第6話 オーガの猛威
次の目的地は、かつての首都だった場所だった。20年前、ダンジョンが突如として現れ、多くの都市が崩壊した。かつて栄華を極めた首都もその一つであり、今では廃墟となった街並みが広がっている。
トウマたちは廃墟の中を進みながら、その荒廃した景色に心を痛めた。かつての繁華街だった場所には、今では朽ち果てた建物が立ち並び、草木が生い茂っている。風に乗って流れる砂埃が、かつての栄光を知る者たちの胸に切ない思いを呼び起こした。
「ここが、かつての首都か…。」
トウマは感慨深げに呟き、周囲を見渡す。彼の足元には、かつての人々の生活の痕跡が散らばっていた。壊れた窓ガラス、倒れた街灯、そして風に揺れる草花が、20年の時の流れを物語っている。
「これがダンジョンの恐怖だ。どれほどの人々がここで命を落としたんだろう。」
城島が低く呟き、トウマも無言で頷いた。彼らの目の前には、巨大なダンジョンの入り口が口を開けていた。その暗闇の奥には、彼らが討伐すべきオーガが待ち構えている。
「準備はいいか、皆?」
トウマが仲間たちに問いかけると、全員が力強く頷いた。彼らは装備を整え、心を一つにしてダンジョンへと足を踏み入れた。
ダンジョンの中は、かつての首都の廃墟とはまた異なる雰囲気だった。暗闇の中に浮かび上がる古代の彫刻や、壁に刻まれた謎めいた文字が、何か不吉な予感を漂わせている。
「ここから先は、油断できない。」
翔が冷静にデータを確認しながら言う。トウマたちは慎重に進み、周囲の状況を見逃さないように警戒を強めた。
しばらく進むと、広間にたどり着いた。そこには、巨体のオーガが立ち塞がっていた。その姿はただのオーガとは一線を画していた。筋骨隆々とした体格に加え、鋭い目つきと、まるで武術の達人のような身のこなし。
「こいつが…。」
トウマは剣を構えながら、相手の動きを見逃さないように集中した。オーガは彼らを見下ろし、低い唸り声を上げた。
「いくぞ、皆!」
トウマの合図と共に、全員が一斉に動き出した。戦闘の開始だった。
「翔、データを頼む!」
トウマが叫び、翔は即座に端末を操作する。
「オーガの弱点は肩の関節部分だ。攻撃を集中させろ!」
翔の指示に従い、トウマは剣を握り直し、オーガの左肩に向けて突進した。しかし、オーガの反応は速く、その巨腕でトウマの一撃を防いだ。
「くそ…!」
トウマは後退しながら態勢を整える。その間に、明日香がクロスボウを構え、矢を放つ。矢はオーガの肩に命中するが、オーガは痛みに怯むことなく、素早い動きで明日香に迫った。
「明日香、下がれ!」
城島が盾を構えて前に出る。オーガの一撃を受け止めながら、彼もまた反撃の機会を窺っていた。
「トウマ、次のチャンスを狙うんだ!」
城島の言葉に、トウマは再び剣を構え直した。オーガの動きを見極め、隙を探る。その瞬間、オーガが再び動き出した。トウマはその動きを読み、左側に回り込む。
「うおおおお!」
トウマの一撃がオーガの肩に命中した。オーガは痛みにもがき、動きが鈍くなった。
「今だ、皆!」
トウマの叫びに応じて、全員が一斉に攻撃を仕掛ける。明日香の矢、城島の剣、そして由美の支援が、オーガを次々と追い詰めていく。
しかし、オーガもただでは終わらなかった。その巨体から繰り出される攻撃は凄まじく、トウマたちは何度も危険にさらされた。
「気をつけろ、奴はまだ終わっていない!」
翔の警告に、全員が再び警戒を強めた。オーガの動きは依然として鋭く、まるで武術の達人のような正確さで攻撃を繰り出してくる。
「もう一度、集中しよう。」
トウマが冷静に言い、全員が再び戦闘態勢を整えた。彼らはオーガの動きを観察しながら、次の攻撃のチャンスを待った。
しばらくの静寂の後、オーガが再び動き出した。その動きは速く、トウマたちに迫る。トウマはその動きを読み、左側に回り込んで一撃を放った。
「うおおおお!」
剣がオーガの肩に深く突き刺さり、オーガは痛みに叫び声を上げた。トウマはその隙を逃さず、さらに一撃を加えた。
「今だ、皆!」
トウマの合図に応じて、全員が一斉に攻撃を仕掛ける。明日香の矢がオーガの胸部に命中し、城島の剣がオーガの脚部を切り裂く。由美の支援が彼らの動きをサポートし、戦いの流れを一気に優位に持っていった。
「もう少しだ、頑張れ!」
トウマは再び剣を振り上げ、最後の一撃を放つ。その剣がオーガの胸部に深く突き刺さり、オーガは崩れ落ちた。
「やった…!」
全員が息をつき、戦闘の終わりを確認した。オーガは完全に動かなくなり、広間に静寂が戻った。
戦闘後、全員が疲れ切った体を休めるために集まった。
「よくやった、皆。」
城島が満足そうに微笑む。トウマも笑顔で応えた。
「皆さんのおかげです。」
「しかし、疲れたな…。しばらく休息が必要だ。」
明日香が深呼吸しながら言う。翔も同意するように頷いた。
「次の挑戦に備えるためにも、一度都市に帰ろう。」
由美が提案し、全員がその提案に賛成した。彼らはダンジョンを後にし、都市への帰路を辿り始めた。
都市に戻ると、彼らはその日の戦闘の成果を報告し、しばらくの休息を取ることにした。都市の空気は新鮮で、彼らの疲れた体と心を癒してくれた。
「ここでしばらく休もう。次の挑戦に備えて、体力を回復させるんだ。」
城島の指示で、全員がそれぞれの宿に向かう。トウマも一人、静かな部屋で休息を取った。
その夜、トウマはベッドに横たわりながら、今日の戦闘を振り返っていた。オーガとの激しい戦闘、そして仲間たちとの協力。それらすべてが彼の心に深く刻まれていた。
「これからも、頑張らなければならない。」
トウマはそう自分に言い聞かせ、目を閉じた。
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