第7話 迫り来るダンジョン災害

都市が静寂に包まれる夜、突然の警報が鳴り響いた。トウマたちは宿で休んでいたが、その音に驚いて飛び起きた。


「何事だ…?」


トウマが窓を開けると、遠くの空が赤く染まっているのが見えた。その方向にはダンジョンがある。急いで装備を整え、外に出ると、街の広場には既に多くの冒険者たちが集まっていた。


「緊急事態だ!ダンジョンから膨大な数の魔物が出現した!」


アキラが緊迫した表情で冒険者たちに告げた。その言葉に、全員が一斉に動き出す。トウマたちもまた、武器を手に取り、戦闘態勢を整えた。


都市の城壁の上から、ダンジョンの方角を見渡すと、無数の魔物たちが都市に向かって進んでいるのが見えた。巨大なワイバーンの群れが空を飛び、その下には地上を埋め尽くす魔物たちがいた。


「なんて数だ…。」


トウマはその光景に息を呑んだ。ワイバーンだけではなく、グリフォン、ミノタウロス、ケルベロス、そして見たこともない巨大な魔物が混ざっている。


「全員、配置につけ!防衛線を構築するんだ!」


ケンジが指揮を取り、冒険者たちは城壁の上に陣取った。弓兵たちは矢をつがえ、魔法使いは詠唱を始めた。トウマたちもまた、自分たちの役割を確認し、準備を整えた。


「明日香、ワイバーンを狙え。城島、地上の魔物を引きつけるんだ。翔、由美、援護を頼む!」


トウマが指示を出し、全員がその通りに動いた。明日香はクロスボウを構え、次々とワイバーンを射抜いた。城島は盾を構え、地上の魔物たちの進行を食い止める。翔と由美はその間に攻撃を仕掛け、トウマもまた剣を振るった。


ワイバーンの群れが先陣を切って襲いかかってきた。その巨大な翼が風を巻き起こし、強烈な突風が都市を襲った。


「ここに来させるな!」


ケンジが叫び、冒険者たちは一斉に矢を放った。ワイバーンの何体かが矢に貫かれ、地面に墜落した。しかし、まだまだ数は多く、全員が必死で応戦する。


「トウマ、あそこに強力な魔物がいる!」


明日香が指差した先には、巨大なドラゴンが見えた。その鱗は硬く、炎のブレスを吐きながら進んでくる。


「くそ…あいつは厄介だ。みんな、あのドラゴンを狙え!」


トウマの指示で、全員がドラゴンに集中攻撃を仕掛けた。しかし、ドラゴンはその攻撃を物ともせず、さらに炎のブレスを吐きかけた。


「退避しろ!」


トウマの叫びに応じて、全員がその場から飛び退いた。炎のブレスが地面を焼き尽くし、爆風が周囲に吹き荒れた。


「これでは埒があかない…。もっと強力な攻撃が必要だ。」


翔が冷静に分析し、トウマもその意見に同意する。


「何か策はあるか?」


「リサが開発した新型の爆薬がある。それを使えば…。」


翔の言葉にトウマは頷いた。リサは組合の中でも特に優れた錬金術師であり、彼女の作る爆薬は非常に強力だ。


「よし、リサに連絡してくれ。」


翔が通信機を使い、リサに連絡を取った。彼女はすぐに応じ、新型の爆薬を持って駆けつけた。


「これがその爆薬だ。慎重に使ってくれ。」


リサが手渡した爆薬は、小さな容器に収められていたが、その中には膨大なエネルギーが詰まっているのが感じられた。


「ありがとう、リサ。これで奴を倒す。」


トウマは爆薬を手に取り、仲間たちと共に再び戦闘に戻った。彼らは慎重にドラゴンに近づき、爆薬を使うタイミングを見計らった。


「今だ、投げろ!」


トウマの合図で、リサの爆薬がドラゴンに向かって投げ込まれた。次の瞬間、爆発が起こり、ドラゴンが轟音と共に崩れ落ちた。


「やったか…?」


煙が晴れると、ドラゴンは完全に動かなくなっていた。全員が安堵の息をついたが、まだ戦いは終わっていなかった。


「気を抜くな!まだ魔物はたくさんいる!」


ケンジの叫びに、全員が再び警戒を強めた。次々と襲いかかってくる魔物たちに対して、彼らは必死に応戦し続けた。


ミノタウロスが城壁を突き破り、ケルベロスが猛スピードで突進してくる。冒険者たちはそれぞれの役割を果たしながら、都市を守るために戦い続けた。


「トウマ、あそこにもう一体強力な魔物がいる!」


翔が再び指差す先には、巨大なヒュドラが見えた。その複数の頭がそれぞれ炎、氷、雷のブレスを吐き出し、周囲を壊滅させている。


「なんて奴だ…。あれを倒さないと、この都市は持たない。」


トウマは決意を新たにし、仲間たちと共にヒュドラに立ち向かった。ヒュドラの攻撃を避けながら、一つ一つの頭を狙い撃つ。しかし、その再生能力は凄まじく、倒しても倒しても新たな頭が生えてくる。


「どうすれば…!」


明日香が叫び、全員が苦戦している様子を見て、トウマは考えた。


「リサ、再生を止める方法はないか?」


「ヒュドラの心臓を直接攻撃するしかない。その位置を探し出せ!」


リサの言葉に、トウマは全力でヒュドラの動きを観察した。心臓の位置を見極め、そこに攻撃を集中させるために、全員が一丸となって戦った。


「ここだ!」


トウマが見つけた心臓の位置に向かって、全員が一斉に攻撃を仕掛けた。翔の魔法、明日香の矢、城島の剣、そしてトウマの全力の一撃がヒュドラの心臓に命中した。


「やったか…?」


ヒュドラの動きが止まり、その巨大な体が崩れ落ちた。全員が息を切らしながら、戦いの終わりを確認した。


「全員、無事か?」


トウマが仲間たちに呼びかけると、皆が疲れ切った顔で頷いた。


「なんとか…。でも、まだ完全に終わったわけじゃない。」


翔が警戒を怠らないように言い、トウマもそれに同意した。ダンジョンからの魔物の襲撃は一時的に収まったが、まだ危険が完全に去ったわけではなかった。

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