第41話 挨拶がてら
地区大会連覇という実績を持つプレイヤーを交え幕を開けた、俺と碧木のリベンジマッチ。今回は左右に浮いている足場と落ちたら即死の大穴があるという、比較的シンプルなステージで戦う。スタートの位置は、俺が左側、
因みに、ガチでやるトリプルバトルは3人ともかなり久しぶりだ。ようやくゲームがスタートした。
「……うん、予想通り」
最初は慣れないトリプルバトルという事で、慎重に動くかなと少しは思ったが、やはり猛者達は違う。予想通りスタート直後に、ずんたんが使用するカラがこちらの間合いに近付いてきた。
まずは、お手並み拝見だ。
ザンッッ……!
突っ込んできたカラが、俺が使うツクヨミのシンプルな中距離攻撃をガードしながら後ろに下がる。これで相手の勢いは若干削がれたが、俺は流石だなという心の声を漏らした。
実は今の場面、ずんたんの読みがかなり冴えている。
まず、今の攻撃をジャンプで避けようとすると、ツクヨミが得意とする上攻撃に引っかかる。かといってガードだけで防ごうとしたら、ダメージは受けない分勢いが削がれるし次の俺の攻撃への対応が遅れる。
今のずんたんは、後ろに飛びながらガードするという100点満点のプレイでダメージを防いだのだ。
地区大会連覇の実力はダテじゃない。けど、だからと言って俺を舐めてもらっちゃ困る。
そんな事くらい、予測通りだ。
ヒュンッ……!
上空から行動を開始する碧木のキャラ・アリスの攻撃対策として頭上への中距離攻撃を放つ。そして、それと同時に再びこちらに向かって来たカラを迎え撃とうと、速攻を繰り出し一気に間合いを詰めた。
「あぁ、なるほどね……!」
横でプレイする碧木が、俺の行動の意図に気付き声を漏らしながらニヤリと笑みを浮かべる。
ズギャァァンッ……!
そして、その直後にツクヨミとカラがお互い攻撃態勢に入った時、上空から素早い攻撃が降り注ぎ、カラのみにかなりダメージが入った。
『うおおおお!?!?』
『なに今の!』
『今しれっと連携プレイしたよな!?』
コメント欄も大盛り上がりの今の場面、少し分かりずらいから俺が直々に皆様に解説しよう。……まて、皆様って誰だ。
……まぁ気を取り直して、解説を始めよう。
まず、俺が操作するツクヨミの頭上への中距離攻撃は、アリス対策に見せかけたカラへの攻撃合図だ。これは俺の勘と経験で生み出した正確なコントロールで、丁度ツクヨミとカラがぶつかる時にカラの頭上に落ちるようにしている。
それに気付いた碧木は、避ければ何ともない俺の攻撃に対応を開始。これは、ずんたんに「頭上からの攻撃は無い」と錯覚させる為の協力プレイなのだ。
カラがツクヨミへの攻撃に専念し突っ込んで来た瞬間、俺もギリギリまで引き付け攻撃態勢を取る。
……と、ここまでは俺と碧木は同じ考えだったのだろうが、ここからは少しだけ俺の読みが碧木を上回った。
アリスの技が降ってくる直前に攻撃態勢を解除し、さっきのカラのように後ろに飛びながらガードをした。
(……今、俺にダメージ入れようとしたな?)
思ったよりカラにダメージが入っていなかったから気付いた事。カラの頭上では無く、気付かれずにダメージを与える事の出来るギリギリの範囲で、ツクヨミの頭上へ攻撃を仕掛けたのだ。
(……ガードしなかったら、危なかったぞ)
つまり碧木は、最初から俺にダメージを与えるつもりで立ち回っていたのだ。
「……やるねぇ」
小さい俺の呟きに碧木は、またニヤリと口角を上げた。
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