第54話撃沈の鬼と容赦ないJK

砂埃と化かし合い、色々な妖術が飛び交っているここはまさに戦の最前線。


所々に倒れてる妖怪もいて激しいなって思っちゃう。


「さてと、トモナはぁ…」


「あら?木葉?なんであんたがこんな最前線にいるのよ」


「出たな裏切妖怪二号。」


「は?」


はぁはぁって息を切らしてフワフワ浮きながら私の目の前に来たのは、所々汚れがついたユキメ。

浮いてるから岩陰に隠れているのにすぐ見つかっちゃった。


てか女子供は無条件に避難小屋ってわけじゃないのか。雪女って戦えるんだ。


「なんで黙って帰ったのよ。話題のバウムクーヘン用意してたのに。」


「なによそれ、とても美味しそう。取っておいてあるわよね?」


「腐るわバカ。」


「誰がバカよ。そもそも黙って出て行ってないわよ、イツキが知らせるって言ってたもの。まさか聞いてないの?」


「はぁ?なにそれ。」


あ、ヤバい。すごくムカつく。そうまでして私には何も言いたくなかったって事?へぇ?

ムカつきすぎて手に力が入るわ。


ほら、ギリギリギリって聞こえて「痛い痛い痛い!!なんて握力してんのよこの小娘!?」


「あら?よく見たらあんたが背負ってるの、無女じゃない。何してるの?」


「何って風呂敷代わりにされてんのよ!!丁度よく伸びるって私の中に物騒な物突っ込んで!!」


「物騒な物?なに、イツキを殺りに来たとか?」


「半分正解。あと半分はあんたらの手助け。」


「手助け?あ、そうか。あんた巫女だっけ。」


「本格的じゃないけどね。さ、タヌキ。準備して。」


「うぬ。」


うんしょ、うんしょ。って私が座って隠れるくらいの岩を一生懸命登ってる。

そのままポン!と大きなパチンコに化けて準備OKだって言ってくれた。


「ねぇちょっと、本当にやるの!?」


「当たり前でしょ。その為の武器だよ。」


「この子人間じゃないわ。鬼よ。鬼より鬼よ。」


「面白そうね、何やるのかしら?」


うわ、袋状の無女が冷や汗ダラダラかくから手元が狂う。

汚いなぁもう。ユキメは着物の裾で笑った口隠しながら私の後ろに来るし。


あんた戦闘員でしょうが、まったく。


「ユキメ、この里の仲間に一声かけといて。死にたくなければ一旦引けって。」


「あんた本当に何する気よ。声はかけるけど。」


「ん。よろしく。タヌキ、無女をちゃんと固定するんだよ。弾みで敵陣に飛んでいっちゃうからね。」


「任せておけ!」


「いい子。ーよし、セット完了。ユキメよろしく。」


「はいはい。アンタらちゅうもーく。今からこの巫女がすごい事するから命が惜しい奴は引けってぇー。」


「かるっ。」


ググググッと伸ばされるパチンコタヌキとそれを引っ張っている私。


その姿を見たトモナが「木葉!?なにしてんのアレ!!」って驚いていて、ムカつく声が「アレぜってぇヤバい奴だ!!お前ら一旦引け!!」って命令出してる。


お前も撃ち抜かれろバーカ。


「木葉特製爆弾。発射。」


ーービュン!!


「あれは…石?」


「破魔札張ったね。」


「はぁ!?」


あ、さすがにユキメも驚いてる。

放たれたと同時にビュンビュン!!って勢いよく飛んで行く石達には全部に私の作った破魔札が張ってあるんだ。


トモナですら一発で気絶するあの破魔札がね。

…あれ?でも無女は何ともなさそうだった。なんでかな。ま、いーや。使えるし。


『いぎゃぁぁぁあ!!!』


飛んで行った石達はちゃんと役割を果てしてくれてるや。阿鼻叫喚だなぁ。でもまぁ妖怪だし簡単には死なないでしょ。たぶんおそらく。


「な…なんて恐ろしい…」


「じゃろ?木葉は怒らせん方がええ。」


「あんた生まれてくる種族間違えたんじゃない?」


「あのムカつく最低鬼と同じ事言わないでよ。」


チッ。て舌打ちすればあーあって反応がユキメから聞こえる。


これで一気に形勢逆転したんじゃない?知らんけど。


「す…っげぇ。さすがだよ木葉…」


「相変わらず容赦ねぇ…」


「あ、そーだ。トモナー」


「あっ、えっ、僕?」


「そう、僕。これあげる。ケリつけて来てよ、小屋で待ってるから。」


「こ、コレは!!」


「何貰ったんだ?んがぁ!?これはっ」


「家にあったお高い日本酒。もう呑む奴もいないし有効活用しようと思って。」


大惨事になった敵陣に呆気に取られているトモナがわりと近くにいたから駆け寄る。


はいこれ。と渡したのは鬼がいつも楽しみに呑んでたお高くて美味しい(らしい)日本酒。


ストックしてあった一升瓶2本、まとめて渡したからトモナはヨダレだらだら。


「やったぁぁ!!これずっと呑んでみたかったんだ!ありがと木葉!」


「どいたま」


「待て待て!?それは俺のだぞ!?楽しみに取っておいたんだ、それ以外で」「もう私の家でコレ呑む奴いないから。全部呑んじゃって。」「…」


「そう言う事なら任せなよ♡いっただっきまぁーす!」


ゴクゴクゴク!ってまるで夏場の猛暑で死にかけた時に飲む水のような勢いで一升瓶傾けてる。すご。酒呑童子すご。


「俺の酒…」


「じゃ、私は戻るね。死なないように頑張ってよ。」


「こ、木葉!悪かっ」


「じゃぁねトモナ。」


ペシ!って伸ばされた鬼の手を叩き落として戻る。

震えてるタヌキと無女も回収して行かないと。


―――

「ばーか。」


「ズゥゥン…」


完全拒絶されて落ち込む鬼でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る