第三十八章 いらないことを話さないで!

 10月30日。わしは一人、ショッピングモールの中で買い物をしていた。なぜここにいるかって?それは・・・


「おっ次射じい!」


 わしがボーっと歩きまわっていると禾本のぎもとがやってきた。どうやら奴もここに買い物をしに来たらしい。禾本が少し驚いた顔をしながらわしに話しかける。


「珍しいな、お前がショッピングモールだなんて」

「ちょっと用事があってな」

「へ~、なんだよ?」

「おつかい」

「・・・あー」


 すると禾本もただ買い物をしに来ていただけらしいのでついでじゃということでわしはついていくことにした。

 わしらはショッピングモールの中を歩き回りながら禾本がここに来た理由を聞くことにした。


「そういや、お主は何を買いに来たんじゃ?」

恵美えみとスポセンにでも行こうって話になったんだけど俺、よく考えたら運動服ねぇなと思ってな」

「ほう、意外じゃな。おぬし結構スポーツできそうな感じじゃけどな」

「中学校まで部活やってたけどな。高校からはなんも部活に入ってないんだ」

「中学校まで部活をしていたんじゃったら運動服ないのか?」

「あるにはあるんだけどな・・・でもその服には中学校名が書いてあるんだよ。高校生なのに卒業した中学校の名前をひけらかしたくないだろ?」

「あー確かに」


 そういう練習着とかって卒業した後、使いづらいよな・・・わしは前世では部活に入っておらんかったけどな。

 二人で話しているとちょうどスポーツオー〇リティ前に着いたので禾本の用事を済ませることにした。


「んじゃあチャチャっと終わらせてくるぜ」

「ああ、そうしてくれ」


 そして店の前で待つこと4分・・・すぐに禾本が買い物袋を持ってわしの元に戻ってきた。いや、早すぎじゃろ!?確かにチャチャっと終わらせると言っておったが・・・


「本当に買ってきたか?万引きしたんじゃないんだろうな?」

「ひどい言い草だな・・・元々何を買うのかは決まっていたしな」


 そう言って禾本は買い物袋とレシートを見せてきた。わしはレシートをまじまじと見つめる。運動服上下、1,800円。おつり200円。うむ、確かに本物のようじゃな。


「うむ、よろしい」

「何様なんだよ・・・」


 禾本はなにか不服そうじゃったがわしはそんなことは気にせずに歩き始めた。わしが向かった先は・・・雑貨屋じゃ。

 今日ここに来たのはおつかいと美紀みきの誕生日プレゼントを買うためじゃ。わしはこれでも何回も誕生日プレゼントを渡しておるのじゃ。6歳の時には盆栽、10歳の時には自作のヘアアイロン、14歳の時には殺虫剤。まぁ殺虫剤の時には返品されたけどな。


 さぁてどうするかのう・・・去年の15歳の時には反省して素直にお菓子をあげたんじゃが・・・無難にマグカップかマフラーにするかのう。

 ということで適当に店舗を漁って店舗ごとに一つずつ購入した。あとは家でじっくり考えるとしよう。

 ん?余ったものはどうするかじゃと?適当にいろんな人に渡しまくることにするわい。もちろん美紀の視界に入らないところで。


「これでわしも用事はすんだわい。帰るぞい」

「お前、何気に結構金持ってるんだな・・・普通一つずつ買うなんてしねぇよ」


 確かにわしの金の量は高校生にしては多いじゃろうな。毎月お小遣い3000円で今まで特に使うところがなかったから余計たまっておるんじゃ。盆栽庭園で少し消費したが虎二が半分出してくれたからかなりの量が余っているんじゃ。

 そのあと禾本とともにショッピングモールの中にあったラーメン屋に向かった。わしはこの『魏馬ぎば』という店の常連でな。ここの青ラーメンが大好きなんじゃ。


「いらっしゃいませ!」

「2名じゃ」

「あ、黒速君!今日はお友達と?」

「まぁそんなとこじゃ」


 この黒髪ロングの女性はわしと同い年のみなもと 真奈美まなみという奴じゃ。彼女は数年前からバイトとして働いているんじゃ。わしがここの常連なのでいつから入ったのかも知っている。

 わしらは空いていた席に座ると源さんがわしらのところにやって来た。注文を聞きに来たようじゃ。


「わしは青ラーメンひとつ」

「俺は赤ラーメンひとつで」

「かしこまりました」


 真奈美はわしらの注文を聞くと厨房の方へ入っていった。わしは厨房に入っていった真奈美を見守ると禾本がニヤニヤとしながらこっちを見てくる。


「なんじゃよ?」

「いや、なんでもぉ~」

「嘘つけ」


 そんな煽り口調で話すな。気持ち悪い。するとさっきとは打って変わって禾本が真剣な顔で話し始めた。


「いや、お前が珍しく目で追っているからな。気になったのさ」

「確かに目で追っていたな」

「なんだよ?お前、もしかして・・・」

「言っておくが惚れてはおらんぞ?」

「本当かよ?」


 禾本が疑いのまなざしでわしを見る。わしは深刻な顔をしながら話し続ける。


「そんなもんじゃないわい。実はな・・・」

「ちょっと黒速君!!」

「ゲッ!!」


 わしが禾本に話そうとすると遠くから真奈美がやってきた。やっぱり聞きつけてきたか。地獄耳め!!


