未体験の青春

朋晶

未体験の青春

新しいバターを開けた朝を卒業式みたいに覚えている


本鈴が鳴るとき渡る川があり一人を避けて届くプリント


カラスが去る 第二ホールのコピー機にあったって読まれないよ伝記


その場のノリで花を買いたいぼくの帰り道には綿毛しかない


ケイトウを「のうみそみたいな」って言う 名前を知ってものうみそ ごめん


レジに置く漫画雑誌と七味(かけますか)(陳皮が入らんように)


アイスがチョコに包まれるのかチョコがアイスを包むのか 哀なのか


ドーナツに近付きたいレンコンはまだ早い ピアッサーを握った


せみしぐれ 三百円のシャンプーは制汗剤の涼も消せない


魔法ってことだ必殺ペディキュアの落とし方とかいいよスキップ


落書きと地理のノートは滑走路チョークが飛ぶまで縦ノリでいる


アンブレラカラーが跳ねる 照明の真下はヒロインの席じゃない


ラインクロスが取られない五十分サイドサーブで輝いていた


クロッキー となりのやつは桜桃忌生まれで足が異様に速い


新作と片手間みたいなブラック似合ってますねうっすいマスク


黄土色した春があってもいいね 落ちた消しゴムは拾われない


誰の好きな人にもなってないけど足の小指はちょっと長いよ


選ばれし者には見えるスカートを揺らして教卓でギターソロ


屋上はタバコたちのにおいがする懺悔のようにキュービィロップ


別人になるしかなくて席替えを待った一輪挿し未だ空

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

未体験の青春 朋晶 @warabimochi3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画