第5話 お互いを愛し合っているかの確認



「「お互いを愛し合っているかの確認?」」



首を傾げると、奏の母親————春菜は、「そう」と言ってにこりと笑う。

その笑顔になんだか嫌な予感がしながらも、俺たちは続きを促した。



「ほら、奏たちって今まで恋人なんていなかったじゃない?」

「いっ、いたかもしれないじゃない」

「え? いたの?」

「「……………」」



俺たちは30のダメージを喰らった。

それぞれ顔を春菜から背けると、本人は悪気がなさそうに首を傾げる。

けれど「あっ、それで」と話の続きを話し始めたため、おそるおそる顔の向きを戻した。



「それで結局交際経験もないまま30歳を迎えちゃって」

「「うっ」」



みづきと かなでは 50のダメージを くらった!



「けどいきなり結婚するなんて言い出すから、周りから急かされたせいもあったのかなって。まさか昔に約束をしていて、それを今更持ち出したわけでもあるまいし」

「「ぐっっ」」



はるなは とどめのいちげきを さした!

やめて! 俺たちのライフはもうゼロよ!! というかなんならオーバーキルだよ!


急に胸を押さえて疼くまる俺たちが視界に入っているのかいないのか、春菜はおっとりと笑いながら両手を合わせた。



「だから本当に好きあって結婚したのか確認しようかと思って」

「いや…………どうやってですか」



HPゼロから先に立ち直った俺は、上機嫌に笑う春菜にそう問う。

奏によく似た顔立ちのその人は、まるで少女のように愛らしく爆弾を落とした。


いや、爆弾なんて生ぬるいものじゃない。彼女は、油を並々と注いだ器に意気揚々とダイナマイトを投下した。



「愛してるゲームをやってもらおうかなって」

「なんでそうなった?」






◇◇◇◇◇






「ほら、本当に愛してるなら恥ずかしくないはずじゃない?」という春菜の言葉で急遽始まった愛してるゲーム。

そのルールが通じるのは貴女の家のようなバカップルだけです、とは誰も突っ込まなかったことにより、それは速やかに実行されることになった。


————そもそも皆さんは、『愛してるゲーム』というものをご存知だろうか。

二人の男女が向かい合って「愛してる」と言い合い、照れた方が負けというあのゲームである。

おそらくそれは小学校や中学校の時の罰ゲームで流行ったものであろう………が。



「奏。…………あ、あいしてる」

「わ、私も」

「こら、奏。ちゃんと貴女も言いなさい」

「あいしてる!」



それを、先日30歳という節目を迎えた俺らは至極真面目にやっていた。

ここはどこだろう、地獄だろうか。



「.............春菜さん。これいつまでやるんですか」

「ううん、そうねえ。どうしましょう」

「あと一時間くらいはやらせといたらどうかしら」

「変なこと言うなよ母さん!」



マイペースな母親二人に、それを止めないある意味愛妻家の旦那たち、そして結局全ての皺寄せを受け止めることになる俺たち。

この中で誰が一番かわいそうなのかは一目瞭然である。



「それなら母さんだってやれば..............」



そこまで言ったところで、恥ずかしげもなくお互い言い合う両親の姿が思い浮かぶ。

それは奏のところも同じで、結局俺は「あら、別に私たちもやってもいいのよ?」と笑った奈津に何も言えなかった。



「ちょっと、瑞稀。このままじゃ埒が開かないわよ」

「そうなんだよ。どうやったら終わらせてくれるのか」

「そんなの簡単よ。貴方達が愛し合っているっていう証拠を見せてくれればいいの。このゲームはその手段に過ぎないんだから」

「とても難しいことを簡単におっしゃる..............」



びっくりした、と俺が言うと、奈津は春菜と同じとてもいい笑顔を向けてくる。

俺は心配げにこちらを見上げてくる奏を一瞥して、ゴクリと息を飲み込んだ。



(でも.............そろそろ俺も、ちょっと限界だし)


「奏。この半永久的な地獄が続くなら、さっさと証拠を見せた方が早いと思うんだ」

「いやだからそれが難しいって言う話でしょ」



何を今更、と言う奏は、真剣な顔をした俺に僅かに眼を見張る。

そんな奏をじっと見つめて、俺は奈津たちへ顔を向けた。



「————見せるよ。愛し合ってる証拠」





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明日が作者の都合で投稿できるかわかりません、申し訳ありません.............。

できるだけ頑張りたいと思いますが、一応まだブックマークしてない方はしてもらえるとわかりやすいと思います、ストックが全くないせいですごめんなさい。





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