第19話 召喚即ぷちっ
しばしの静寂があたりを包む。
まさか、呼び出すワードが間違っていたのだろうかと思っていると。
『ぷーん』
という、聞きなれ…。
『パァン(ぷちっ)!』
まさに一本締めもかくやというほどの軽快な一拍がさく裂した。
若返ったせいなのだろうか、動体視力や反射神経すら向上したかのような気がする。
「今のオレでなきゃ見逃しちゃうね。」
どこかで聞いたようなセリフをキメ顔で言っ…。
召喚即ぷちっの可能性に気づいた。
慌てて叩いた手と手、合わせた平と平をそっと開く。
そこには、ペシャンコになった一匹の蚊の姿があった。
蚊は小さな光の粒子になって消えた。
元の姿に戻る希望と共に…。
(あぁ………。)
がくり、と膝をついた。
最後の希望である、使蚊い魔さんはいなくなってしまった。
(何イキってたんだろう、そこは見逃しちゃってよオレ…)
これで、全てが終わった。
(…いや、そうなのか?)
考えてもみよう。
ここは、生前の元の世界とは切り離された世界である。
過去の自分を知るものは、誰もいない。
仮にいたとしても、今の魔法少女の姿を見て、かつての山城守と結び付けられる者がどれほどいるだろうか。
もっとも、スキルとかで中年=魔法少女が正体バレする可能性もあるだろう。
だが、こちらの世界の住人に対してであっても正体バレはヨロシクないと思う。
正体バレした場合を考えてみよう。
一方は、魔法少女(女性)の正体が中年(男性)で、両者を行ったり来たりする変態。
もう一方は、これからはずっと魔法少女(女性)として生きる覚悟を決めた元中年(男性)。
どちらの方が、より潔い生き方なのでろうか。
どちらにせよ、転生して0歳児から始めるつもりでいたのだ。
44歳の中年が永遠の17歳の少女になる。
ちょっと微妙な感じがするけれども、若返れただけでも儲けものではないか。
でも、心の中は男性のままなので、恋愛とかは無しの方向で。
ひとまず、覚悟が決まった感じなので、次に行くとしよう。
スクっと立ち上がり、お亡くなりになった使蚊い魔さんに合掌をす…。
『ぷーん』
…折角決めた覚悟なのに、何か馬鹿にされているような気分になった。
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