まくった。

 やっぱこうして見ると幼いなと思う……

 私はショートにしていてメガネをかけ、あまり写真に写ろうとしておらず…

 逆にトーカはとっても写真に写りたがろうとしていた。







 そして……






 「あ、これ懐かしいなー」



 

 ふと写真を見終わってトーカがページをめくって微笑んだ




 「ん?あー、6年のクラスごとでのなんか"クラスでのランキング"とか"なりたい職業"とかを書いとくアレね」




 そういえば私はなんて書いたんだろ……




 「俺とユウは6年の時は一緒のクラスだったもんなー」

 「そういえばそうだったね。私達のお題はなんだったっけ?」

 「えーと確かなりたい職業だった気がするな……」



 そうして私とトーカのクラスのそのページを開いた。



 あ、本当だ。



 私達はなりたい職業を見た……





 「………………ん?」



 私は目の動きが止まった。



 「ユウ?どした?」

 「ねぇ、アンタがなんかいじった?」

 「はぁ?何を?」

 


 私は"また"冷たい視線をトーカに向けていた…


 いやさっきより冷たいかも。




 「何で私の将来の夢が…





 宇宙飛行士になってるのか謎なんだけど……」





 そう、私の将来の夢の書いとく枠がそうなっていた。



 「え?ぷはっ!!マジじゃん!!そういやお前、なりたかったっけ?」



 トーカはゲラゲラ笑い出した



 「懐かしいなー、そういやお前ってなんか昔は星とかが好きだったもんなー。よく宇宙科学の本も読んでたなー……あ、そこからなんかポエムっぽい台詞回しをするようになったっけ?」

 「いや、今はそんな話どうでもいいよ。何で私の夢を書く所が宇宙飛行士になってんのかって聞いてんだよ」



 ギロリと私は更に強烈な殺気をトーカに向けた。



 「えーー……お前が書いたんじゃねーの?」

 「いや、私はあん時書いた覚えがない……確か大学の教授とは書いた気がするんだけど…」



 ん?そもそも書いてたっけ?

 白紙のままだった気がするな……



 「んーー………あ、そういやこのアルバムを作る係が俺だったじゃん?確かそん時のお前、将来の夢を書いてないことに気づいて俺が書いた気がする。あ、やっばそうだよ。そうそう」



 トーカは1人で勝手に納得した



 「いや、おい!勝手に書くなよ!!書くんだったらせめて許可とれや!!!変なとこで気を使うなよ!!」



 私は少し声を荒げた。



 「いやー…マジで申し訳ない」




 トーカは頭を下げて謝ってきた。

 マジで何やっちゃってんのコイツ…バカなの?




 「……………とりあえずこれはもう許さないから」

 「うぐっ…………」



 そして、私は深呼吸をして落ち着いてそのページに見入った。



 「ふふっ…でも私の夢が宇宙飛行士ってアンタに言ってたっけ?」



 私は少し笑いながらトーカに質問した



 「………なんか今思えばそんな感じがしたんだと思う。よく宇宙についての話になると目を輝かせてたからな」

 「あ、そう言えばアンタとよく月面探索ごっこして遊んでたなー」

 「あー、透明のビニール袋被ってな」

 「あれはマジ危ないから気をつけないとね」

 「それは言えてる(笑)」




 私達は少し笑い合った




 「本当に楽しかったなー………」

 「でも、まぁ、当時は俺が何となくで書いたってことにしていたからユウが本気で宇宙飛行士になりたいのかってことは誰も分からないと思う」

 「つーか、あの時みんながそれを見てなんて言ってたか覚えてないわ」

 「そうだな……………ん?」

 「どうしたの?」

 「あーいや…………俺の将来の夢の欄がさ……」

 「え?」




 私はそこへ目をやった




 そこには………






 【香月燈火かづきとおか

 将来の夢・宇宙飛行士】





 「俺も適当に書いてたな」

 「」





 私達は今度は盛大に笑い合った





 何だろう……


 トーカとはこの頃から……






 「ははっ……まぁ何にせよ、お互い今の夢はまだちゃんとは決まってないよな」

 「そうだね」



 笑い合った後、トーカが言った



 「だけど、とりあえずはお互い将来どうなろうとずっと一緒だってのはもう決まってるんだからな!!」

 「よく恥ずかしげもなく言えるね…」

 「ははっ!まぁな。だから職はゆっくり見つけてこーぜ」

 「無職に行き着くのは無しだからな?」





 "分かってる分かってるー"とトーカは言った





 でも、なんだっけ……






 もっと昔の保育園の頃はトーカの……





 燈火とおかの"お嫁さん"になりたいとも思ってたっけ……






 「ぷふっ」

 「ん?どした?」

 「何でもないから……"トー君"♡」

 「!」



 私はトーカに"2人きりの時でしか呼ばない呼び方"で呼んでやった



 少し顔を赤らめてたな





 完

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