第二章――――心の底から彼女は笑った
第1話「買い物」
この日、私、ヒロ、サリーの三人でブリタニア王国のオケラ横丁を通っていた。
「わ~!人がいっぱいだぁ!」
「えぇ、私も初めて来ました」
「この国で一番にぎわっている市場ですからね」
このオケラ横丁では主にカジノやパブ、娼宿などの娯楽施設が盛んとなっているのだが、それも横丁の奥までである。入口付近ではいろんなお店が開かれており、その中でも本屋や武器屋などが多く立ち並んでいる。それゆえに、子供の教育のための店と大人の欲望のための店が同じ地区に隣合っているこの場所は、朝の顔と夜の顔を持っている。私達がこのオケラ横丁に来たのはもちろん朝の顔のためである。国の法律的に16歳以上は利用できないようになっているし、日が明るい内はカジノも娼館は何処も開いてはいないのだ。精々が食堂を兼業している宿や酒場くらいである。そんなわけで私達は学校の教科書を買いそろえないといけないのだ。不便なことに騎士学校では教材は自分で買ってこないといけない仕組みとなっている。何処かの魔法学校?いちよう経済的余裕のない学生には学園側が奨学金としてお金を貸してはくれるので教科書が用意できないということは自主的に狙って行動しない限りありえないことである。
「さて、それではヒロ君、サリーちゃん……まず最初に向かう場所はどこかわかってますね?」
「当たり前田のクラッカー!」
ヒロ爺さんや、そのネタわかる人もういないって……何年前かもう私でもわかりませんって……
「当たり前ですわ!」
「本屋!」
「武器屋!」
お互いが発言したと同時にヒロとサリーは互いの顔を見合う。
「ヒロさん!まずは授業のための本屋に行くべきですわ!座学が一番大切ですの!」
「あんな眠たくなることなんかより武器を新調する方が大切だね!」
うん。ものの見事に食い違ってるね。これって性格かな?これって性格だね。
「じゃあ、それぞれ行きたい場所に行きましょう。別に無理して同じところに行く必要はないでしょうし」
熱くなっていた二人は確かにと言う風に納得した。おたくら……折衷案ってもんがないのかよ……
「では、またお昼ごろになったらここの停車所に集合しましょう」
そうして、私達は馬車の乗り場からそれぞれの目的の為に各々が好きな店を好きな順番に回ることとなった。
ヒロは武器屋の看板を見つけ中を覗いてみる。そこには鉄臭さと製鉄の金属音があった。もしかしたらここなら自分の目的の武器があるのかもしれないと思い、店の店主に話を聞いてみることにした。
「すいませーん!」
カンカンと鉢巻を頭に巻き付けた鍛冶職人の店主はヒロの言葉が聞こえていないのかこちらに反応する素振りすら見せずただ鉄を打っている。
「あの!聞こえてます?ちょっと聞きたいんですけど!?」
しかし、帰って来るのはハンマーの金属音だけが虚しく鍛冶場の中を反響して聞こえてくるだけであった。
「バーカ!ハーゲ!……いでぇ!?」
聞こえないことをいいことに少し腹が立っていたので暴言を吐いてみたらたちまちトンカチが飛んできた。頭にはたん瘤が腫れてしまっている。
「だーれが禿げじゃ!この■■■■(※コンプラレベル)小僧が!」
「やっぱ聞こえてるじゃないですか!」
「うるせー!」
この後、この鍛冶職人としばらく揉め合ったのだが、最終的には家内らしい職人の奥さんが仲裁に入ってくれたおかげで何とか事なきを得たのだった。そうして紆余曲折ありながらもヒロは武器を見ることができるのだった。
「……この絵みてぇな武器ねぇ」
職人は顎髭をさすりながらしげしげと絵を眺めながら呟く。それはヒロが書いたヒロが最も得意とする武器だった。しかしながら、それはあまりこの世界ではなじみがない、なさすぎる武器だったのだ。
「すまねぇがうちでは取り扱っちゃいねぇな」
「そうですか……」
「そもそも鉄を使ってねぇ武器なんて鍛冶屋にあるわけねぇんだよ。しかし、まぁせっかく客が来てくれたんだある程度特注のブツなら作ってやれるぞ?」
そういうとヒロの顔はぱっと明るくなった。
「ありがとうございます!じゃあ……」
ヒロは自分の欲しい武器の要望をあらかた言い終わりそして注文金額の予想を見て目玉が飛び出たのは言うまでもない。
なんとか武器を用意できるとわかったヒロは安堵の表情を浮かべながら市場をぶらついていた。すると、ふと前世の刑事時代の癖なのか目についてしまったのだ。
(あれ、なんかあいつら怪しいな?)
ヒロの視線の先にいたのは市場の露店に隠れている路地裏で何やら二人の男が話し込んでいるの光景だった。片方の男は余裕がなさそうでつがりつくようにもう一方の男の肩を揺らしていた。すると、何やら余裕のある方の男は袖から何か袋のようなものを取り出して受け渡し、対価としてその袋を受け取った男は金貨を何枚も男に渡していた。知識が無くてもきっとわかるだろう。何かしらの違法物の取引だ。ヒロは咄嗟に動いていた腰に剣は帯刀している。たとえなかったとしても動いていただろうそれがヒロと言う男なのだから。
「動くなお前ら!」
刑事時代の癖からかそんな言葉が口に出てしまった。その声と共に袋を受け取った男は青白い顔を受けべて世界の終わりかのような顔をしていた。
「あらら~見られちゃったか。じゃあ少年には悪いけど……」
バイヤーらしき男は対照的に余裕そうな顔をしていて、何かを取り出す素振りを見せた。
「死んでもらおうかな!!!」
男の取り出したのは筒の付いたL字型の武器にしてこの世界では絶対の存在しないはずの武器……拳銃だった。
「」
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