僕の性別は「僕」である

柊 奏汰

僕の性別は「僕」である

 あなたは「男性」ですか、「女性」ですか。

 きっと即答できる人の方が多いのであろう。だが、この問いを投げかけられた時に、ぐっと言葉に詰まってしまうのが僕だ。あえて表現するならば、身体の性別は「女」であれど、心の性別はどちらでもない、「僕」というのが僕の認識だ。


 子供の頃から男の子達と外で遊んでいるような活発なタイプだった。スポーツ少年団に入ってからはボブでも鬱陶しくて、ベリーショートの長さにまで切った。着ている服も靴も男の子用だった。女の子のフリフリした可愛い服より、スポーツメーカーのカッコいい服の方がずっと好みだった。

 僕はスカートを履かない。男子並みの感想かもしれないが、股がスースーするのが落ち着かない。ただ1度だけ流行りの女の子の服装をしてみようかと思い立って、ハイウエストの短パンに挑戦してみたことがある。

 結果は撃沈だった。その服を着た自分の姿を鏡で見ただけで、さっと血の気が引くような拒否感が心の中を支配してしまった。その日から、僕はレディースコーナーで服を買うのを辞めた。メンズの服の方がかっこいいしデザインが好きだったし。


 日本は性別が2つにしか分かれない。でも、その枠にはまらない人間がいるということは、僕自身がはっきりと自覚している。社会に出れば出るほど、男女で分ける風潮はどこにだってあって、書類の性別欄を埋めようとしたときだったり、出掛けた時や職場で「女性だから」という理由でなにかしらの行動を制限される出来事が起こったりすると、少しずつ心の端に積もっていくもやもやがあった。今の日本という社会は、そんな風潮で満ちているように思う。


 僕が結婚するとき。僕の相方は根っからの男性だが、少しだけ僕のそんな性別に対する考えを話してみたことがある。彼は僕の性自認を認めてくれ、「男女に二分する社会が時代遅れ。君が選んだ服を着れば、それは君の服になる」と言ってくれる理解のある人で救われた。


 誰に何と言われようとも、僕は僕なのだ。ふわふわした服とかピンクとかフリルが苦手で、短髪でイヤーカフの装飾品が好きで、好きな色はカーキ。これからもきっと好きな髪形をして、好きなものを着て、好きなことをして生きていくんだと思う。

 きっと言葉で言わないだけで、自分の性別について違和感を持っている人はたくさんいる。僕もそのうちの1人として、カッコ良く生きたい。

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