いっときの夢
天川裕司
いっときの夢
タイトル:(仮)いっときの夢
▼登場人物
●給田一人(たべた かずと):男性。40歳。サラリーマン。気が弱い。
●給田静江(たべた しずえ):女性。41歳。一人の妻。気が強い。疑い深い。
●月下萌絵(つきした もえ):女性。27歳。絶世の美人。一人と知り合い付き合う。
●瀬津聖子(せつ せいこ):女性。30代。一人の「自由になりたい・本当に愛する人とだけいつまでも付き合いたい」と言う本心と夢から生まれた生霊。
▼場所設定
●一人の自宅:一般的な戸建て住宅のイメージで。
●バー「Dream of a Moment」:意味は「いっときの夢」。お洒落な感じのカクテルバー。聖子の行き付け。
●萌絵の自宅:都内のアパートのイメージで。
NAは給田一人でよろしくお願いいたします。
※本編中の「一人」はすべて「一人(かずと):人名」です。
「一人(ひとり)」の場合はすべて「1人」と表記しています。
イントロ〜
皆さんこんにちは。
今回は浮気が原因でとんでもない結末を迎えた、
或る男性にまつわる意味怖のお話です。
メインシナリオ〜
ト書き〈数々の疑い〉
静江「あなた!誰なのよこの電話の相手!」
一人「い、いやこれは違うんだ!ごめんなさい!」
(別日)
静江「冗談じゃないわよあなた!また知らない女と!」
一人「いや、あれは会社の同僚で!」
(別日)
静江「あなた!どうしてこう毎日毎日帰りが遅いのぉ!」
一人「今日は残業だよぉ!」
ト書き〈バー「Dream of a Moment」〉
俺は給田一人(40歳)。
いま妻の事で思い悩んでいる。
或る日の仕事帰り。
俺は家に帰るのも嫌で飲みに行く事にした。
いつもの飲み屋街を歩いている時。
一人「ん?『Dream of a Moment』?新装か?」
全く知らないバーがある。
入り、カウンターで飲む事にした。
その時…
聖子「こんばんは。お1人ですか?ご一緒してもイイかしら?」
割と綺麗な女性だ。
彼女の名前は瀬津聖子。
歳はおそらく30代。
悩みコンサルタントをしてるらしい。
それから軽く自己紹介し、暫く喋った。
彼女は不思議な人だった。
話している内、次第に心がほぐれて安心できる。
「昔から一緒に居た人」
そんな感覚がふと漂うのである。
それに彼女と居ると、無性に自分の事を話したくなる。
気付くと俺は、今の悩みを殆ど彼女に打ち明けていた。
聖子「なるほど。奥さんとの関係が冷えてるんですね」
一人「ええ。何かって言うと疑って私を責めるんです」
聖子「ですが一人さん?あなた、本当は浮気したいんじゃありません?」
一人「え?な、何言うんですかアナタ!」
聖子「私は長年ライフコーチやメンタルコーチをしてますが、どのお客様にも、先ずは心を開放し、素直に話して頂く事から始めて居ります。でなければ、本当の心の悩みや問題への解決は得られません。素直になって下さい」
図星を突かれたようだった。
聖子「心境や環境の変化も時には大切です。あなたの場合、おそらく今の環境に煮詰まって、奥さんが言われる事や毎日の生活にも嫌気が差し、覇気が出ないんだと思います。いかがです?この辺りで1度、環境を変えてみては?」
一人「か、環境を変えるって一体…」
聖子「本当に浮気をしてみるのです」
一人「何ですってえ?!」
聖子「いえ本当の狙いは『浮気相手と今の奥さんを冷静に比べる事』にあります。決して一般的に言われるような泥沼の関係ではなく、プラトニックを前提にしたお付き合いですから、心配されるような事はありませんよ。フフ」
聖子「もしその気がおありでしたなら、私がご協力して差し上げます。あなたに1人、相性がピッタリの女性をご紹介いたしますが、いかがですか?」
でもこの時、俺はまんざら嫌な気がしなかった。
確かに妻と一緒に居たって心の安心なんて無い。
この先も果たして上手くやっていけるかどうか。
俺はお願いしてしまった。
ト書き〈月下萌絵登場〉
