第14話 少女ティナ

ガヤガヤ・・

いつもながら冒険者ギルドは騒がしい。

僕とウェンディは、冒険者ギルドで向かい合わせに座って果実水を飲んでいた。


「トワ聞いたか?」

「うわっ?」


ガイが、僕の後ろから腕を伸ばし肩を組んできた。

慌てて、コップをテーブルに置く。


「勇者パーティがこの町に来るらしいぜ」

「へぇ~勇者とかっているんだ」


でも勇者がいるって事はもしかして・・。


「魔王が復活したっていう話だぜ」


うわぁ・・そうなるよね。

物騒で出来れば関わりたくない。

やっぱり、魔王が侵略してくるとかそういうものなんだろうか。


「勇者様って本当にいるのね。ちょっと見てみたいかも」


ウェンディが目を輝かせている。

それを見ていると胸がもやもやする。

何だか嫌だな。

もし勇者が現れても、絶対にウェンディに近づいてほしくない。



「だーかーら嫌だって言ってますわよね」

「何だとお?いつもいつも・・我儘ならん!」

男女が喧嘩をしながらドカドカとギルドに入って来た。


男は黒髪で身長が170センチほどの20代前半くらいの青年。

僕は驚いた。

日本人に見えたからだ。


もう一人は白いフードを被った、銀髪の女。

顔は良く見えないが、身長が150センチくらいで可愛らしい声だ。

大きな立派な杖を持っている。


痴話喧嘩かな?

僕は、男性の方が気になりつつもテーブルに向き直った。


女が僕の方を指さして

「決めましたわ!わたくしこの人のパーティに入ります」


いつの間にか、間近に来ていた女がとんでもない事を言った。


「「はい?」」

「勝手にしろ!面倒見切れん!」


男性は怒って冒険者ギルドを出て行く。

え?

いきなりどうなってるの?


女は白いフードを外した。

長い銀髪が現れ、透き通った緑の瞳が見える。

同じくらいの年齢の美しい少女。

少女は大きい瞳で僕の顔を覗き込む。

僕は息をのんだ。


「行き成りですけど、わたくし困っておりますの。どうかあなたのパーティに入れて頂けないでしょうか?」


目の前の美少女が困っている。

少女に見惚れていた僕は冷静な判断が出来ずにいた。


「はい。僕の所でよければ」


「トワは可憐な少女が好みなのかしら?」


ウェンディの丁寧だが冷たい声で目が覚める。

あ、あれ?僕今何て言った?

確かパーティに入れて下さいって言われて即決しちゃったような・・。

彼女の顔は笑っているんだけど、目が怒ってるように見えた。

ウェンディが怖いよ・・。


「貴方のお名前を聞いてもよろしいですか?」

少女は全く動じず笑顔で話しかけてくる。


「僕はトワ・ウィンザーです。まだ冒険者登録したばかりですが」

「トワ様ですか。わたくしはレ・・ティナと申しますわ。よろしくお願いしますね」


丁寧に挨拶をするティナ。

上品な感じの少女だな。

そういえば、ウェンディの許可を取らずに勝手にパーティに入る事を許可しちゃったな。

だから怒っているのかもしれない。

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