木刀物語

森林木 桜樹

第1話「契約」

県立見神倉学園に通う少女、有坂志保ありさかしほは、木工部で彫刻刀を使っている時に、手を怪我してしまった。


担当の先生、長谷川はせがわかなえは、「一緒に車で病院に行きましょう」と言ってくれたが、行きつけの病院が学校の裏だったから、「走って行けば早い」と言い、血がこれ以上、出ないように圧迫しながら走って向かっていた。


担当の先生は、有坂のご両親に連絡をするべく、一度、職員室に向かい、教師専用のスマートフォンを持って、有坂の後を追った。


その時、有坂の血が少しだけ地面に向かって垂れる。


気にしなく、病院に行き、受付の人に説明をしていると、長谷川先生が着いて、再度説明をした。

治療をしていると、志保の父、晃司こうじが来て、長谷川先生に説明を聞いていると、治療室から志保が出て来た。


志保は、父に近寄られ。


「無事か?」


聞かれた。


「はい。この通りです。」


治療された手を見ると、今、治療をした医者が説明があると言って志保と父、それと長谷川先生を呼んだ。

説明が終わると、長谷川先生は、志保の父に。


「私がもう少し見ていれば、志保さんを怪我させなかったのに、申し訳ありません。」


深々と頭を下げて、謝っていた。


「いや、こちらこそ、連絡ありがとうございます。」


少し話しをした後、学園に行って荷物を持って、父と一緒に家に帰る。





家に帰ると、父は休むようにいい、食事の支度をしてくれる。

母、白水しろすいはというと、定時制の教師をしているから、この時間はいない。

朝は苦手な母だから、この職業は向いている。


「手は使えるか?」

「なんとか。」


怪我したのが、聞き手じゃないからよかったが、それでも使いづらい。

フォークで刺して食べられるものばかりを用意してくれたから、全部食べれた。


「どうしようか。お風呂。」

「何とかしてみるよ。」


怪我をしている手を、ビニールで覆い、父が固定してくれた。

傷がふさがるまでは、水をつけてはいけないらしく、とても不便だ。

風呂から出ると、父がドライヤーを持って待っていた。


「乾かしてあげるからおいで。」

「うん。」


とても、暖かい。

ドライヤーの風がじゃなく、心が温かくなっていく。

小さい頃も、こうやって父に髪の毛を乾かして貰ったなって、思い出していた。


父の職業は、床屋で、今日は月曜日であり、休みであった。

だから、直ぐに駆けつけれたし、夕方だった。

仕事中でも、午後五時には締めて、家に帰り、夕食の支度をしてくれる。


本来なら、お風呂掃除は志保の仕事であったが、今回、怪我をしてしまったから出来なく、父がやってくれた。

父と母、どちらが長く一緒にいるかは、父である。

だから、志保は、父親っ子になっていた。

でも、母も好きである。


「ありがとう。」

「今日は、歯を磨いて、痛め止め飲んで、ゆっくり寝なさい。お母さんが帰って来たら伝えて置くから。」

「うん。」

「それと、明日は、痛みで難しいなら、学園、休んでいいからな。」

「そうしたいけど、今作っている物、早く作り終わりたいんんだよね。」

「でも、また、怪我をするといけないから、家に持ってやれるなら、俺が見ている前でやりなさい。」

「うん。気を使ってくれてありがとう。」


お休みをいうと、部屋に行く。

部屋に行くと、相当疲れていたのか、ベッドに倒れ込んでしまった。


部屋は、入口から見て、左側に洋服ダンスがあり、洋服ダンスの端に制服がハンガーにかけてある。

その横に姿鏡があり、姿鏡の前にはかごがあって、中には髪ゴムやくし、化粧水などが入っている。


右側は、ベッドがあり、ベッドの頭方面に机があった。


怪我をした手を見ると、一息吐いた。


「あーあ、やっちゃったな。まだ、痛むや。」

「痛そうだね。大丈夫?志保ちゃん。」

「大丈夫かと思うけど………。誰?」


ベッドに横になったまま、声がした方向を見ると、ベッドの横にスラっと、佇む棒があった。

棒は、見たことがある。

木刀だ。


「何?木刀?」

「はい。私、木刀のヤクモっていいます。貴方に、八匹の蛇を倒して貰いたくてきました。」

「ヤマタノオロチ?ねえ、ヤマタノオロチの話なの?でも、ヤマタノオロチ、木刀……木刀だっけ?神剣だったような気が。」

「木刀です!木刀でやっつけたから、神剣になれたのです。」

「そうだっけ?」

「そうです。それと、私の願い事は、ヤマタノオロチとは全く関係ないですからね。」


ヤマタノオロチは、簡単に説明すると、迷惑をかけていた八つの頭を持つ蛇を、一人の人が特別な剣で倒した。

だが、それと、木刀の願いとは、全く関係ないのである。


そんな話から、手の傷の話をして、明日からどうしようかと悩みも話して、木刀と仲が良くなっていった。


「で、あなた、木刀なのに話せるって、どういう事。」

「今更!」


散々話しをしておいて、木刀が話せる事実を聞いて来た。




木刀は、自分の事を話す。




木刀の世界でも、憧れがあり、使われる度に強くなって、神剣に位が上がる。

使ってもらえると、とても嬉しいのである。

木刀を使ってもらえるには、人間が必要で、契約をしなくてはいけない。

契約は、木刀に血を与える。


すると、志保は、病院に行く時には、血を地面に落としたのを思い出した。


「あれか。」


あの時、地面の上に木刀があった。

それに気づかずにいた。


「あれって契約になるの?」

「なるの。」

「仕方ないな。協力してあげる。」

「ありがたい。」


喜んでいる木刀を見て、志保はニヤけた。


『要するに使えばいいのよね。』


志保は提案をした。


「ねえ、この傷治せない?使うにしても、怪我していれば、使えないわよ。」

「そんなの簡単。」


木刀は、自分を触って見てという。

怪我をしていない手で握ると、その手から光が身体を伝わり、怪我している手を癒す。

そして、治った。


グーパーすると、痛くない。


「おお、治っている。」

「よかったです。これから、よろしくお願いします。」

「こちらこそ、治してくれてありがとう。よろしくね。」





次の日


「えっ!治った?」


父が驚いていて、確認すると治っていた。

母も帰って来ていて、朝の食事を作りながら話しを聞くと、驚いていた。

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