グレープジュースとカレーライス
higoro
1
惣菜コーナーで、値引きされた揚げ物を見ていると、
「どうも。」
と、横から話しかけられた。声の方向を見ると、自分と同じ年頃に見える女性が微笑んでいる。娘の友達、確かゆいという名前だったと思う、その母親だった。
「ああ、どうも、こんばんは。」
と、返事をした。彼女は笑みを崩さないまま、
「あの、すみません、ぶどうジュースって、どこにあるかご存知ですか。」
と尋ねてきた。
「ああ、わかりますよ。すぐ近くです。」
と言いながら、彼女を案内する。そこへ向かう途中、いろいろなものが混ざって一つになった匂いの中から、生臭さだけが際立って鼻を刺激した。
ぶどうジュースは、白い蛍光灯が点いて眩しい、冷やされた飲料売り場ではなく、その裏の薄暗い、常温で置かれた飲み物の棚に置いてある。そこで、
「ここです。」
と、自分の膝辺りの高さに置かれたぶどうジュースを指さす。
「ああ、本当だ、ありがとうございます。」
と嬉しそうに、一本を取ってカゴの中に入れた。空のカゴの中に、ぶどうジュースだけが置かれ、傾く。
「なかなか見つけられなかったんです。」
と彼女が言ったので、
「わかりにくいですよね、裏にあるので。」
と答える。
「娘が飲みたい飲みたいってずっと言ってるので。助かりました。」
と、彼女は言い、満面の笑みを浮かべた。
「いえいえ。」
と私は謙遜した。
「ありがとうございます。」
と言いながら軽く一礼すると、もと来たのとは逆の方向へ去っていった。会釈を返し、彼女が見えなくなったのを確認してから、ぶどうジュースを一本取って自分のカゴに入れた。
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