翌日。
俺はまたバーへ行き、そこで1人の女性を紹介された。
萌絵「月下萌絵です。よろしくお願いいたします」
一人「こ、こちらこそ、よろしく!」
聖子「彼女は今27歳。実は彼女も私のクライアントなんですよ」
一人「え、そうなんですか」
聖子「彼女の場合も1度結婚して破れ、今ではこうして理想の結婚相手を求めて私のセミナーへ通ってらっしゃいます。ご安心下さい。彼女にも言ってありますが、決して一線を越えるようなお付き合いにはなりませんから」
一人「え?」
聖子「恋人同士になると言ってもそれはゴッコ。飽くまであなたの場合、今の奥さんと彼女を見比べて頂き、あなたにとって今後どんな女性がふさわしいかを確認して頂く為の交際です。ですからプラトニックを守る事は絶対で、肉体関係に発展する事はありません。これだけはちゃんと守って下さいね」
一人「は、はぁ…」
やはり聖子は不思議な女性。
こんな事を言われても、彼女の口から聞けば信じてしまう。
それが悪い事でも、心の中で正当化する。
その日から、俺は萌絵とプラトニックな恋愛をスタートさせた。
ト書き〈数日後、自宅〉
一人「(ははぁ…いいなぁ…萌絵ちゃんか)」
萌絵は今まで俺が出会った中で最高の美女だった。
可愛らしく性格も良く、何より俺の事を純粋に信じてくれる。
静江「あなた、なーにニヤついてんのよ」
一人「えっ!あ、いや、別に」
静江「そうそう今度の週末、アタシお友達と旅行に行くから家の事お願いね」
一人「え?」
静江「ちょっと羽伸ばすくらいいいでしょう?」
口では負けるから、こうなったとき俺はいつもはぐらかす。
一人「お、おい、それよりメシは?」
静江「は?メシ?アタシはアンタのメイドじゃないのよ。今日は旅行の準備で忙しかったからご飯作るの忘れちゃった♪でもまぁホラ、そこにカップラーメンあるから、お湯注いで勝手に食べればいいじゃない♪今度の旅行は1週間くらいで長いからさ、アタシまだ荷物の準備とかいろいろあるのよねぇ~」
ト書き〈萌絵のアパート〉
翌日。
俺は萌絵のアパートに来ていた。
萌絵「はい♪腕によりをかけて作ったの♪お口に合うかしら?」
一人「ンまい!!めちゃくちゃ美味いよコレ!」
萌絵「よかったぁ♪私、こう見えてもお肉料理は得意なの」
萌絵が俺の為に作ってくれた鶏肉料理。
これ迄に食べた事ないほど絶品だった。
一人「(ああ…こんな萌絵ちゃんみたいな人が奥さんだったらなぁ…)」
そう思った時。
萌絵が急に思い詰めたような表情で俺に詰め寄った。
萌絵「…ねぇ一人さん。私じゃダメですか?」
一人「え?」
萌絵「今まで一人さんと知り合ってから、一人さんの誠実さや優しさが身に染みて分かって来たの。もっと早く知り合えていれば、私、きっと幸せな結婚生活を送れたのになぁって…最近、ずっと思うようになっちゃって…」
一人「も、萌絵ちゃん…」
でも一線を越える訳にはいかない。
もし萌絵と一緒になるのなら、それは妻と別れた後。
一人「ご、ごめん萌絵ちゃん!」
そう言って俺は飛び出した。
ト書き〈バー〉
俺はそのまま家に帰らず、またバーへ行った。
一人「あ、いた!聖子さん!」
聖子「あら一人さん。どうされました?」
一人「僕、今の妻とは別れます!そして萌絵さんと一緒になろうと…」
そこまで言い掛けた時…
聖子「それはいけません。言った筈ですよ?萌絵さんとはプラトニックな関係を貫き通すべきなのです。でなければあなたの身に必ず不幸が訪れます」
一人「そんな!惨いじゃないですか!?萌絵さんのような人を僕に紹介しといて、いざ関係が深くなりかけたら別れろなんて!あなた、一体どういうつもりなんですか!僕は妻と別れてから、付き合うって言ってるんですよ!」
聖子「これは認識の違いですね。私はあなたに『今の奥さんと別の女性を比べ、今後の人生の選択を冷静に決めて頂く為』に萌絵さんを紹介したのです」
