第12話

 全く人気のない真夜中の街を、二人は駆けていく。

「さっきも聞いたけど、そこってそんなにやばいところ?」

「ああ。俺は霊感なんて持ってないから、幽霊とかは見たことないが、それでもあそこにはやばい奴が住み着いていると感じたよ」

向かいながら走る勇真の顔つきは真剣そのものだった。

いるであろう井上が、昼間にいた誰かは分からないが、それでも関わったことのある人が、翌朝冷たくなって見つかるのは後味が悪い。

まだ無事であることを祈る。

そのとき、ぞわぞわっと昼間に感じた以上に寒気を感じた。

これ以上近づいたら、命に関わるような。

思わず、行きたくないと思ってしまい、足がすくむ。

「どうしたの、勇真さん」

足が止まっている間に、進んで行った優魔が振り返る。

「分からねえけど、昼間にいたものがより強く恐ろしく感じる。深夜になっているからか?」

「確かにゴーストとか夜本番だよな。俺は何にも感じねえけど」

勇真の様子から、本当に恐ろしいものがいると実感するが、優魔は何にも感じないので、不思議だった。

「優魔は見たことねえの?よく魔法学校とかじゃ、ゴーストとか出るけど」

「いや、全くないな。魔法学校にゴーストが出てくる表現って、結局フィクションにすぎなくて。魔法と霊感は別物にすぎないというか。海外のオープンキャンパスとか行ったことあるけど、ゴーストがいる様子とかなかったな」

「じゃあ、お前の感覚が異様に鋭いのかもな。鳥肌立っているし」

「自分でそう思ったことないけどな」

自分の体を違う人が使うことによる感覚の違いに首をかしげながらも、前に進んで行く。

勇真は、恐ろしさに抵抗しながら向かうので、息切れが激しくなる。

「着いたぞ、ここだ」

幽霊屋敷といっても昼間は普通の屋敷に見えたが、夜は印象が変わる。

烏が鳴き、蝙蝠が羽ばたく音が響き、全体がおどろおどろしい雰囲気となっている。

見た目もだが、感じていた恐ろしさも最高潮へと達していた。

「確かにここまで来たら、俺も何かいるなって、感じる。これが本来の勇真さんの感覚ってことだよな」

「そうだな。でも、優魔のと比べたら、零感に近かったのかもな。あまりの恐怖で、黒い霧が出ているように見える」

勇真の視界には、雷でも鳴ったら完成しそうな、黒い霧で覆われた屋敷が映っていた。

「黒い霧!?勇真さんには見えているんだな?」

優魔は心底驚き、目を丸くした。

「っくそ、ここで魔法使いと一般人の視界の差に気づかされるなんて思わなかった!」

ぐっと噛み締め、悔しがる。

「優魔、何か分かったのか?」

今度は自分の気づかない異常事態があるのだと気づく。

「勇真さん。この屋敷にいるのは魔物だよ」

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