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 なぜコディは死ななければならなかったのか。

 その疑問にも答えが出たといってよさそうだったが、僕は空虚感に占められていた。もっともそれは、時差と長旅による純粋な疲労感かもしれない。今の僕に必要なのは、シャワーとベッドだ。

 

 いくつか残った疑問。

 なぜミアは立て籠り事件の直後、安全保障事業者に捜査への同行を求めたのか。そしてミアはどうして僕に、リヴィングストンのデータチップを渡したのか。

 もしかすると初めから、手に入れた真実を最後は誰かに託すつもりだったのかもしれない。ミアは自分に対する冷静な視点も持ち合わせていた。組織への協力が露見するのも、時間の問題だと自覚していたのかもしれない。

 今となってはどれも、わからないことだった。

 ただもし僕が、ミアにとってすべてを委ねるに値する相手と認められたのだとすれば、その使命は果たせたはずだ。そう考えると、急に体が軽くなる気がする。

「あなたの話、少しだけ興味深かった」

 メレディスが連行され、僕らも航空会社の会議室を出たあと、空港のバックヤードを歩きながら部長は僕に言った。

「正しさなんてものは所詮、結果への評価に過ぎないということ。確かに箱から出したら使えるレディメイド品と違って、あらかじめ形が決まっているものじゃない」

 そこまで考えていたわけじゃない、とはわざわざ言わなかった。

 深夜の廊下は、相変わらず寒々しい場所だった。

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