「いらないことを話さないで!」

「別にいらんことでもないじゃろ?大事な話じゃろ?」

「とにかく、これ以上私の家庭事情をほかの人に流さないで!!」

「わ、わかったわい・・・」


 すると真奈美は仕事に戻っていった。全く、どんだけばらされたくないんじゃ・・・


「禾本、悪いがこの店を出てからさっきの話をしよう」

「わかった」


 今度こそ真奈美には聞かれていないようじゃ。またばれても面倒なので一度このことを忘れてラーメンを楽しむことにした。




「うまっ!!」

「じゃろう?」


 ついに頼んでいた赤ラーメンと青ラーメンがきた。文字通り赤かったり青かったりしておるんじゃが味はちゃんと醤油とシーフードなんじゃよ。

 わしらがズルズルと麺を吸っていると大柄な男性がこちらにやってきた。彼がここの店長なんじゃ。


「黒速君、いつも来てくれてありがとうな」

「いやいや、わしもここのラーメンが好きなんでな」

「そうかい、そういえば・・・」


 店長が静かに耳打ちをする。


「源さんの話、聞いているかね?」

「いや、昔あんなことがあったから今回もなんかあるんじゃろうと思っていたが・・・本人は絶対に話さないじゃろうな・・・」

「やはりそうか・・・」


 薄々そんな感じはしていたがやはりか・・・そう思っていると真奈美がこちらにやってきた。どうやら店長を呼びに来たようじゃ。


「店長!ちょっとこっちを手伝ってください!」

「わかった!今行く!」


 そういうと店長は厨房の方に戻っていった。もう少し詳しく話したかったんじゃが仕事中じゃしな・・・っとこのままではラーメンが伸びてしまう。

 わしがラーメンの方に視線を向けるとさっきまでなかったメモみたいなものが置いてあった。わしはそれを手に取る。


 080-○○○○-○○○○


 どうやら店長の電話番号らしい。去り際にテーブルに置いていったようじゃ。わしはメモをすばやくポケットの中にしまい、何事もなかったかのようにラーメンをすすり始めた。


「ありがとうございました!」

「いやぁ、食った食った!」


 ラーメンを食べ終わったわしらはすぐに店を後にした。真奈美が会計している間、店長は後ろからグット!と親指を立てている。


「そういえばお前、さっき店長と何を話してたんだ?」

「ああ、そういえばもう店の外じゃし話すか」


 わしは禾本とさっき話せなかった話題を振る。先ほどの源 真奈美に関する話じゃ。


「お主、源クリエイトって会社知ってるか?」

「源クリエイト?ああ、確か規模の小さいゲーム会社だったか?ってか結構古い話を持ち出すな?」

「まぁな、かれこれ十数年経っておるからのう。あまり話題になってなかったしな」

「んで、なんで急に源クリエイトの話なんだ?」


 わしはスマホで『源クリエイト 社長』と検索をかけた。そして一つの画像を開き、禾本に見せてやった。


「おっ、これって確か3代目社長の新渡にいわた 遼太郎りょうたろうじゃないか?」

「そうじゃよ、じゃがこれは代わりの社長なんじゃ。本当の社長はまだ幼かったからな」

「へぇ・・・ん?」


 禾本が驚いた顔でわしの方を見てくる。こっち見んな。


「まさか・・・」

「そうじゃ。本当の3代目社長があの源 真奈美じゃ」

「えええええええええええ!?嘘!?」

「彼女の両親は幼いころに亡くなっておって両親の遺言によって真奈美が社長となったんじゃ。まぁ社長が子供だと知ったら狙われるからな。名目上は副社長が社長ということになっとるんじゃよ」

「マジかよ・・・」


 禾本が目を見開きながらわしのスマホを見る。しかし禾本がふと思い出したかのようにわしに問いかける。


「あれ?でもそしたら源さんはなぜあそこでバイトなんてしているんだ?」

「それはちょっと深いわけがあってな・・・」


 わしは禾本に真奈美の秘密を話し始めた。

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