第60話鬼とJKと条件
「それじゃ、お世話になりました。」
「うむ。礼儀はいいんじゃな。」
翌日。さすがにもう帰らなくてはとの事で私は今、挨拶をしに長の家の玄関前にいる。
「わいも行くからの!達者でな!」
「木葉姐さん、また来てくだせぇ!」
「ちっちゃいタヌキがたくさん。可愛いな。」
てっ!と片手を上げるタヌキは私の腕の中。
私とタヌキのお見送りにたくさんの弟ミニタヌキ達が集まってくれた。
モフモフがいっぱいでモフりがいがあるったら。
「ちょっと、私を置いていく気?」
「ユキメだ。準備遅い。」
「今日発つなら言っときなさいよ。忙しいったら。」
「来ると分かってたからね。特に言わなかった。」
「なにそれまったく。」
ふぅ。って横に来たユキメはちょっと照れ顔。
そんな私達を見て長は「仲良いのう?」と感心してるみたい。
「おぉーい3人ともー!!勝手に行くなよー!!」
「あれ?トモナじゃん。どしたの」
「どうしたって酷いじゃんっ!!僕もお見送りだよ!!もぉー帰るの早いし急なんだから。」
「同じ事言われてるわね、あんた。」
はいこれ!ってトモナがニコニコで渡してきたのはお菓子?なんだろこれ?
「それは無女から!楽しかったからいつでも来なさいって伝言預かった!僕からはこれね。」
「なにこれ?」
「困った時に使うといいよ。木葉はぜぇぇったいこの里に嫁に来てもらうんだから!!」
「…はぁ?」
意味わかんない。無女が餞別くれるとは思わなかったから嬉しいけど、トモナのコレはなに?
なんかちっさい火薬玉みたいな形した物貰ったけど…
困ったら使えって、どゆこと?
「ハツキだよ!!あの犬、何するか分かんない!!イツキはまだ療養が必要だからそれはお守り!」
「あぁ、なるほど。ありがと。」
「絶対使ってよ!!約束だよ!!」
「う、うん。それじゃそろそろ」「木葉!!」「あ。噂をすれば」
行くわ。って続けようとしたら寝巻き姿の鬼が慌てて走ってきてる。
そのまま目の前まで来たらタヌキをペッと投げて肩掴んで怒ってるや。
「お前なんで黙って行くんだよ!!」
「それをお前が言うか。」
「ぅぐっ。」
「どうせあんた動けないでしょ。私もそろそろ帰らなくちゃ学校への言い訳がないの。」
「あ、そう言えば。あんた学校は?」
「ウイルス性の胃腸炎の後に風邪をぶり返したとか言って休んでる。」
「サボりの達人ね。こんなにピンピンしてるのに。」
うぐぐぐって口をアーチ状にさせて何も言えてない鬼はとても悔しそう。
ふふ、ざまぁみろ。
ユキメは逞しい神経してるってなぜか褒めてくるし。
こっちはコレだと怖いや。
「そんな言い訳使えんならまだもう少し居れるだろ?もうちょいすれば俺も動けるんだ、それまで待ってろよ。」
「イヤ。今回の事、まだ根に持ってるから。反省しろバカ鬼」
「木葉が根に持つと長いんじゃのう。」
ビシッ!!っていい音鳴らして距離の近い鬼のおデコに渾身のデコピンしたら「ふがぁ!?」って声上げてるわ。
私もちょっと指痛いから今度からは別のでやろ。
「っっつぅぅっ!おまっ!!散々謝り倒しただろ!?」
「だからなによ。謝っても許すかどうかは私の気持ち次第でしょ。」
「あれだけの事やらかせば当然よね。私まで巻き込んで。」
「女の恨みは恐ろしいのう?イツキ。」
ジトー。と見下ろす私とユキメにタジタジになりながらタヌキに慰められる鬼。
トモナは指さしてお腹抱えながら笑ってるし賑やかな旅立ちだわ。
「うぐ…き、、気をつけて帰れよな…」
「ユキメとタヌキもいるから大丈夫。」
「あのナルシスト犬に会っても構うなよ。」
「過保護か。それこそ大丈夫よ、私あぁ言うタイプ嫌いだから。…1つ、あんたに言っとく事がある。」
「な、なんだよ」
アーチ状から少し曲がった一みたいに口を曲げてるから引き止めを諦めきれてないんだろうな。
でも今回の事、仕掛けてきたのは鬼だから譲ってやんないしちゃんと罰もつける。
「帰ってきたら私の分担してる家事、あんたがやりなさいよ。」
「!!。お、、おう…」
「半年ね。」
「長くね!?せめて1ヶ月とかだろ!?」
「迷惑料込みだから。イヤなら里にいればいいよ。」
「はがっ!?い、嫌じゃねぇよっそんくれぇ請け負ってやる!!」
「ふん。」
「あ、私の分もよ。巻き込まれたんだから。」
「ゔっ。」
ふんっ。と鼻ひとつ鳴らして宣言したのはユキメ。
その条件に鬼は項垂れたけど、これくらいで済んでよかったじゃない。
これから半年、コキ使おっと。
「さすが木葉。イツキが戻ってもお手柔らかにね!」
「本当に無情な娘じゃの。」
「はぁ…すぐに帰るからよ。無理するなよな。」
「はいはい。そのままラッピングでもして返すけどね、その言葉。じゃ。」
じゃーねー!って見送り組が手を振ってわいわいとしてる。
妖怪の里、悪くないかも。
―――
「許してもらえてよかったねぇイツキ。」
「俺は多分、半年コキ使われるだろうけどな。」
ははは。と笑う鬼でした。
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