相沢蘭子の場合・5
耳を塞いでいたかった。
目の前の全部から心を閉ざし、何も見なかったことにしたい。
しきりに真横から、『動物』の鳴き声が聞こえてくる。それが鼓膜に届く度に、吐き気を催しそうになってくる。
「馬鹿野郎」と呟くしかなかった。
あんなに忠告したのに、あっさりとまた『脱落』しやがった。
こんなのはもう、慣れたはずだ。今までにもう、何度も見てきた。
だけどもう、うんざりだ。
「これから、また探しに行くんだろ」
傍らにいる『奴』に対し、千晶は声を絞り出す。
こいつらがこの二年以上、ずっと繰り返してきたこと。自分は無力なままそれを見て、その度に同じ結果が出続けた。
だが、もういい加減にして欲しい。
「また、『補充』に行くんだよな。それで『二十人目』を探しに行くんだろ?」
相沢みたいな奴はもう真っ平だ。二度と、こんな奴は連れてこないでほしい。
今度こそは、失敗しない仲間が欲しい。
「『二十人目』が必要になるなら、俺の言う通りの奴を連れてこい」
真っすぐに『奴』の姿を見据え、千晶は声を発する。
「今から言う条件を満たせる奴。次に連れてくるのは、そういう奴だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます