第18話 血塗られた過去!…ゾンビ化した俺にフミが恐怖の叫びを上げた夜😱の話

 あれは俺が20歳の頃だったね。

 

 夏の、やたらムシ暑い日の夜にね、母親フミから近所にお使いを頼まれたのよ。

 お使いの内容はもう覚えてないんだけど、まぁ大したことじゃない簡単なものだったと思う。


 って訳で俺は軽い気持ちで引き受けて、自転車で家を出た。


 俺の家は国鉄常磐線のK駅の前の商店だったから、スタート時は周りは明るく、俺は無灯火で自転車を漕ぎ出した。


 しかし当時は今ほどまだ周辺に家屋が建て込んでなかったから、駅前から少し外れると、急に景色は暗くなって行った。


 駅前からの通りはやがて突き当たりになり、その先は土の空き地になっていた。

 その空き地を囲むように道は走っていて、突き当たりを左折したあと、右折して行けば頼まれたお使い先に向かう訳なんだけど、ここで…若造だった俺は突然ちょっと横着な考えが頭をよぎった!


 「このまま空き地を横切って行けば早いじゃん!」


 まぁ当然と言えば当然の考えだが、まさかこの直後、我が身に地獄のような展開が待っているとは全く予想も出来ない俺だった。


 …って訳で俺は何の躊躇もせず、ペダルを漕ぐ足に力を込めてまっすぐ空き地に突っ込んで行った。


 次の瞬間!


 自転車は何かに押し返されるように止まった。

 俺は一瞬何が起きたのか分からなかった。

 しかし続いて両腕に激しい痛みを感じた!


 …何と、この空き地は有刺鉄線がぐるりと張られていたのだ。


 その有刺鉄線は適度に錆びていたため、光らずに夜の暗さと同化していて、さらに無灯火自転車で突っ込む俺の目には全く映っていなかったのさ!


 さらにさらに言えば、乗ってた自転車は小径タイヤだったので、タイヤは鉄線にかからず、結果俺の両腕、手首とヒジの真ん中あたりと、上腕部がグッサリ鉄線に刺さっていた。


 とたんに俺の腕からはダラダラと血が噴き始める。

 刺さった鉄線から身体を離すと、刺さってた肌の穴に夜風がヒリヒリ痛い。


 「こりゃあどう見てももうお使いは無理だな…」

 そう悟った俺は仕方なく、痛む両腕で自転車を押して、来た道を戻った。


 …明るい場所であらためて見てみると、当然両腕は血まみれだった。

 半袖シャツを着ていた俺は、自転車を置くと、血が衣服に着かないように腕を前にだらんと垂らし、背中を丸め、うつむき加減に滴る血を見ながら歩いて家へ入って行った。

 …血の気の失せた表情のそのときの俺の姿はまさしくゾンビそのものに見えただろうね。


 ホラー話じゃないぜ、実話だぜ!


 「…ただいま〜」


 弱々しくそう言って戻った俺を見た瞬間、母親フミの絶叫が家中に響き渡ったのは言うまでもない。




  って話でした。


 第18話     完

 


 


 


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