シロベエ、なんでここに?

天川裕司

シロベエ、なんでここに?

タイトル:(仮)シロベエ、なんでここに?


▼登場人物

●夢野朱理(ゆめの あかり):女性。30歳。OL。

●田山裕子(たやま ゆうこ):女性。31歳。独身。岡田と交際。シロベエ(猫)を飼っている。

●岡田俊也(おかだ しゅんや):男性。35歳。朱里の同僚。

●キャスター:女性。30代。一般的なイメージでOKです。


▼場所設定

●Sパークヒルズ:朱理や裕子が住んでいる高層マンション。

●IT企業:朱理や岡田が働いている。一般的なイメージで。

●街中:電車内やゴミ置き場など一般的なイメージでお願いします。


NAは夢野朱理でよろしくお願いいたします。

(イントロ+メインシナリオ+解説:ト書き・記号含む=3685字)



イントロ〜


皆さんこんにちは。

皆さんは高層マンションに住んだ事がありますか?

最近マンション住みの人も結構増えてきてますよね。

今回はそのマンションにまつわる意味怖のお話です。



メインシナリオ〜


ト書き〈自己紹介から出社まで〉


私の名前は夢野朱理。

今年30歳になる独身OL。


私は今、都内にある高層マンションに住んでいる。

ここはペット可のマンションなのだ。


朱理「おはようございまーす♪」


裕子「あ、おはよう〜♪」


朱理「あ、シロベエちゃん♪今日も可愛いね〜」


裕子「この子ったら最近食べて寝てばっかりだからこんなに太っちゃってw」


朱理「あはは、でも大っきい猫ちゃんってめちゃくちゃ可愛いですよぉ〜♪」


裕子「そーお?だってシロ♪よかったね〜」


シロベエ「ニャー」


彼女は3つ隣の部屋に住んでる裕子さん。

彼女も独身で、うちでは1匹猫を飼っている。


この猫ちゃんの名前はシロベエ。

結構大きな猫だけど、

白い羽毛に包まれたようなふっくら感がとっても可愛い。


朱理「フフ、私も猫ちゃん飼いたいなー。…あ、こんな事してらんない!早くゴミ出してこなきゃ」


今日は燃えないゴミの日。

朝の忙しい時間。


私はいちど部屋に戻り、

ドアを開けたままゴミ袋を両手に持ち、

仕事用のショルダーバッグを肩に掛け、

マンション下のゴミ置き場まで走った。


その時、会社から電話が入った。


朱理「あ、もしもしー」


相手は課長。


朱理「え?!ホントですか!分りましたすぐ行きます!」


私はゴミを置いてそのまま会社へ。


昨日、私が請け負った資料作成にミスがあった。

今日会議で使う資料ながら、

今すぐ行って直しをしなければならない。


ト書き〈会社〉


私が働いてるのは一般的なIT企業。


朱理「ふぅ〜終わったぁ!」


資料の手直しは何とか間に合った。


それからいつも通りの仕事。

ここでの仕事は結構楽しい♪

第一希望で入った会社ながら、

仕事もプライベートも充実していた。


ト書き〈空き巣〉


その日の休憩時間。


岡田「え、マジかよ。おい夢野、お前の住んでる界隈でなんか強盗殺人事件が発生したとかやってるぞー」


朱理「え?」


私達は昼休み、休憩ルームでテレビを見ていた。

トイレから帰った私を岡田さんがそんな風に呼んでくれ、

私もテレビに釘付けになった。


岡田さんは裕子さんの友達。

最近では付き合ってるとか何とか。


キャスター「お伝えしております空き巣事件に関してですが…ここで新たな速報が入りました。今回の事件は空き巣事件ではなく、強盗殺人事件の疑いがあるとの事で…」


朱理「…ご、強盗殺人事件…」


なんと私の住んでるあのマンションの界隈で

強盗殺人事件が発生したとニュースでやっている。


岡田「ふぇ〜こぇーなぁ。お前も気を付けろよー」


朱理「うん」


とは言え不安だ。

気をつけろったってどうやって気をつければ良いのか。

こんな時、腕力のない女は悲惨だ。


とにかく出来る事から注意しなければ!

そう思った直後…


朱理「あ…今日、私、部屋のドアの鍵、閉めて来たっけ…」


早速トラブルが舞い込んできた。

自分の部屋のドアを閉めた記憶がない。


朱理「確か裕子さんと会って、そこでシロベエちゃんも見て、それから…ヤバい、ドア開けたままかも…!」


確かドアを開けたまま

いつもの癖でショルダーバッグを肩に掛け、

両手にゴミ袋を持ちそのままゴミ置き場まで走った。


ゴミ置き場に着いてすぐ課長から電話があって、

「すぐ行きます!」

なんて言って飛んで来ちゃった。


朱理「し…閉めてないわ、きっと」


もう気が気じゃない。

でもその日は大事な会議の日。

私もその会議に出席しなきゃいけない。


会社からマンションまでは優(ゆう)に片道30分。

往復で1時間はかかる。

行って帰って来る時間は無い。


朱理「だ…大丈夫よ、滅多な事は起こりゃしないわ」


何とか自分にそう言い聞かせて心を宥め、

その日1日を乗り切るしかない。


昼からの仕事が始まり…


岡田「じゃあ行ってきまーす」


岡田さんはいつものように外回り。

今日はそのまま直帰するようだ。


私は会議の準備に追われていった。


ト書き〈帰り〉


朱理「ふぅー、今日も何とか無事に終わったぁ」


とりあえずその日の仕事を終え、

私は猛烈な勢いで自宅まで帰る。


朱理「ハァハァ、早く帰らないと…!」


(電車)


