第9話 出発前夜

後は、乾燥ナッツと、乾燥フルーツを3銀貨分購入して終了。


あとは、空間収納に入れてのお引越しだから、野宿に必要そうな雨具とか鍋もどうにかなるのと、防水布や雨具もあるから、特にそろえる必要な無い。


次は今日の夕飯を探しに行こう!


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この町一番美味しいご飯を最後の晩餐として、食べたいと思う。てくてく歩くこと5分。ほんの少し人通りが少なくなる場所に、派手に構えてるお店が一つ、ほかのお店は質素な佇まいなのに対し、この店はかなり自己主張が強い見た目をしている。街頭をふんだんに使ってピカピカさせているのだ。


ピカピカさせ過ぎて、大きい通りから追い出されてしまったということらしい。他のお店が霞んでしまうからと。食を広めたいけどネオンは下せないという店主おこだわりのデコレーション。絶対ギャルっぽいハトと気が合うと思う。




「こんばんわー」


「はい、いらっしゃい、久しぶりだね、元気にしてた?」


「元気にしてましたよー、ネイスさんも元気ですか?」


「私はいつだって元気よ!」


「実は別の街に行くことになりまして、今日でご飯が最後となります、いつもの卵かけパンお願いします」


「最高の卵かけパンを、用意するわね」


ここは卵が絶品の屋台なんだ。醤油が無い世界なのに、醤油っぽい何かをかけて、限りなく前世で食べていた卵かけご飯に近い物がある。最高の卵かけごパンなんだ。


作り方を見ていたんだけど、まずパンを細かくちぎってご飯風に見せた物に、白身の部分だけいれて、混ぜる。混ぜ終わったら、黄身の部分をいれて軽くかき混ぜてから、醤油をかける。


パンは数日たったカッチカチのものをあえて使用しているらしい、この人も前世日本人じゃないのかな?と思ったりもするけど、聞かないでおく。


卵かけごパンにここまで手間をかける人がこの世に居るだろうか?居ないはずだ、この世界では。何よりも醤油っぽい何かが他のお店で売ってるのを見かけたことが無い。思い切って聞いてみようかどうか迷ってたら、美味しそうな卵かけごパンが出てきた。


銅貨2枚を渡す。しかも安いときてる。毎日食べても飽きないと思うほど、私は好き。卵大好きすぎる。しばらく時間が空いてしまったのは節約してたから、引っ越すなら毎日来るべきだったと少し後悔するも、最後の晩餐よろしく、集中して食べたいと思う。


この世界は白米は無い、小麦粉が主流でもパスタやピザは見たことない、あと菓子パンという概念も無いみたいで、あれ?これ私パン屋やって菓子パンみたいなの作ったら大金持ちになれるのでは!?


これはピンときたのでは!?料理スキルもあるし!日本人だった頃職場でパン作ったことあるし!やれるのでは!?


でもその案はいったん温めておいて、とにかく引っ越しだ、レオ様から離れないと怖すぎるあの人。


お米が無いとこの世界の食生活がとても質素なのもに感じる。パンと野菜たっぷり具沢山スープのみ、というかんじで。


朝 パン 野菜たっぷり前日残りの具沢山スープ

昼 パン

夜 パン 野菜たっぷり具沢山スープ 週に1.2回お肉かお魚


と言う感じで、栄養バランス大丈夫かな?ってぐらい質素。スープの中に肉も魚も居れてしまうので、わざわざお肉だけの一品料理など作らないんだろうなと、めんどくさいもんね。なのでこの屋台の卵かけごパンはかなり攻めてる料理になる。


以前生きていた世界の食があまりにも充実していたので、質素にかんじるんだろう。パンにはさんだチョコ、焼きそばパン、メロパン、美味しかった菓子パン。チョコレート、ジャガイモの薄くスライスライスして揚げた奴、平和だった日本に内戦をもたらした、きのこvsたけのこ戦争。食べたい、ものすごく食べたい。


