第59話鬼とJKと宴会
ー…きろ…いー
なんだろ、誰か呼んでる?
一体誰が…
「おい木葉!そろそろ起きろ!」
「んんー…おに?なに、、うるさいなぁ」
「宴会が始まるんだ。主役がいなくてどーする。」
「…は?」
ユサユサって肩揺らされて渋々目を開けたら、部屋着かな?見慣れない着流しを着崩して鬼が横に座ってた。
…どゆこと?
「今回の戦、木葉の活躍が大きかったから。だからお前いなくちゃ始まんねぇーんだ。」
「いや、その前に。なんで私のベットにいんのあんた。変態?変態だったわ。」
「違ぇからな!?これは俺のベットでここは俺の宮だ!!」
「??あ。そーだった。」
完全に寝ぼけてた。そうだここ、鬼の部屋じゃん。
文句言うだけ言ったらスッキリして寝ちゃったんだった。
「ったく。ほれ、行くぞ。」
「しょうがないなぁ。くしゅっ!」
「木葉?」
あれ、なんだろ?なんか寒い。
今の時期はたしかに冷えるけどさっきまで暖かかったのに。
暖房消した?
「まぁいっか。ーバサ!ーん?」
「寒ぃんだろ?着とけって。」
「…ありがと。」
「おう。早く行こうぜ」
これ、鬼の羽織だ。
箪笥の中からわざわざ出してかけてくれた。
すごい暖かいな、コレ。生地はなんだろ?
「目、大丈夫かよ」
「まぁ。」
宮を出て鬼に手を取られて歩いていれば、そんな事をふと聞かれた。久々に泣いたからちょっと腫れてるけど酷くはないと思うんだよねたぶん。
「ん?あれはぁ…」
「あ、来た。」
「ユキメだ。何してるの、ここで。」
ヒンヤリする廊下を進めば更にヒンヤリしてきて、パッと前を見れば壁に寄りかかりながら退屈そうに立っているのはユキメだった。
私に気づいたらよっこいしょって感じでこっちに来てジー。と顔を見てきてる。
…何が言いたいってのまったく。
「あんたを待ってたのよ。…ほら。」
「手?ってうわっ!つめたっ!!」
「主役がなんてブサイクな顔してんのよ。」
はぁー。って軽いため息ついて冷たい手を私の目に当てるユキメ。
腫れてるから冷やしてくれてるんだと思うけど一言余計だっての。
「一言余計。」
「はいはい。ほら、宴会場はこの襖の向こうよ。」
「もうすでに賑やかだね」
「待つって事は基本しないわよ。」
はは、って苦笑いを零せば躊躇いなく目の前の大きな襖を開けた。
そこにはもうすでにどんちゃん騒ぎをしてお祭りムードな妖怪がわんさかわんさか…
これ私いなくてもよかったんじゃ…
「おぉー!!木葉、遅いよー!」
「トモナ、すごい飲んでるね。」
「木葉ー!やっと起きたんじゃの、ほれ!ご飯じゃ!」
「あぁ、タヌキ。あんた怪我いいの?」
「うぬ!」
「すげぇ賑やかだな。いつもより激しくね?」
「相手里の妖怪もいるからよ。」
「マジかよ。」
ユキメと話してそう言う鬼はかなり引いてるみたい。
まぁそれも分かるほどにはうるさいけど。
しかも相手里って事は、今回揉めた里の妖怪もって事でしょ?
よく一緒に宴会なんてできるな…
「少し食べたら部屋戻ろ。」
「えぇー!!なんで!?木葉いないとつまんないじゃんっ」
「うるさすぎる。美味しそうなのどれ?」
「コレとかどうだい?巫女ちゃん。」
「ん?…誰」
トモナがヤダヤダ!って文句言ってるからちょっと離れようかなぁ。なんて思ってご飯取りに行こうとすれば、私の肩を後ろから抱き寄せる変な男が美味しそうなご飯を目の前に出してきた。
ご飯は美味しそう。でもこの男誰?
「あの戦の最前線で戦ってたんだ。犬妖怪のハツキさ。君、とんでもなく強いよね。よかったら僕のとこに来ない?もちろんお嫁に。」
「気持ち悪。自分の顔面に酔ってる感じが拍車をかけて気持ち悪。」
「こらハツキ!!木葉はあげないぞ!!将来はこの里に来るんだからな!!」
髪の短いくせっ毛のモフモフはいいんだけどなぁ。
コイツ絶対”自分イケてる”って思ってるタイプだよ。
人差し指口に当ててシー。のポーズしてかなり顔面近いし。
こういう男嫌いだわ。
「おい」
「おわ!?」
「なんだよお前。木葉になんか用かよ」
「鬼?」
さてどう抜け出すか。って考えてたら視界がグルン!と反転した。
いきなりすぎてビックリしたけど、コレは鬼の背中?
あのナルシスト妖怪と私の間に器用に体をねじ込んで庇われてる。
「あ、君あの鬼か!なんで奪うのかな?その子ちょうだいよ。」
「ざけんなクソナルシストが。おとといきやがれ。」
「えー。ねぇ巫女ちゃん、こっち来ない?絶対楽しいよ?」
「不屈のメンタルでワロタ。行くわけないししつこい奴嫌い。あと距離感おかしい奴も嫌い。」
「全然笑ってねぇし。つー事だ、仲間んとこ行けよワンコロ。」
チッ。てすごく不機嫌ですって前面に出してシッシッと追い返す鬼。
さっきまで機嫌よかったのに途端に悪くなるよなぁ。
あの犬妖怪もちぇー。て引いてくれたし、早くご飯食べて出て行こっと。
「あ、そーだ。巫女ちゃん今は長の家だよね?宴会終わったら会いに行くよ。」
「言語理解機能どうした。嬉しくないわ。」
「バカか?木葉は今、俺の宮にいんだよ。どうしてもな用事なら俺を通せ。」
「いつの間にか宿が変わった。」
「いいだろ別に。ほれトモナとユキメが待ってんだ、向こう行くぞ木葉。」
ムッスーとして腰を抱き寄せて歩くから歩幅が合わせづらい。
めちゃくちゃ怒ってるじゃん、鬼。
「やっと来た。面倒なのに目をつけられたのね、あんた。」
「後で鬼の部屋にミントを絞ったお酢を撒いとくよ。犬よけにね。」
「俺が追い払うからそれは撒くなっての…」
うへぇ…って。たしかにそんなの撒いたら私まで臭いに耐えなくちゃならなくなるか。
じゃぁやめとこっと。
―――
「イツキがヤキモチ妬いてるぅー。」
「うるせぇトモナ!!」
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