悪役貴族の取り巻きモブ、破滅を回避するために敵対しているヒロインにゴマを擦りまくったら引くくらい依存されるようになる

竜頭蛇

第1話 悪役貴族の取り巻きモブ


 ルーク・フォートマン。

 ヒロインを苛む悪役貴族の取り巻きで、元ヒロインの従者筋の家の人間だというのに忠義のかけらもなく悪役貴族にゴマを擦りまくり、ヒロインに嫌がらせを嬉々として行なっているために、MMORPG『アイドルバスター』の中で一番ヘイトを勝ったキャラクターだ。

 検索サジェストは汚れきり、『ルーク ◯ね』、『ルーク 戦犯』、『ルーク 自害しろ』とまで表示される始末。

 まあ酷い目に遭うヒロインの様子を見ながら飯を頬張り、「うまぁああああい!! 最高のおかずだ!!」と言っていたし、サジェストについては同情の余地はないかもしれない。


 というよりも問題はルークのサジェストよりもそんなルークに俺が転生しており、ヒロインを裏切る発端になるイベント──フォートマン領壊滅が現在進行系で発生していることだ。

 燃える領都。

 住居を破壊し雄叫びを上げる魔王軍のモンスターたちと魔剣隊こと巨大人型ロボット軍団。

 世はまさに世紀末といった様相を呈している。


『騙したのですか? レーネ様。自らが難を逃れるため我が領地を犠牲に……!』


 二体の〈魔剣〉──腕が刃になっている黒い巨大人型ロボットを父であるバトラーがフォートマン家伝来の〈剣〉──細剣を持った灰色の巨大人型ロボット『ピアーズ』で嘆きながら相手取る。

 二体一。

 バトラーは弱くはないが、後方にいる家族を守りながら二体を相手にするのは無理があるし、主人であるレーネ──ヒロインの母に裏切られたと思い込んでいることで精神もガタガタだ。

 この状況だと順当に押し負けて、領地壊滅、家没落、悪役貴族にゴマをすると行き、最終的には破滅とトントン拍子にシナリオの破滅ルートを辿りかねない。

 こんな直前に前世の記憶が蘇らなければ魔王軍の目的である剣──スレイヴをヒロインの家から受け取ることを回避して、万事安全に破滅ルートからバイバイできたが、もはや腹を括るほかない。

 ここにある唯一の剣であるスレイヴに乗り、家族と領地を守り、ヒロインにゴマを擦る。

 これ以外に破滅をから逃れる術はない。


「母上、私も抜刀します」


「ルーク!」


 母のミールに一言言うと引き留める声を尻目に階下にある武器庫に向かい、長剣を背負った漆黒の巨大人型ロボット『スレイヴ』に乗り込む。

 ここから鹵獲されたあとは魔王軍に魔改造されて主人公のライバル機になるほどの〈剣〉だ。

 魔改造前でもそれなりに使えることに期待したい。


『認証。ロック解除』


 起動するとそのまま外に出て、二体の〈魔剣〉と対峙する。


 ────


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