第13話 和やかな花火遊びは突然恐怖の展開に変わり、そしてアイちゃんが犠牲になった話①

 これはもう30年くらい前の話さ。


 俺はまだその頃30代前半で元気だったよ。

 会社の、20代の若造社員らと、仕事終わりの後で花火をやろうってことになった。…夏だったからね。


 って訳で金曜日の夜、市内の公園に5人くらいでそれぞれ花火を持って集まった。

 女子2人、男子3人のメンバーだったな。


 で、最初は手持ち花火やドラゴン花火などで仲良く和やかにやってたんだけど、そのうちメンバーの中のヒデキ君が缶ビールなど飲んで盛り上がり、持参のロケット花火を出して来た。


 すると奴はロケット花火を地面にずらずらと寝かせてそのまま火を点けたのさ!

 「えっ!?」

 とメンバーらが思った瞬間、ロケットはビシュビシュビシュッ!と次々に地を這うように飛び出し、そのうちの2発はツツジの植込みを突き抜けて公園トイレの壁にパーン!と当たって炸裂したのよ。


 「コラ〜ッ!…お前ら何やってんだ、危ないだろーっ!!」

 たちまち公園脇の住宅からおじさんが叫びながらやって来ました。…ま、当然だわな。


 …結局俺たちはそれで花火を渋々しまい、解散することにしたんだけど、女子メンバーのナオミちゃんが、

 「せっかく用意した花火がまだいっぱいあるんだし、明日の夜、今度は周りからクレーム来ないような場所でもう一度やろうよ!」

 と悔しそうな顔で訴えたんだよね。


 …って訳で翌土曜日の夜、俺たちは再度花火を持って集結したのさ。


 今回の場所はのどかな埼玉県吉川市の江戸川土手内の河川敷。

 もちろん河川敷内に人家は無く、平らな草広場と藪がばらばらと混在する、花火を存分に楽しめる場所だ。


 ところが昨日ロケット花火を乱射してヒンシュクを買ったヒデキ君は今日は用事があって不参加だった。


 「そういやここの近所にアイちゃんの家があるよ!…ヒデキ君のかわりに連れて来ようよ」

 するとメンバーの中のワカバヤシ君がそう皆に提案したのよ。

 …アイちゃんというのは同じ会社で事務職をしている26才の男子社員だ。アイカワ姓なので仲間内ではアイちゃんと呼んで接していたのね。


 って訳で俺たちはぞろぞろと歩いて土手を越え、土手下の集落内の小路をワカバヤシ君の案内でアイカワ邸へと向かって行った。

 集落の周りはカエルがゲコゲコ合唱している田んぼ地帯だ。


 「だけど、いきなり押しかけて花火やろうって、アイちゃんビックリするんじゃない?」

 ナオミちゃんが歩きながらそう言うので、

 「なぁに、ナオミちゃんとマキちゃん、女子二人で誘えば奴は必ず乗って来るさ?」

 俺が応えた。


(※マキちゃんは後の私の妻です、すいません)


 そして程なく到着したアイカワ邸は瓦屋根の二階建て、田舎によくあるタイプの民家だった。

 見れば二階の部屋に明かりがついていたので、

 「アイちゃんが居る部屋かな?」

 とワカバヤシ君が呟いた。

 すると早速女子二人が部屋を見上げて、

 「アイちゃ〜ん!…花火やろ〜っ!!」

 と叫んでいた。



 …って訳で②へ続く。


 


 


 


 


 

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