聖子「それに萌絵さんは今もまだ私のクライアントとしてセミナーに通っておられ、その心身の内に問題を抱えてらっしゃいます。そんな状態であなたと結婚してしまえば、あなたの身にもきっと不幸や災いが訪れるでしょう」
一人「そ、そんな!萌絵さんの一体どこに問題があるってんですか!」
俺は何度も食い下がった。
聖子「ふぅ。そこまで萌絵さんの事を。わかりました。それでは萌絵さんとあなたが今後もお付き合いできるよう、私が取り計らって差し上げましょう」
聖子「でもいいですか?今後その事で、あなたの身にもしトラブルが降り掛かるような事があっても、私は一切責任を持ちません。彼女との交際を決められた以上、最後まであなたが責任を持って、彼女を包容してあげて下さい」
ト書き〈数日後〉
数日後。
妻は土曜から旅行に出かけていない。
一人「グフフ、萌絵ちゃ~ん💛もうすぐ君と一緒になれるんだねぇ」
旅行から帰った直後、妻に離婚届を突き付ける気でいた。
(料理を持って来てくれた時)
萌絵「はいこれ♪一人さんの好きな骨付きお肉の料理です!あ、食べ終わったらお肉の骨、取っておいて下さいね♪次のお料理に使う出汁になりますから♪」
料理が全く出来ない俺の為に、萌絵は自宅で作った料理を持ってきてくれた。
ト書き〈数日後〉
それから更に1週間後。
一人「どうしたんだろ?最近来てくれないなぁ」
どうした事か、萌絵がピタリと来なくなった。
(台所に置いてある肉料理の残骸の骨を見る)
一人「骨も出汁取りに使うって言うからずっと置いてあるのに」
台所にある肉料理の残骸の骨もかなり溜まった。
一人「ん…?」
その骨を見ている内に、俺は何となく気になった。
本当にかなりの量の骨。
俺はふとした勢いで、その骨を繋ぎ合わせみた。
すると…
一人「え…?」
組み立てるように骨を繋ぎ合わせて行くと、人の形になった。
ト書き〈一人の自宅を外から眺めながら〉
聖子「気付いたかしら彼。あの骨が誰の物だったのか。萌絵が料理して持って行ってたあの肉は人の肉。その骨は人の骨。彼女は自分の想いを遂げる為、そして純粋に彼だけを愛した為に、彼と結婚する為の手段を選ばなかった」
聖子「私は一人の『自由になりたい・本当に愛する人とだけずっと付き合いたい』と言う本心と夢から生まれた生霊。その願いを叶える為だけに現れた」
聖子「萌絵は今頃、事後処理に追われている頃。彼女との連絡が途絶えたのはその為よ。所詮、一人が離婚話を切り出しても奥さんが別れてくれる保障はどこにも無い。それどころか寧ろ、外で金を稼いでくる亭主を上手く手懐けて、これからも楽しんで生活できるよう、あの奥さんなら計画していた」
聖子「それを予想した萌絵は、邪魔な奥さんを亡き者として、一人との将来だけを思い描いた。だから言ったのに。萌絵にはまだその心の内に解決していない問題があると。一人はこれからそんな萌絵のサイコパス気質と対峙する事になる。でも結婚するんなら、そんな萌絵の性癖も抱え込まなきゃね…」
解説~
はい、ここ迄のお話でしたが、意味怖の内容は解りましたか?
と言っても、殆どラストの場面で意味怖ヒントは出尽くしていましたね。
肉料理の残骸となったあの骨は、ストーリー通り、静江の骨でした。
旅行に出がけの時に静江は萌絵に拉致され、殺されたのです。
静江を亡き者とし、一人を乗っ取ろうとする為。
誰かと付き合おうとする時、その相手の本性は分かりません。
いざ相手の本性を知った時、信じられない性癖や習慣、
主義や思想の持ち主だった…と気付く事も多いものです。
これを見ている人の内に、
もし交際中の方・結婚されている方が居られたら、
「今のあなたの恋人や伴侶は大丈夫ですか?」
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=sTGHAkP3ACo&t=66s
いっときの夢 天川裕司 @tenkawayuji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます