第四十章 な、なんでもない・・・
「おそ~~~い!!!」
「悪かったって」
「本当にそう思ってる!?」
帰ってきて早々、
『
わしは美紀が怒っているのを見ながら袋からプレゼントを渡した。本当は家に帰ってゆっくり決めようとしたが美紀がこの状況なのでこの場で渡すことにした。
「え?」
突然のことで美紀が困惑する。
「これって・・・?」
「お主の誕生日プレゼント」
「え、これ私に?」
「当たり前じゃろ」
ちなみに今回美紀に渡したのはピンク色のマフラーじゃ。冬にマフラーをつけてたところを見たことがなかったからおそらく持っていないはずじゃ。色は・・・すまん許してくれ。今時の女子高生の好きな色なんて知るか!
「・・・・・・・・・」
「美紀?どうした?」
すると突然美紀が下を向き黙り込んでしまった。しまったな、やはりピンクはまずかったか。子供じゃあるまいし・・・
「あーすまん。嫌じゃったらもっとマシな色を・・・」
「・・・の」
「ん?の?」
「いいの!!!うれしいから!!」
美紀は大声で叫びながら袋をわしに勢いよく突き出した。えっとなんでキレ気味なんじゃ?わし、なんかしたか?
「明日・・・ってかもう今日ね。
そういって美紀はわしに袋を受け取らせると走って家の中に入ってしまった。な、なんじゃ・・・?
「しかし、美紀のやつ。ちゃんと用意していたのか」
実はわしは美紀の誕生日の次の日である10月31日が誕生日なのだ。だからこういうことは珍しくもない。しかし・・・
「あそこまで怒らなくてもいいのに・・・」
まぁ誕生日プレゼントをもらったのでわしは少しテンションを上げながらそのまま家の中に戻った。
———あっそうだ。今日わしが買いまくったあいつらどうするか?まぁうちに置いといていっか。
「さて、今日は何をするかのう・・・」
翌日、わしは家でくつろいでいた。
今日は休日なので学校はないしほかの奴らと予定は特にない。ボーイスカウトのところは今日、休みときた。
さて、どうするか考えろ。どこかのCMで言っとったじゃろう。『考えよう、答えはある』って。あそこどの企業だっけな?
そんなくだらないことを考えながらわしは部屋を出て一階に降りていた。理由はもちろん、お菓子を食べるためじゃ。あ、そういえば
一階に降りてリビングに行くと母さん、
「どうしたんだ?」
「あ、次射!」
瑠奈がわしに気付くとわしの元まで猛ダッシュで駆け寄ってきた。いやそんなに距離ないけどな!
「今、暴動事件が多発してるでしょ?そこに虎君が行っちゃったのよ!」
「なんだと!?」
最近起きている暴動事件とは・・・
一昨日からある場所で起こっている事件だ。具体的には警察署に突撃してきて銃や警棒を奪うとかじゃな。
この事件の発端がどこなのかわからんが
わしはスマホを取り出しグループチャットを開いた。グループ名は『クラスB 戦闘メンバー』。
『次射:虎二が最近話題の暴動事件が起きている場所に向かったらしい』
『MIKI:虎二さん結構強いけど危なくない?』
『次射:ああ、じゃから今からわしもそこに向かおうと思うんじゃ』
『
『次射:リア充は黙ってろ』
『禾本 和樹:お前そんな言葉知ってたのか!?』
『次射:わしを舐めんなよ!』
クソ!禾本め!わしをバカにしやがって!!わしだってリア充って言葉くらい知ってらあ!!
『MIKI:喧嘩してないで!今は暴動事件の場所に向かうかどうかでしょ!?』
『CHIE:俺はいけるよ』
『MIKI:私もいける』
『次射:よし、昼から
美紀からOKというスタンプが送られる。よし、わしも準備しないとな。そして禾本、休日明け覚悟しとけよ。
わしは二階に上がり自分の部屋に入った。そして必要なものを取り揃え、カバンの中に入れた。一応万が一のためを考えて食料をいくつか持っておくことにした。
ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!
スマホのアラームに気付き、わしはすぐにアラームを止め用意したカバンを手に取る。それを背負ってわしは一階に降りる。瑠奈が不思議そうに問いかけてくる。
「あれ?次射、どこに行くの?」
「ああ、ちょっと友達と遊んでくる」
「そう・・・気を付けてね?」
瑠奈は少し心配そうな表情を浮かべながらわしを見送った。わしはすぐに隣の美紀の家に向かい、スマホで知らせる。
『次射:おぬしの家の外で待ってる』
『MIKI:わかった、すぐに行くね』
「ごめん、おまたせ」
ほんの数十秒経った頃に美紀が家から出てきた。美紀は戦いやすいようにズボンで来ていて、髪も結んできている。
わしは美紀と合流してすぐに前々駅に向かった。時間は現在11:30。この調子なら45分には到着できるだろう。
走るかどうか迷ったがわしらはゆっくり歩くことにした。理由は至極単純。駅に向かう間に体力を消耗したくないからじゃ。
相手の勢力がどのくらいなのかが不確定な以上、こちらも万全の状態で戦わねばならない。そうでないと足元をすくわれてすぐに全滅してしまう。
わしもよく考えるようになったもんじゃ。いつもだったら何も考えずに突っ走っておったじゃろうけどな。そういえば現在のステータスはどうなっておるんじゃろうか?まぁ後で見ればええか。
「おっ
歩いてしばらくして前々駅に到着した。駅には既に遅延が待っていた。遅延はわしらに気付くとつついていたスマホをポケットにしまいわしらの方へ近寄ってきた。
「ずいぶんとのんびりと来てたんだね」
「今から戦うんじゃぞ?無駄な体力消耗は避けたい」
「ま、いいか。行こう、もうすぐ電車が来る」
「いや、電車は使わん」
そういいわしはいつしかのゼクターマシンを取り出した。遅延がハッとした表情でわしに話す。
「そうか!ゼクターマシンで飛んでいけば!」
「そうじゃ」
それにゼクターマシンで行こうとしたのにはもう一つ理由がある。
それはその地域の駅が閉鎖されているかもしれないと懸念していたからだ。危険な場所となると市外へ出てしまったらさらに被害が出てしまい手に負えなくなるからだ。おそらく警察側もそう考えて今は誰も入れん状態になっている可能性が高い。
わしらは風魔法が搭載されているゼクターマシンを装備すると起動し、空中に飛び上がった。そしてそのまま暴動がおこった地区に移動した。
「見えてきた、あそこだ」
飛行して数十分が経った頃、遅延が指を指しながら声を上げた。わしは遅延が指さす方向を見る。
その光景を見てわしは思わず絶句する。
———焼け荒れた街並み。
———数多の銃声。
———至る所に付着している赤い血。
———枯れ果てた植物。
戦後のような光景だった。その光景を見てわしの頭の中に見たことのある記憶が流れ込んでくる。
———それは忘れかけていた幼いころの戦争の記憶。
「・・・い?・・・じい?・・・・・・・・・次射!」
「ん?あ、ああ。どうした?」
「どうしたじゃないよ!さっきからずっと顔が青ざめてたけど・・・なにかあったの?」
わしは現実に戻ってきた。昔のことを思い出して気分悪くなっていたからか冷や汗が止まらない。
「な、なんでもない・・・」
わしは「スーハー」と何回か深呼吸をした後、美紀たちの方を向いた。
「もう大丈夫じゃ、行くぞ」
わしが町の方へ向かうと美紀と遅延は黙ってわしについてきた。
しばらくして町の中心に到着した。周りを見渡しても人の気配はない。町は完全に荒廃しており、どこかのゾンビ町のような感じだ。
「これはひどい・・・」
「う・・・」
「美紀、大丈夫か?」
美紀が吐きそうになっているのでわしは美紀の背中をさすった。しかしこれほどまでとはな・・・
するとわしの本能が「避けろ!!」と言ってきた。わしは気配のある方に視線を向ける。その先には銃弾が飛んできていた。わしは即座に
逃げる時に少しだけ見えたが老若男女問わず一般の住民らしき者たちが5人ほどいた。そして全員に拳銃が握られている。
「クッ!」
一気に
わしはそのまま襲雷で建物に身をひそめながらその場から離れた。少し走った先にシェルターのような場所を見つけた。本当はこういうのはちゃんと確認しなきゃいけないんだが・・・
