第8話 彼女の心情1

「痛たた・・」


目が覚めた。

窓から差し込む朝の光が眩しい。

僕は薄っすら目を開けた。


腕や背中が痛い気がする。

変な姿勢で寝たからだろうか。

昨晩はウェンディに手を握られて、自分の部屋に帰れずにそのまま床で寝てしまったんだっけ。


「んん・・・あれ?何で私の部屋にトワがいるの?」


「昨日、お店でウェンディが酔っぱらって寝ちゃって部屋まで連れて来たんだけど・・手が繋がれていて自分の部屋に帰れなくてここで寝たんだけど」


「えええ?ご、ごめんなさい」


寝ている間に手が離れたようで、今は繋がれていない。

顔を赤くして彼女は謝っていた。

年上だけど何だか可愛い。


「トワ何で笑ってるの?」


「いや笑ってごめんね。ウェンディって、しっかりしてそうでたまに抜けてて・・可愛いなって・・」

僕は口元に手を当てていた。


「か、可愛い?」

照れて、彼女の白い頬が赤くなっていた。




まあ、色々あったけど宿の食堂でのんびり朝食を食べていた。

ウェンディがチラチラ僕の顔を見ている。

どうしたんだろ?


「ウェンディ?」

「・・・・」


何かを言いたげにして、無言で顔を逸らしている。

今朝から幾度となく同じ動作を繰り返していた。


「あ、あのっ。僕気にしてないから。大丈夫だから」


訳が分からないけど、今朝の事に関係しているんだろうと予想して話す。


「うん」


顔を赤くして俯くウェンディ。

今日の彼女は、明らかに様子がおかしいのでギルドの仕事は休んだ方がいいかもしれない。





*****ウェンディ視点




最初出会ったのはプノンの町中で、ナンパしてくる人から助けてもらった。


「ごめんね。待たせたかな?」


そう言って、困っていた私を助けてくれた。

年下のトワのポジションは私の弟だ。

うん。

弟だったはずなのだけど。

トワが泣いちゃったり、ギルドで冒険者相手に喧嘩になりそうになったり。

まぁ、あれはちょっと私が悪かったかも・・。


一緒に山に登ったら意外と体力が無くて、回復ポーションを躊躇ちゅうちょなく渡す自分に驚いていた。

値段が高すぎて自分で使う時さえもためらってしまうのに。

何かあった時の為にと買っておいた物だけど。


そして昨日、店で眠ってしまったという。

宿まで背負って部屋に運んだはいいが、私がトワを離さなかったらしい。

真実を聞いて、身もだえするほど恥ずかしくなった。


私、トワに「可愛い」って言われてからちょっとおかしい。

笑顔でトワに言われたとたん、顔が熱くなった。

頭がぼーっとして今日の私は変だ。


いつの間にか、私トワの事好きになっちゃったの?

5歳も年下なのに。

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