魔王、異世界にて。
凪無氏-ナナシ-
第1話 魔王、神々を討つ
満身創痍。
もはや立ってるのが奇跡だと我ながら思う。
左腕は斬り飛ばされ、右目は潰れた。
身体全体に刺さる矢と剣、それらを伝って大量に流れ出る血。
「がははっ…ここまでボロボロになったのはいつぶりだァ??」
世界のあらゆる強者と戦ってきた。
当然死にかけた事もある。
だが、ここまでの状態になったのは長い生の中でも片手で数えられるぐらいだろう。
「そろそろ、死んでくれないですかね?」
眼前にあるおびただしい死体の先にある玉座、それに座った金髪の偉丈夫は偉そうに肘を付きながら言う。
「はっ、お断りだクソッタレェ!!」
奴はこの世界を支配する神々の頂点、その王だ。
俺は奴を一直線に睨み付け襲いかかって来る下っ端神々を右手に持った俺の相棒、【滅剣・覇】で斬り伏せながら向かう。
1歩、また1歩と進む度に奴は先程までの余裕の表情を少しづつ消していく。
奴は長く頂点に居座り続けた。
故に戦闘経験があまりに少ない。
だから、
「俺でもテメェを殺せる。」
「ヒッ…」
奴のすぐ前、剣を振り下ろせば確実に殺せる距離。俺はついにたどり着いた。
「わ、分かっているのか?!ワタクシ様を殺せばこの宇宙は崩壊する!!貴様も消えてしまうのだぞ!!!」
「……。」
まぁ、管理者たる存在を殺すって事はそうなんだろうよ。
だが、それでもやめない。
コイツは生き物の運命に干渉しすぎた。
面白半分で、玩具で遊ぶかのように。
実際、コイツにとって全てが玩具だったのだろう。
今まで散々弄ばれてきた玩具にも意思がある以上、意地ってモンがある。
「わ、分かった!!貴様にはもう手は出さない!!だから、やめろ!!!」
「……死ね。」
最後の力を振り絞ってヤツの心臓、神としての核を切り裂く。
「がぁぁぉぁぁぁ!!!!!?!?!!!」
ヤツの身体は徐々にヒビ割れ、核が壊れ、神としての力が放出する。
その放出した力そのものに手を伸ばし、俺はソレを吸収し始めた。
「ぎ、ぎぎ、ギザマァァァ!!」
「はっ、テメェに変わって星の再構築ぐらいはしてやるよ。ありがたく思いやがれクソッタレ。」
星の再構築。
本来、星としてあるべき姿へと回帰させる。
最初のうちは手を出すだろうが、ある程度したら自然の流れに沿い自己成長し独自に発展していくのが本来の姿。
コイツは弄りすぎた。
だが、ソレは許さないらしい。
「この宇宙はァ!!ワタクシ様のモノだぁ!!貴様の様なヤツは消えてしまえ!!」
神の力をコントロールするのに気を取られ過ぎていたらしい。
コイツは最後に残った神の力を使い果たし、俺が抵抗する間もなく、この宇宙から時空を跨いで放り投げた。
「テメェ!!」
「ギャハハハハッ!!!残念だったなァ!!さらばだ魔王ォ!!!」
こうして、俺…魔王ゴウキは異世界へと放出された。
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