第15話 過去を超えるために
トウマたちは再び滅びた都市に戻ってきた。かつての繁栄が嘘のように、荒れ果てた廃墟が広がっている。20年前の都市の面影はほとんど残っておらず、瓦礫の山が無数に積み上げられていた。街の中心に立つかつての城砦も、今は半ば崩壊し、怪しげな魔物の巣窟となっている。
「ここが、かつて俺たちの故郷だった場所か…。」
トウマは苦々しい表情を浮かべながら言った。彼の目には、家族を失ったあの日の記憶が蘇っていた。都市を守れなかった無力感、そしてその後に襲ってきた絶望。それが今、彼の中で再び燃え上がり、怒りと憎しみが力に変わっていった。
「準備はいいか?」
ナオミがトウマに問いかけた。彼女の目もまた、決意に満ちている。アキラも静かに頷き、装備を整えた。
「今回こそ、俺たちはネクロスを倒すんだ。どんな犠牲を払ってでも。」
トウマの言葉に、二人も同意の表情を見せた。彼らは冒険者組合の承認を得ていない。先輩冒険者もいない。しかし、それでも彼らはこの都市を取り戻すために立ち上がったのだ。
瓦礫を踏みしめながら、トウマたちはゆっくりと都市の中心へと向かって進んだ。途中、壊れた家屋や倒壊した建物が目に入り、その度にかつての生活の記憶が胸に迫った。
「ここで、みんなが暮らしていたんだよな。」
アキラが呟くように言った。トウマもその言葉に頷きながら、過去の思い出が頭をよぎった。家族と過ごした日々、友人たちとの楽しい時間。それら全てが、一瞬で奪われたあの日。
「注意しろ、ここから先は魔物が出てくるかもしれない。」
トウマが警告を発し、三人は緊張感を持ちながら進んでいった。瓦礫の間から、不気味な影が動くのを感じた瞬間、彼らは武器を構えた。
「来るぞ!」
トウマの声と同時に、巨大な魔物が姿を現した。その姿はゴーレムのように巨大で、石の体を持っていた。
「バルログ!あの時の奴とは違う、もっと強力だ!」
ナオミが叫び、トウマとアキラも攻撃態勢に入った。バルログは巨大な拳を振り下ろし、地面を震わせながら襲いかかってきた。
「俺が引き付ける、二人は隙を突け!」
トウマが前に出て、バルログの攻撃を受け止めた。重い衝撃が体全体に伝わり、足元が揺らぐ。それでも、彼は歯を食いしばりながら耐えた。
「今だ!」
ナオミとアキラが同時に飛び出し、それぞれの武器でバルログに攻撃を仕掛けた。ナオミの素早い剣の動きがバルログの側面を切り裂き、アキラの魔法がその弱点を突いた。
「もう一押しだ!」
トウマが再び前に出て、竜剣を振りかざした。その一撃がバルログの胸に突き刺さり、石の体を砕いた。
「よし、次へ進もう。」
トウマたちは息を整えながら、更に奥へと進んでいった。彼らの前に立ちはだかる障害は次々と現れるが、その度に彼らは力を合わせて乗り越えていった。
瓦礫の山を越え、倒壊した建物の間を抜けると、ついに都市の中心にたどり着いた。そこには、巨大なネクロスが待ち構えていた。彼の姿は異様で、全身が黒い霧に包まれており、その中から無数の目がこちらを睨んでいた。
「これがネクロスか…。」
トウマは剣を構え、仲間たちも同様に準備を整えた。彼らの心には恐怖があったが、それ以上に強い決意があった。
「この都市を取り戻すために、俺たちは戦うんだ。」
トウマが叫び、三人は一斉にネクロスに向かって突進した。ネクロスの攻撃は強力で、一撃一撃が致命傷となる。しかし、トウマたちは互いに連携し、その攻撃を避けながら少しずつダメージを与えていった。
「奴の防御が固すぎる!どうすれば…。」
ナオミが焦りの声を上げた。その時、トウマは竜剣を握りしめ、決意を固めた。
「これしかない。竜剣の力を使うんだ。」
トウマは竜剣を構え、ネクロスに向かって突進した。剣がネクロスの体に触れると、その防御が無力化され、深い傷が刻まれた。
「やった…!これなら…!」
しかし、ネクロスも負けじと反撃し、その攻撃がトウマを襲った。強烈な衝撃が彼の体を貫き、地面に叩きつけられた。
「トウマ!」
ナオミとアキラが叫び、彼を助けに駆け寄った。しかし、トウマは再び立ち上がり、剣を握りしめたままネクロスに向かっていった。
「俺たちは、諦めない!」
トウマの叫びと共に、再び剣がネクロスの体を切り裂いた。その度に、ネクロスは苦しみの声を上げ、攻撃が鈍っていった。
「もう少しだ…!」
アキラが魔法の力を解放し、ナオミが素早い動きで攻撃を続けた。彼らは全ての力を振り絞り、最後の一撃を放つためにトウマに力を託した。
「行け、トウマ!」
ナオミとアキラが叫び、トウマは最後の力を振り絞って剣を振り下ろした。その一撃がネクロスの心臓を貫き、黒い霧が一気に消え去った。
「これで…終わった。」
トウマは息を切らしながら、その場に倒れ込んだ。ナオミとアキラも同様に地面に座り込み、戦いの終わりを実感した。
「勝ったんだ…本当に、勝ったんだ…。」
ナオミが涙を流しながら呟いた。アキラも同様に感極まった表情を浮かべ、トウマを見つめた。
「俺たちは、この都市を取り戻したんだ。」
トウマの言葉に、二人も強く頷いた。彼らはこの戦いで多くのものを失い、同時に多くのものを得た。そして今、彼らの前には新たな未来が広がっていた。
「これから、どうする?」
アキラが問いかけると、トウマは深く息をつきながら答えた。
「まずは、この都市を再建しよう。そして、再び平和な日々を取り戻すために、俺たちは戦い続けるんだ。」
トウマの決意に、ナオミとアキラも同意の表情を見せた。彼らはこの都市を守るために、そして未来を切り開くために、再び立ち上がった。
「俺たちの冒険は、まだ終わらない。」
ダンジョン・レクイエム ~ダンジョンで家族を失った青年は冒険者となり、今度こそ守るために仲間と冒険をする~ TMt @tmt_free
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