ダンジョン・レクイエム ～ダンジョンで家族を失った青年は冒険者となり、今度こそ守るために仲間と冒険をする～

第13話 アトラズとの戦い

トウマたちはアトラズの前に立ち、各々が武器を構えた。ナオミはその敏捷な動きで弓を引き絞り、アキラは槍をしっかりと握りしめ、トウマは剣を構えていた。

「さあ、試してみるがいい。お前たちの決意と力を。」

アトラズの声は冷静で、どこか楽しんでいるようでもあった。その巨大な翼を広げ、一瞬で戦闘態勢に入った。彼の目が鋭く光り、トウマたちを見据えている。

「行くぞ、みんな！」

トウマの合図と共に、ナオミがまず一発の矢を放った。矢はまっすぐにアトラズの目を狙って飛んでいく。しかし、アトラズは微動だにせず、その鱗に矢が当たっても弾かれてしまった。

「硬い…！」

ナオミが驚きの声を上げた。アキラはその隙を突いて槍を突き出した。槍の先端はアトラズの腹部を狙って突き進む。しかし、その鱗はまるで鉄の壁のように硬く、槍は全く歯が立たなかった。

「これは手強いぞ…！」

アキラもその事実に愕然としたが、すぐに次の動きを考えた。トウマは剣を構え直し、アトラズの動きを見極めようとした。

「お前たちの攻撃など、私には通じぬ。」

アトラズは冷ややかに笑い、その巨大な体を動かし始めた。翼を一振りするだけで、強烈な風が吹き荒れ、トウマたちを吹き飛ばそうとする。しかし、彼らは必死に踏ん張り、その場に留まった。

「一筋縄ではいかないってことか…！」

トウマは自身の心に言い聞かせ、再びアトラズに向かって突進した。彼の剣が閃光のように輝き、アトラズの鱗を狙って斬りかかる。しかし、その攻撃もまた弾かれた。

「くそ…！」

トウマが歯を食いしばっていると、アトラズの巨大な尾が襲いかかってきた。彼は間一髪でその尾を避けたが、その衝撃波が地面を揺るがせ、彼をバランスを崩させた。

「お前たちの決意は見せてもらった。しかし、それだけでは私を倒すことはできぬ。」

アトラズの言葉は冷酷だったが、その目にはどこか期待の色が見え隠れしていた。トウマはその視線に気付き、次の一手を考えた。

「ナオミ、アキラ、協力して戦うんだ！」

トウマの声に応じて、ナオミは再び矢を構え、アキラは槍を握り直した。彼らは互いにアイコンタクトを取り、一致団結して攻撃を仕掛けることを決意した。

ナオミが放つ矢は今度はアトラズの目を狙わず、その巨大な翼の根元を狙った。アキラもまた、槍を構え直し、アトラズの動きを封じるように攻撃を仕掛けた。トウマはその隙を狙い、再び剣を振りかざした。

「お前たちの連携は見事だ。しかし、それだけではまだ足りぬ！」

アトラズはその巨大な翼を振るい、ナオミの矢を弾き飛ばした。しかし、その瞬間、アキラの槍がアトラズの足元に突き刺さり、その動きを一瞬止めた。

「今だ、トウマ！」

アキラの叫びに応じて、トウマは全力で剣を振り下ろした。その一撃はアトラズの鱗を割り、その肉体に深く食い込んだ。

「ぐおおおお！」

アトラズが痛みに叫び声を上げ、その巨大な体が一瞬揺れ動いた。しかし、その叫びはすぐに冷静さを取り戻し、再びトウマたちに向かってきた。

「見事だ、冒険者たち。しかし、これで終わりではない。」

アトラズの目が再び鋭く光り、その口から炎のブレスが放たれた。トウマたちはその炎を避けるために必死に動き回ったが、熱風が彼らを包み込み、体力を奪っていった。

「もう少し…もう少しで…！」

トウマはその言葉を心の中で繰り返し、再び立ち上がった。彼の体は傷だらけで、息も荒くなっていた。しかし、彼の目にはまだ戦う意志が宿っていた。

「トウマ、もう無理だよ…！」

ナオミが涙ながらに叫んだが、トウマは首を振った。

「いや、まだ終わってない。俺たちはここまで来たんだ。絶対に諦めない！」

その言葉に、ナオミとアキラも再び立ち上がった。彼らは互いに励まし合い、最後の力を振り絞ってアトラズに向かっていった。

「見せてやる、お前たちの本当の力を！」

アトラズの声が響き渡り、その巨大な体が再び動き出した。彼の目には再び期待の色が見え隠れしていた。

トウマたちは最後の力を振り絞り、全力でアトラズに向かって攻撃を仕掛けた。ナオミの矢がアトラズの翼を貫き、アキラの槍がその足元を捉えた。トウマの剣は再びアトラズの肉体に深く食い込んだ。

「ぐおおおおおおお！」

アトラズの叫び声が広間に響き渡り、その巨大な体が崩れ落ちた。トウマたちはその場に立ち尽くし、勝利の実感を味わっていた。

「見事だ、冒険者たち。お前たちの力と決意、確かに見届けた。」

アトラズはその言葉を残し、その巨大な体が徐々に消えていった。その場には、一振りの美しい剣が残されていた。

「これは…」

トウマがその剣を手に取ると、その刃はまるで光を放つように輝いていた。

「お前たちにはその剣が必要だ。これからの試練に立ち向かうために。」

アトラズの声がどこからともなく響き渡り、その存在は完全に消え去った。トウマたちはその剣を手にし、新たな決意を胸に秘めた。

「この剣で、俺たちはもっと強くなる。」

トウマの言葉に、ナオミとアキラも力強く頷いた。