早くデレなよ瑞希君!

白澤

第1話


ドライアイスという物をご存知だろうか


ドライアイス (英: dry ice) は、固体二酸化炭素 (CO2) の商品名で


生鮮食品の冷温保管・輸送などに用いられ、固形炭酸、固体炭酸とも言うらしい。

(Wikipedia参照)


まあ知らない人はいないだろうが、恐ろしく冷たい物と思ってもらって構わない。


私のクラスにはドライアイス人間がいてだな…



「邪魔だからどけ」



そうコイツである。


塩対応よりもドライアイスに近いくらいには冷たい、冷たすぎる


それが彼、”瑞希冬馬”(17歳男性)


ここ2年間ずっと同じクラスなのだが



『(相変わらずのドライアイス対応…









_________________好きッッッッッッッ!!!)』



私は盲目的に彼が好きだ、大好きすぎて神棚に祀るくらいには好きだ。


入学当初は1日に5回程告白されているのを見かけてはいたが


対応と普段の感じが塩対応すぎて嫌われている、なぜだ。


塩対応同盟を組んだ友達でさえ心が折れ、彼に良い印象を持たなくなりやがった


友達は同盟を破棄した罪で捨てた、元々面倒なやつだったし丁度良かった。



「聞いてんのか、どけろ」



かなりイライラしているが、そんなところも堪らない。


周りから嫌な目線とヒソヒソした声が聞こえるがどうでもいい


ゴミには無視が1番よく効くお薬だから、出しとくと静かになる。



「…」



彼は荷物も置かずに行ってしまった、悲しい


行く場所は知っているから、彼の椅子をもう少し堪能してから行く事にする


彼が座っていた所に私が座る。


これは実質彼とがった__一体化する、つまり私が彼になれる唯一の瞬間だ。


私は毎回教室から彼がいなくなったのを確認してから座っていた


が、隠す理由も恥ずかしさの欠片も無いと気がついたから、こうして堂々としている



「ね、ねえ」


「そこってあの人の席でしょ?…よく座れるね」


「それにさっき怒られてたじゃん…?昨日もそうだけど、なんで平気なの?」



煩いのが釣れちゃったな、まあ無視でいいか


そろそろ移動しよう、彼の痕跡がついた場所は全部確認して楽しまなきゃ。



「…ねえ、sあ、ちょっと待って!」



腕を掴まれそうになるが、流星の如く軽やかな体使いでするりと避ける



「っへ!?」


『私ちょっと毛病で保健室行くから』


「それなんの意味もな_」



間髪入れずに教室から出て、私はある場所へ向かった。



__________________


ー?視点



生まれつき目つきが悪く、成長期で身長が高いだけだった


皆から怖がられ、冷たい目線、ありもしないレッテルを貼られ続けてきたこの人生


いつの日だったか、俺は極度の人間不信になってしまった。


特に異性である女は、蕁麻疹が出るほど拒絶反応が強かった


気持ち悪くて堪らないんだ、酷い時はすれ違うだけでトイレで3回吐いて、涙した。


何故こんな仕打ちを受けなければならない?ただ存在しているだけだというのに



「好きです!付き合ってください!」



中学2年の時から、1日に1回は聞くくらいに耳にした、上辺だけの薄っぺらいもの


余計に不快感は増し、対応もしなくなった頃には自然と嫌われ者に戻っていた。


…いたのだが



「絶対諦めないもんね!ノイローゼになるくらい告白してやるわ!」



1人だけ、未だ言葉をかけてくる馬鹿がいる


彼奴だけは、まだ俺を見てくれている。彼奴だけは、俺を好きでいてくれる


知らぬうちに、彼奴の存在に縋り付いていたのかもしれない

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