私がパン屋さんやったら無双できる気がしてきた。


この世界の人は、1+1=100にしようという考えがあまりないらしく、昔からの食を大事にしてるからこそ、あまりアレンジして食べてみようとは思わないよう。焼きそばパンを売り出す前に、焼きそばを浸透させないと絶対誰も手を出さないと思う、道のりは遠いね。


こんなにおいしい卵かけごパンを食べても、微妙な顔をして去って行く、卵が生ってところも苦手なよう、刺身とかないもんね。全部火が通ってるからなぁ。仕方ないんだけど、もっと卵かけごパンが多くの人に受け入れて欲しいなって、切実に思う。


「はいどうぞ」


「いただきます」


「召し上がれ」


このやり取りって絶対日本人だよなぁ?お互いわかってても、確認はしあわない、あくまでもここは日本ではなく、今はこの世界だから。もしお米を見つけたら絶対もってきてあげよう。と心の中で思う。


ほかほかの湯気が立ち上るパンの粒に、混ぜ込まれた卵のおいしいこと。この世のなかで卵を超える食材があるだろうか?ぶっちゃけすぐパンがふやけてどろどろになってしまうんだけどね。これもこの世界で受け入れられない要因なんだろう。


まてよ、ふわふわ卵サンドとか売れるんじゃ?マヨネーズ無かった・・・マヨネーズ作るか?たぶん卵と油振れば作れるんだよね?違うかな?今度やってみるか。


え?マヨネーズ作れたら私もう大金持ちで一生のんびり過ごせるのでは?今までなんで思いつかなかったんだろう、ぼんやり生きすぎよ。追い詰められないと動かないタイプだからしょうがないけど、よし、前世の記憶をフル活用させるか。スキルや魔法関係ない、すべてはお金だ!世の中はお金だ!お金さえあれば生きていける!


よし、マヨネーズ作るぞ、ついでに無理かもしれないけどこの醤油もどきもレシピを教えてもらえるか聞いてみよう。


「すみません、このタレっぽいのはどこで買えるんでしょう?」


「これはね、私の秘伝のタレなの、だからどこにも売って無いのよ」


「レシピ教えて頂くことってできないですよねぇ?」


「そうねぇ、こればっかりは申し訳ないけど、教えられない」


「ありがとうございます」


そりゃそうだ、秘伝のタレだもんね、残念だなと思っていたら


「レシピは教えてあげられないけど、少しだけなら譲ってあげるわよ。そんなにがっかりした顔しないで。この街から巣立つせめてもの選別よ、この街に戻ってきたら必ずまた顔を見せてね」


と言う優しい言葉を頂き、醤油もどきを手に入れることができた!これは本当に大事に使っていきたいと思う。卵を産むトリを手に入れるまでは、空間収納に入れておこう。


部屋に戻って明日この部屋を出ていく旨の手続きを行なう。〇日までに出ていけばいいという勧告だったから、お知らせしなくてもいいかな?って少し思ったんだけど、一応手紙に書いて王級の人事部あたりに送っておこう、実際どこに出したらいいのかわからないんだけどね・・・働く前にもうすぐお役目ごめんになってしまったので。


あとは部屋にある、備え付けの家具以外は全部収納して、パジャマと明日着る服以外は仕舞ってしまおう。


ハトの変貌や、今日1日でいろいろあったのもあって、少し疲れてしまったので、早く寝ることにする。


眠りにおちながら、もっと王都の食を満喫したかったなぁーってほんの少し名残惜しい気持ちになるも、きっと新しい街でも楽しいご飯が待ってるに違いないと言うわくわくもあって、その日の夜は両手で抱えきれないほどのお肉をもってわははは言いながら食べてる幸せの夢を見た。


スライム:ほんと食べるの好きなのにマスター全く料理しなくて面白い、お湯すら沸かさず口の中に直接水魔法で水飲んでる子、今まで見たことないよどんだけなの。


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夜に1話更新します


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