とにかく無性に焦る。

でもふとまた考える。


朱理「もしかしたら閉めてたのかも」


私はいつもその辺の事はちゃんとしている。

鍵を閉め忘れた事なんて、

これまで全く無いと言って良い。


何しろ朝のあの忙しい時間。

自分の行動をいちいち確認なんか出来ない。

でもいつもの習慣でちゃんと鍵を閉めたのかもしれない。


ショルダーバッグだって

いつもの習慣でちゃんと肩に掛けてた。

ゴミを捨てに行くのに

バッグをわざわざ持っていく人はいないだろう。


つまり私はそれだけ、

いつもの生活習慣をしっかり身に付けている。


朱理「そう言えば閉めてたのかもしれないわ」


何となくそんな気もしてきた。

いつもの習慣ながら、

その辺りはマンネリ化して曖昧になるもんだ。


私は少し気丈を取り戻し自宅へ帰った。


ト書き〈自分の部屋〉


私の部屋はこのマンションの10階にある。

とりあえず急いで10階に上がった。


そして恐る恐るドアノブを回してみると…


朱理「あーよかったぁ」


やっぱりちゃんと鍵を閉めてたようだ。


朱理「やっぱり偉いねーいつもの私♪」


これも長年培ってきた習慣の賜物と言った所だろう。

まぁこんなもんだ。


鍵を開けて部屋に入り早速テレビをつける。

もちろん昼間やってたニュースを見る為だ。

あの強盗殺人事件。


見ていた時、外が俄かにざわついてきた。


「なんだろう」

と思ってとりあえずニュースを見ていると、

また速報が入ってきた。


朱理「え…う、ウソ…」


なんとあの裕子さんの部屋に強盗が入ったと言う。

しかも裕子さんはその強盗犯に殺されていた。


暫く恐怖で動けなかった私。

その時…


朱理「きゃあ!」


キッチンの方で物音がして…


シロベエ「ニャー」


トトト…とシロベエが私のほうへやってきた。


朱理「シ…シロベエ…なんで?」



解説〜


はい、いかがでしたか?

それでは簡単に解説します。


まずストーリーの流れから見ても分かるように、

朱理は部屋のドアの鍵を閉めていませんでした。


ゴミ袋とショルダーバッグを持ち、

共同ゴミ置き場まで走って行った朱理は

そこで会社からの電話を受け、

その足で出社してしまいます。


会社で強盗事件のニュースを見た瞬間…


「大丈夫かしら?鍵閉めてたかしら?」


なんて不安になりながらも…


「大丈夫、いつもの習慣でちゃんと閉めてる筈」


と思い込んでいた朱理でしたが、

それは単に思い込みに過ぎませんでした。


その証拠は、裕子が飼っていたシロベエが

朱理の部屋の中に入っていた事。


朱理の部屋は10階。

幾ら猫とは言え、窓から入るなんて事できませんよね。


そう、シロベエは開いてるドアから普通に入った訳です。


しかし朱理が大急ぎで帰ってきた時、

部屋のドアの鍵が閉まっていました。


さて、ここからクエスチョンです。

なぜ開いてる筈のドアが閉まっていたのか?


それは、そのドアの鍵を中から閉めていたから。

猫に鍵を閉める事は出来ません。

つまり人が閉めたと言う事。


そして鍵が閉まっていたと言う事は、

おそらく侵入者はまだ部屋の中にいると言う事。


この侵入者こそ、強盗殺人犯だったのです。


この強盗殺人犯とは一体誰だったのか?


シロベエが居た事から裕子が疑われがちですが、

その裕子は既に殺されていました。

となると犯人は、別人という事になります。


もうお分かりですね?

そう、犯人は岡田でした。


この事が解るヒントが幾つかありました。


先ず…


岡田「お前の住んでる界隈でなんか強盗殺人事件が発生したとかやってるぞー」


キャスター「お伝えしております空き巣事件に関してですが…ここで新たな速報が入りました。今回の事件は空き巣事件ではなく、強盗殺人事件の疑いがあるとの事で…」


このやり取り。


それまで空き巣事件として報道し、

その後リアルタイムの形で初めて…

「強盗殺人事件の疑いがある」

とキャスターは伝えているのに関わらず、

なぜ岡田は…

「強盗殺人事件が発生したとかやってるぞー」

とその速報が入る前に言えたのでしょう。


つまりそれは犯人だから知っていたのです。

ポロッと真相を暴露してしまったのでしょう。


更にもう1つのヒントは、

裕子と岡田が恋人関係にあった事。

もちろん裕子は岡田の正体を知りません。


高層マンションながらセキュリティはしっかりしてるので、

部外者は普通立ち入れませんよね。


でも友達・恋人となれば話は別。


岡田はその日、外回りでした。

その後は直帰できる状況にあり、

岡田はそのまま裕子の部屋に立ち寄っていたのです。


そこでおそらく痴話喧嘩でもしたのでしょう。

岡田は強盗犯。

カッとなれば何をするか分かりません。


そんな状況からつい岡田は裕子を殺害し、

部屋を出たところ3つ隣の部屋のドアが開いてたので

いつもの習慣で朱理の部屋へ強盗に入った訳です。


おそらくその時にシロベエも一緒に入っていたのでしょう。


朱理の部屋の外がざわついていたのは、

裕子殺害の事件が発覚したからでした。

それが速報となり、朱理の知る所となりました。


さて、岡田は今どこにいるのでしょうか?


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=dsKeZlWr2So&t=73s

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