第1話 真珠湾の地獄

ー第二航空艦隊・旗艦 戦艦『大和』ー


艦隊の先頭にいた戦艦『大和』の防空指揮所で、第二航空艦隊司令長官遠藤泰雄中将は風に当たっていた。


既に、南雲中将の第一航空艦隊が放った攻撃隊により、アメリカ太平洋艦隊の主力である戦艦隊に甚大な被害が出ている報せも来ていた。


しかし、遠藤は、南雲が航空戦術には慎重過ぎるのを知っていたから、南雲はアメリカ太平洋艦隊の戦艦隊を叩いた事で作戦を終了して日本に帰航する事を確信していた。


だからこそ、遠藤は連合艦隊司令長官の山本五十六大将を説得して、臨時で編成された第二航空艦隊で南雲が行わない工場施設や燃料タンク施設などを叩く事にしていた。


そんな遠藤の元に、一人の男が報告に来た。

「若大将。やはり、南雲さんはアメリカ側の追撃を恐れて、作戦を終了して日本に帰航するとの事です・・・。」

報告に来た男、第二航空艦隊参謀長の鼓舞武雄少将は、残念そうに報告した。


だが、遠藤は気にしてはいなかった。

「構わないよ。あの人も貴重な戦力をアメリカ側の反撃で失いたくないだろうし。」

「それに」と遠藤は続けた。

「叩けなかった施設は、こちらで叩けば良い。その為の第二航空艦隊だ。」

遠藤は不敵な笑みを浮かべながら、鼓舞に答えた。


遠藤が率いる第二航空艦隊の編成は、以下の通りである。


第二航空(機動)艦隊

司令長官:遠藤泰雄中将

旗艦:大和型戦艦『大和』

第六航空戦隊:翔鶴型航空母艦『神鶴』、翔鶴型航空母艦『飛鶴』

第五戦隊:妙高型重巡洋艦『那智』、妙高型重巡洋艦『羽黒』

第七駆逐隊:駆逐艦『曙』、『潮』、『漣』、『朧』

高速給油隊:3隻


となっていた。


遠藤と鼓舞の会話から、1時間後、空母『神鶴』と空母『飛鶴』の2隻から、零戦隊30機、九九式艦爆隊20機、九七式艦攻隊(爆装)20機が第一次攻撃隊として次々と発艦していった・・・。


ーアメリカ合衆国ハワイ州オアフ島パールハーバー(真珠湾)ー


一方、南雲が率いる第一航空艦隊のから放たれた最後の攻撃隊が真珠湾を離れた頃、パールハーバーでは地獄絵図と化していた・・・。


アメリカ太平洋艦隊の主力である戦艦隊だけ見ても、戦艦『アリゾナ』、『オクラホマ』、『ウェストバージニア』、『カリフォルニア』が撃沈された。

また、戦艦『ネバダ』が座礁した。

他の戦艦『テネシー』、『メリーランド』、『ペンシルベニア』も損傷していた。

他にも駆逐艦数隻にも損害が出ていた。


そんな中で、工場施設や燃料タンク施設が無事だったのは、不幸中の幸いだった。


そんな地獄絵図みたいな光景を見ていたアメリカ太平洋艦隊司令長官ハズバンド・E・キンメル大将達だったが、彼等の地獄はまだ終わってはいなかった・・・。

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