第11話 猫耳の少女

魔石が3個になった。

炎石と回復石と水石。

僕は朝から上機嫌で、すっかり浮かれていた。

そういう時って大概たいがい何かをやらかしてしまうものである。


「あ、お金とギルドカード落とした・・」


冒険者ギルドに来て、いざカードを出そうとしたら無いのに気が付いた。

浮かれすぎていて意識が離れてしまっていたのだろう。

普段ならそんな事しないのに大失敗をした。


「「ええええ?」」「マジありえないんですけど?宿屋に戻って部屋中を探した方が良いわよ」


ウェンディが驚いて大声を上げる。

周りの冒険者達からは注目を集めてしまった。

僕たちは慌てて、宿へ戻った。


「無いわね・・。道で落としたのかしら・・」


再度冒険者ギルドへ行き、ギルドカードは念のため使用停止にしてもらった。

「紛失最短記録ですよ」とギルド職員の人に呆れられてしまった。


「お金は諦めるしかないわね。魔法の鞄マジックバックに入れておけば良かったのに」


本当そうだな。

今から後悔しても遅いけど。




再び宿に戻ると、宿屋の入口で立っている背の低い少女がいた。

頭には茶色い猫の耳が付いていて、尻尾もあるので獣人だろうか。

猫耳の獣人さんって可愛いな。


「ここにいるはず。男の子いない?」

「男の子って言われてもねぇ・・」


宿の女将さんと話しているみたいだった。


「どうかしたのかな?」

腰をかがめて猫耳の少女に話しかけると、僕に巾着を差し出してきた。


「これ、道に落ちてた。困っていると思って持ってきた」

「え?あ、ありがとう。凄く困っていたんだ」

(あれ?どうして僕のだって分かったんだろ?)

「わたし嗅覚鋭いから、持ち主わかる」


流石獣人さんだ。

猫耳の少女は大きな目でしばらく僕を見ている。

顔に何か付いているのだろうか?


「折角だから届けてくれたお礼をさせてくれないかな」

「お礼?」

「少しだけど、お金とか・・」

「じゃあ、家に来て。町から少し遠いけど」



猫耳の少女に連れられ、僕とウェンディはついていく。

プノンの町を出て、しばらく歩くと森の近くに家はあった。


「ここわたしの家。入って」


僕とウェンディは促され、家に入る。

家に入ると顔色が悪い猫耳の女性が台所に立っていた。

家事をしていたようだ。


「ミヤおかえり。あらお客様?」

「母が病気なの。トワ治して」


僕は一言も回復石のことは話していない。


「僕、回復魔法持ってないけど・・」

「わたしかんで分かった。トワなら治せるって思った」

「病気は治せるかわからないよ?やったことないし」

「多分大丈夫。わたしのかんは外れた事ない」


どうやら、魔石の事を知っていた訳ではないようだ。


「ちょっと、お母さんのステータス覗くけどいいかな?」

「よく分かんないけど治るならいい」


ミヤが即答した。


『ステータス』


僕はミヤのお母さんのステータスを見た。


「何か見えているの?」

やっぱりウェンディには見えないらしい。


「病気って言っていたから何かわかると思って・・」


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フレイマ 45歳 猫族

生命力 40/450

魔力  400/400

攻撃力 100

守備力 150

素早さ 200

スキル

精霊の加護

瘴気しょうきによる弱体化


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瘴気しょうきってなんだ?

もしかして病気では無いのかもしれない。

これなら回復石でも大丈夫なのかも。


「じゃあ、やってみるね。ミヤのお母さん、今から魔法かけますけど驚かないで下さいね」


僕は回復石をマジックバックから取り出した。

手に石を乗せて詠唱する


『光よ・・』


ミヤの母親、フレイマの体が淡い光に包まれた。


「あら、体が軽いわ。貴方、一体何をしたの?」


『ステータス』


----------------------------------------------------------


フレイマ 45歳 猫族

生命力 40/450

魔力  400/400

攻撃力 100

守備力 150

素早さ 200

スキル

精霊の加護


-----------------------------------------------------------


「もう大丈夫みたいです。治りました」


変な項目は消えたみたいだ。

生命力もそのうち戻ってくるだろう。

フレイマさんも少し顔に赤みが差しているようだった。

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