第14話

 「でも、やっぱり通報だけでもさせてくれる?」

「確かに、魔物は野放しにはできないしな」

辺りをうろうろ見回す。

「お、珍しくあった」

勇真は公衆電話を見つける。

「スマホから連絡すればよくない?」

「スマホから個人情報分かるかもしれないから、公衆電話なら探られないかなと」

「こんなときに、俺のこと気にしないでいいのに」

「今度こそ記憶操作の魔法失敗して、廃人になりたくないからな」

優魔から専門の部署の電話番号を教わる。

「あ、財布お前持ってないよな」

「入ってる鞄置いてきちゃった」

「ズボンのポケットにまだ入っているかな」

勇真が勇真の体のポケットに手をつっこむ。

100円玉1枚と10円玉1円玉数枚が入っていた。

「よし、これだけあれば何とかなるな」

「え、これだけ?勇真さん、生活できるの?」

優魔は顔を引きつらせる。

「さっき買い物した分のお釣りなだけだから。財布にはまだいくらか入ってるし、明日には給料入るし」

むきになって、言い返す。

番号を打ち込む。

「すみません。はい、はい。実は魔物の気配を感じるお屋敷がありまして。住所は…」

つらつら話していく。

ガチャンと電話を切る。

「特に名前とか聞かれなかったぜ。やっぱり、時間はかかるみたいだけど」

そして、彼らは屋敷へと入っていく。

朝と同じように扉を開くが、この数時間で立てつけが悪くなったのか、さびついているのか、ギギッと大きな音が響く。

明かりをつけようと、スイッチを押すが、つく気配がない。

「さっき、仕事をしたときはついたのに」

「夜になったから、魔物にこの場が支配されたのかもしれない」

「魔物って、夜行性なんだな」

「昼間にも動けるものはいるけどね。でも、夜の方が威力を増すのは確か」

暗闇のなか歩いていくと、優魔の顔にべたりと何かがついた。

「蜘蛛の巣じゃん。やっぱり、背が高い分、掃除できてないところは引っかかるんだね」

手でパタパタ取り払う。

「今日引っ越し作業のあと、掃除もしたんだけどな。廃屋になってそんなに立ってないし、綺麗な屋敷だから取り壊すの勿体ないからって、このまま売りに出すっていうから」

「今回の件は魔物さえ倒せば、確かにこの屋敷は使えるけど。でも、ポルターガイストが起こる幽霊屋敷をそのまま使おうとするとか、肝が据わりすぎてない?」

優魔は苦笑いするしかない。

「家財はだいたい持っていたから、影になるようなところはないはずなんだよな。だから、部屋をしらみつぶしに探せば見つかるはず」

二人は廊下を進んでいく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る