お嬢様が何か思い出したらしい。
箱屋
「思い…出した…っ!!!」
とある日の正午過ぎ。
いつもの如く調子こいたお嬢様が
「今日は久々に剣の稽古に参加するわよ!!私の力をいかんなく発揮してボコボコにして、指南役に土下座させてやるわ!!!」
と無い胸を反らし自慢したので、ちょっとうざかったのもあって指南役の人に
「5割ぐらい本気出して叩き潰してくれると静かになって助かります。」
とメイドの私はお願いした。
結果、お嬢様に木刀が脳天直撃。即昏倒。
10秒とも10分とも感じられる時間が過ぎて周りが「やっべ…やっちまった…」みたいな雰囲気になり始めたころ、お嬢様がむくりと起き上がった。
─ああお嬢様!!大丈夫ですか!?
脳天をぶっ叩いてしまった剣術指南役の人が青い顔でひたすら謝り続けている。
お嬢様の事だ。下手したらあんたはクビだ~とかいって駄々をこねるかもしれないから、
『その程度で怒っていては一人前のレディ~(笑)になれませんよ』
と茶々を入れる用意をしておく。
だが、お嬢様は叫んだ。品のない口調で。
品性は普段からいまいちですが。
「思い……出した……!!!」と。
とりあえず指南役のクビ宣言が出なかっただけよしとしよう。
少々の傷の手当の後、私とお嬢様は廊下を歩いていた。
が、なんというかまぁお嬢様の様子が気色悪い。
「……が…の人……もしかして……の…じゃあ………っとけばよかった……」
と、さっきからぶつくさ何か考えているご様子。
かと思えば窓の外を覗いたり途中のドアを開け閉めしたり、落ち着きのないネズミのようです。とはいえこの品のない様子を旦那様に見られてしまえば「指導がなってない」とどやされるのは私。
とりあえず手をつないで多少強引にお嬢様の部屋まで案内することにしました。
「ねぇ…その……あなた、名前は?」
お付きのメイドの名前も覚えてないのかこの小娘が……じゃない。頭を打ったから記憶の混濁があっても仕方ない。
「一年ほど前からお嬢様のメイドをさせていただいている、モゲォロミミミというものです。」
が、それはそれとしてなんかムカつくので適当な名前を言うことにした。
「そう…モゲォロミミミ…。」
お嬢様が少し悲しそうな顔で復唱するものだから吹き出しそうになった。
そんな名前はたとえゴブリンがペットになったってつけないだろう。
「冗談です。スズと言うものです。」
しかし、本当に覚えていないのですかこの小娘は…。
「ねぇ、えーと…モヴェゲロ?」
「スズです、お嬢様。どうかなさいましたか?」
今日ももうすぐ終わる。
カーテンを閉め、ランプの明かりもほどほどに、私はお嬢様の部屋から出ようとしていた。
しかしそこで、衝撃の事実が告げられるのであった。
「私ね、未来が分かるの。」
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