第一部 第三話 ヨウムは覚えていた 中編 下
「何してんだてめぇら、さっさとやっちまえ!」
そう叫んだ主犯格と思しき男にモネは、
「ほう、いきなりあんたが主役と名乗ってもうたみたいやけど、今は見逃したろか。右の二人、行くで」
静かに呟く。
腰を怪しく、そして艶やかに廻したかと思えた瞬間。ドスの銀色の輝きが、しゅッ、と閃いたと見えるや、二人の漢が地面に倒れ込んだ。峰打ちである。
「言うたらやるっちゅーたやろ! 今度は次のおまはんや。行くで」
言いつつ、ドスを斜め上に掲げながら、すッ、すッと二歩近寄ると、
「武器の使い方も知らんで、ようテロなんかやりよるな。遠いとこ、逝っとけ!」
もう一歩歩み寄って、ナックルを装備していた男に一撃。男は地面にぶっ倒れる。
セキュリティスタッフから感嘆の声、加勢の声があがった。モネはいたって冷静で。
「おまはんも、
さらに一撃、今度はバールを手にしていた男に。同じく、床にもんどりうった。
残るは日本刀を佩いていた男一人だ。気づくと人質にとられていた少女は、恵が保護していた。
「お吟とは格がちゃうわ! まだこれでもやるっちゅうんかい! 尼っ子は殺る言うたら殺るで。これからのおまはんの人生、台無しにするつもりかいな!」
「う、うるせぇ、ビッチ風情が! 何が尼っ子だぁ」
から元気を取り戻す男。モネは間髪を入れず大声で、
「戯けもんがッ!」
言うと、相手は肩をビクッとさせた。
「どうもおまはんだけはこのお吟のドスが赦したくない言うとるみたいやな。ちょい痛いかもしらんけど、しばらく長めに逝ってもらうで」
すぅッ、すぅッと体を動かし、一筋の煌びやかな閃き。相手は相当こたえたらしく、嗚咽を漏らし、ついには汚い白濁した反吐を吐いて倒れ込んだ。
生かさず殺さず、それがモネのモットーである。
事実、モネは真の意味で刃を剥いたことはない。
「北町警察だ! 全員動くな!」
と警察官の声がしたときには、すでにモネと恵、少女の姿はなかった。
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