「このシェルター開くか?」
わしは自分に問いながらパネルを操作した。するとカメラから赤外線のようなものが放射されわしらの体をスキャンし始めた。
『暴徒でないと確認、入ってよし』
コンピューターがしゃべった後、シェルターがゆっくりと上がった。わしらはそのまま中に入りシェルターを閉めた。
ひとまず安全なところに来たのでわしは抱えていた美紀をおろし、掴んでいた遅延の手を離す。
「た、助かった~」
「ありがとう、次射」
「それよりもこの下の階段・・・果たして降りていいのか・・・」
わしが向ける視線の先に美紀たちも向ける。
シェルターの中には簡易的なベッドやボロボロの武器、そして隠し階段らしきものがあった。まあ隠し階段の割には何も隠してないんだけどな・・・
わしは美紀たちと相談し、この階段の奥に進むことにした。どっちにしろ今からシェルターを出たら住民たちに囲まれて銃撃を浴びて一巻の終わりじゃ。
「これは・・・」
しばらく階段を降りるとその先には一つの扉がたたずんでいた。硬い金属で作られているようでわしの全力の一撃でも破壊できなさそうだった。
扉の性質をもう少し確認したいと思い、扉に手を触れると・・・
『警告!警告!侵入者!!繰り返す!侵入者!!』
コンピューターの声とともにうるさい警告音が鳴り響く。やばっ!これはまずいかもしれん!!
「一度、戻って———」
わしが美紀たちに指示をしようとしたその瞬間———!!
わしの背中を蹴る者がいた。そやつはわしを蹴り飛ばした後に、すぐさま美紀に間合いを詰めていき一瞬で気絶させる。わしは何とか立ち上がりそいつを見る。
黒ずくめの服にフードを被っており、顔はよく見えない。スタイル的に女か?
「お主、何者じゃ?」
「それはこっちのセリフだ。なぜ私のシェルターにいる?」
女が拳銃を手に取りこちらに向けてくる。おぉ怖い怖い。この町は拳銃が当たり前のように出回っているのか?
とりあえず手を挙げてわしは敵意がないことを示す。
「わしは怪しいもんではない。ちょっと人探しをしていてな」
「人探し?」
「ああ、わしの父親がここに来たらしいんじゃが・・・何か知らんか?」
「・・・知らないな。ここ数週間暴徒以外の人間に会ったことはない」
「そうか・・・」
どうやらこの女は一人でこのシェルターに隠れ住んでいるようじゃ。となるとほかの者たちは全員暴徒と化したのか?
一瞬そう考えたがわしは一度考えるのをやめた。それよりも今はこの女と情報を共有してもらう方が先だ。
「どうして町がこのような状況なのか教えてくれるか?」
「あなたたちが信用できる者だっていう証拠は?」
うぅ~む、信用できる者だっていう証拠か・・・そうじゃ!!
わしはいいことを思いつき話しかける。
「ワレワレハウチュウジンダ」
「は?」
「ドウダイ?コレデシンヨウデキルカ?」
「舐めてんの!?」
「そんなことないわい」
宇宙人声をしてみたがどうやら彼女にはバカやってるようにしか見えないようじゃ。わしは丁寧に説明する。
「おそらく暴徒の奴らは声真似とかそんな器用なことはできんじゃろう?つまり声真似できる奴らは皆信用できる!!」
「何そのトンデモ理論!?」
女が驚愕する。いや表情は見えていないから驚愕しているように見えるというべきか。
すると女は「はぁ~」と一息ついてから拳銃をおろした。
「わかったよ、とりあえずは信用することにするよ」
「助かるわい」
わしはとりあえず気絶させられた美紀を抱えた。威力が強すぎたのかまだ気を失っている。女が扉を開き、中に入った。
そこには一種の研究室のようなものがあった。三角フラスコや試験管、さらには大きな壺まである。どこかの魔女の部屋と科学が融合しているような感じだ。
すると女がフードを脱いで素顔をあらわにする。先ほどの地味な服とは相性が悪そうなハーフアップのシルバーの髪に青い瞳。
女が先ほどの状況では考えられない笑みを浮かべる。
「初めまして!私は
彼女、篠宮は元気いっぱいの声でそう叫んだ。
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