第9話 全く同じ
「ほら!これ!」
家庭科教室への移動中、ほんと目の前に財布を提示した
「……まじで一緒だね、たしかに」
俺の財布についてる小さな
「……同じ祭りに居たとしか考えれないよね。
「い、いや?……特には?無いことは無いけどみたいな?とにかく無い!」
え?何今の言葉の濁し方、碧木にしては珍しいな。「無い」がめっちゃ多かったけど、とにかく無いんだね。となるとますます、全く同じ御守り達の謎と、俺らの昔出会ってるんじゃね?疑惑の謎は深まるばかりだ。
(……なんか知ってんのかな?)
心の中で碧木の様子はちょっと気になったけど深追いはせず、言ったことを信じることにしよう。ちなみに俺は、正直ほぼ何も覚えてない。
「て、てか
話題が唐突に切り替わった。
そして碧木は、遂に目まで覆うようになった俺の前髪を、覗き込むようにして見てきたのだ。だから、それ反則なんだって。顔近いし可愛すぎるのよ。
「暑いし邪魔じゃない?大丈夫?しかも、さっぱりしたら結構モテちゃうかもよ〜?」
「……え、あ、ちょっ!」
俺の前髪は、不意に伸びてきた碧木の右手によってめくられた。
この行動をしたのは、
てか碧木、めくったまんま微動だにしなくなったんだけど。くぅ、そんなに俺の顔がキモかったか。許せ。
「……暑いけど面倒臭くてさ。別に誰も興味示さないからいいかなって」
この状況を打開すべく、考えていた言い訳を伝えた。まぁ言い訳というかほぼ正しい答えだけどな。あそれと、誰も興味を示さないって事も正しい。なんだろう、涙込み上げてきそう。
「……あ、え、うん!そうなんだ!あ、家庭科始まるよ!?急ごう二十日!」
やっと喋ったと思ったら、駆け足で家庭科室へ駆け込んだ碧木。やっぱり、ほんとに俺の顔がキモかったからかなと不安になったが、ほんとに時間がやばかったし、俺も急いで家庭科室内へ駆け込んだ。
◇◆
「どーした碧木ちゃん。顔赤ぇけど、なんかあった?」
「……へ?」
礼紋の指摘によって碧木は、初めて自分の顔が赤い事に気が付いた。暑さも
「その様子だと前髪めくったかなんかした?」
「……え、なんで分かったの!?」
ピンポイントで的中してきた事に驚いた碧木。礼紋は当てて当然という様子で、にやりと表情を動かし話を続けた。
「……だって、二十日は」
――髪さえどうにかすりゃ、めちゃくちゃイケメンだもん。
◇◆
「……あ、あ、
自分の噛みっぷりにびっくりしながら、隣の席の
「んー?見た事ないな。世麗と同じやつじゃん」
「……や、やっぱりそうか。あ、ありがと」
やっぱり俺は、礼紋と碧木以外だと、陰キャを存分に発揮出来るようだ。
「んで、美少女と同居してるらしいけどどーだい?」
「……え、あ、あぁ。何とか楽しめてるよ。あはは……」
頬に手を当てながら話す彗星。話を展開する力が凄い。陽キャってみんなこうなの?
「ま、仲良くしてあげてね。世麗が男子にあんだけ心開いてるなんて珍しいからさ」
「あ、い、いえいえ。こちらこそ」
多分「こちらこそ」を彗星に言ったところでなんだが、自然と出てしまったからもう仕方が無い。
てか碧木、男子全員にあんな感じなのかなと思ってたけど違うのか?彗星の言葉的にそうなるよな。
だとしたら、なんで俺なんかと仲良くしてくれるんだろうか。
(……同居してるからってのもあるか)
◇◆
「ま、まぁそれはそうなんだけどさ」
礼紋の言葉に肯定はしつつ、碧木はちらっと別の場所を見る。視線の先には、やはり二十日が居た。
(……左目の、ほくろ)
彼の目元は前髪で隠れてよく見えないが、ちらりと見え隠れしているほくろ。
碧木はそれを、なぜか懐かしむような表情で見つめていた。
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