第27話 再会の場所

「……うお!?」

「きゃはは!二十日はつか隙あり~!」


 流れるプールで突如顔面に水を食らった。犯人は声と態度的に碧木あおきだろうな。


「甘いね~?ヴィクロだったら大ダメージだよ?」


 やっぱり碧木だ。てか、プールにまでヴィクロの名を出してくるとは、全国1位なだけあるわ。


「ん〜?あ!ねぇねぇ二十日!お腹空いてない!?」


 ぷかぷかと浮かびながら、水流に身を任せて辺りを見回している碧木が、突然そう言った。ほんとに急だった。


「……確かにちょっと空いてるかも」

「でしょ!?ならさ、あそこの出店行かない?」


 なるほど、なんか食べたいわけか。もちろん断る理由無いしOKだ。てか、出店なんてどこにある?よく見つけたな。


「……!?ちょ、二十日!……その顔の良さ自覚して!」


 よく見えなかったから前髪をめくった時、碧木が顔を赤くしながらそう言った。確かになんか周りがざわついてるけど、そんなに俺の顔不細工だった?

 いや、碧木は顔の良さって言ってるし、流石にそんな酷い事言わないよな……と、信じてる。


「……まぁ、とりあえず行こっか」

「あ、うん!行こ行こ!こっちだよ!」

「……!?」


 気を取り直そうとしたのも束の間、プールから上がった瞬間に碧木から手を握ってきて心臓が破裂しそうだった。


(……世麗せれい、これは恥ずかしがらないのか?)


 心の中で苦笑いしながらも手を引かれ、駆け足で出店へ向かう。1つの事に集中したら周りが見えなくなるタイプだよな、碧木って。


 ◇◆


「お、二十日達も買いに来たか」

「……礼紋れもん達」

「あれ?みんな居るじゃん!」


 出店の前でまさかの全員集合。てか、今までどこに居たんだ君たちは。


「感謝しろよ池添いけぞえ~?君らのデートのためにちょっと遠くから見守っておいてやったんだから」

「……そりゃどーも。てか、別に付き合ってないんだけど?」


 耳元で大岡おおおかがそう囁き、こっちもそう応えた。やっぱりそうだったか。だろうなと思った。


「ね、池添くんさ!超イケメンじゃない!?」

「世麗、あれは手放しちゃダメよ?まぁ、手繋いじゃってるから大丈夫か!」

「な!?べ、別に付き合ってないってば~!」


 少し離れて女子陣でも、何やらコソコソ言ってる様子だ。碧木の言葉しか聞こえなかったけど、2人きりだったから俺と同じような事言われたのかな?


「……あの~」


 突然、なんか聞き慣れた声が、女子陣の方から聞こえてきた。


「……へ?私?」

「わーお、すっごい可愛いじゃんこの子」


 急に女の子から声を掛けられた碧木は疑問符を頭の上に浮かべ、彗星すいせい達はその子の可愛さにびっくりしている様子だ。


(……ん?おいおい、あの子……つーか、あいつ……)


 前髪を掻き分け視界に入った女の子の姿を見て、その場に居る誰よりも驚いた。


「なんで居るんだ……」


 ――立ち上がりその子に声を掛けようとした時、


「あの、池添 二十日の彼女さんですか!?」

「……え、え!?なんで二十日を……今は違うけ……ん?」


 先にそう言ったのは、少女の方だった。その質問にこんがらがってる様子で答える碧木。多分、「なんで俺の事を知ってるの?」と「付き合ってないよ」って言おうとして、ぐちゃぐちゃに混ざっちゃってる。


 まぁ、皆さんもこの子の正体気になってると思うんで、そろそろ俺が動きますね。待て、皆さんって誰の事だ?


「……残念ながら、さきが思ってるような関係では無いよ」

「え?二十日!?……てかこの子誰!?」


 今の碧木は、俺が目の前に居る子の名前を呼び話し始めたことにびっくりしてる。ほんとに感情と表情豊かだなこの子は。


「……二十日、久しぶり」


 少女は俺の姿を見て、こっちに挨拶をしてきた。うん、久しぶりの再会がまさかこことはね。


「あぁ、一瞬誰かと思ったわ」


 どうやら、礼紋もこの子の正体に気付いたようだ。てか、さっき感じた視線もようやく分かった。多分こいつだ。


 花火ヶ丘学院はなびがおかがくいん高等学校スポーツ科1年、女子バレーボール部所属。今は親元から離れをしていて、が居る。


 ――ここまで説明すれば、ピンと来た人くらいは居るはずだ。


 そう、彼女の名前は池添 咲。要するに、俺の妹だ。

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