第26話 ラブホテル

 駅へと続く道にチラホラといるカップル。

 多分、その数組と向かう場所は同じだろう。


 しかし、その中で誰よりも一番相手のことを考えているという気持ちが強いのは、一目瞭然であった。


「そ、そんな急がなくても――」


 後ろから霧先輩の声が聞こえてくるけど、私は足を止めない。

 むしろペースアップをしてしまう。

 駅前に着くと、息もつかぬままラブホに入ってく私たち。


 タッチパネルで値段も見ないまま良さげな部屋を選び、カードキーを奪うように発券機から取る。

 エレベーターのボタンを連打して、足踏みをしながら来るのを待つ。


「来るのが遅い!」


 最上階から降りてくるエレベーターすら待てず、


「霧先輩、階段使いますよ!」


「え⁉ う、うん」


 横にある階段を駆け足で登り、今日の戦場である三階の部屋に到着した。


 部屋に入ると鍵を閉め、靴を脱ぐ。

 霧先輩をベッドの方へ押すように足を進めると、私の方に振り向いた霧先輩は困惑した表情を向けていた。


「萌音ちゃん、ここって――キャッ」


 言いかけたとき、私はもう既に霧先輩をベッドに押し倒していた。


「霧先輩。私をここに誘ったってことは……いいってことですよね」


 鼻息の荒い私は馬乗りで覆いかぶさり、焦る霧先輩の首筋をツーっと舐めながら言う。


 シャンプーと香水の匂いが私の鼻孔をくすぐり、舐めた首筋からは香水の味がした。

 その全てが私をさらに興奮させてくる。


「んっ……私はラブホに行こうなんて一言も……」


「遠回しに言ってくれたじゃないですか。休憩しようって」


「休憩ってそうゆう意味じゃ――っ//」


 ビクっと体を揺らし、甘い声を漏らす霧先輩。

 私の手は服の中に入り、下着越しに霧先輩のハリのあるたわわ胸をまさぐっていた。


「今さら恥ずかしがっても遅いですよ。もう止められません//」


 自分下半身をイジり、体をビクリとさせながら言う私。

 あぁ、霧先輩にどんな目で見られているのだろうか。


 飢えている獣のように見えているのか、それとも懐いてくる子犬と見えているのか。

 どちらに思われているか分からないけど、霧先輩の弱々しい表情に私はさぞかしいやらしい顔をしているのが自分でも分かる。


「萌音ちゃん、っ――そこはダメっ……っ」


「体は正直ですね。もうビンビンじゃないですか」


「あっ……そこ弱い……からっ//」


 谷に腕が収まるほど立派な双丘の突起を人差し指で撫でるようにイジると、今まで聞いたことのない甲高い声を霧先輩は漏らす。


「霧先輩……もっとシてあげますから、脱いで下さい……」


 服から手を抜くと、息の荒くなった霧先輩の耳元で囁く。

 もう服の上からだけでは収まりきらない。


 今すぐありのままの姿になって絡み合いたい。粘膜という粘膜を濃厚接触させたい。

 赤く火照りあがった霧先輩は静かに頷くが、荒くなった息のまま私の手を取り、トロンとした目を向けてきた。


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