第6話 『座敷童』
私が子どもの頃に見えていた、座敷童の話です。
正確には、座敷童が聞かせてくれた話ですね。
うちに居た座敷童。
自分やクラスメートと同じような洋服を着ていました。
小さい頃の私は、親戚や近所の子だと思っていたんです。
いつも居るわけではなく、時々ソファーや椅子でくつろいでいたり、出しっぱなしの玩具で遊んでいたり。
私の玩具を勝手に使われていても、別に嫌な気持ちにはならなかったんです。
一緒に遊んだり、おしゃべりもしていました。
いま思えば、不思議な存在というか。
知らない子が家に居たら怖いと思いそうなものですが、家の中に居ても違和感がなかったんですよね。
いつだったか、小学校で子ども向けの怪談漫画が流行った時期があって。座敷童の話も聞く事がありました。
それで、うちに居た女の子とも、そんな話をしたんです。
もう、その頃には、親戚の子とは違うのかな? と、思い始めていましたけど。
建売分譲住宅だったので、こんな新しい家に座敷童は居ないよね~なんて言ってみたら、自分は座敷童だと言うんです。
いろんな子が座敷童って呼ばれてるらしいけど、あたしは、ずっと昔に死んだ子どもなの。
初めは、あたしが死んじゃって悲しんでるお母さんに、大丈夫だよ、私はここに居るよっていう思いで見守ってた。
お母さんがお婆ちゃんになって、妹がだんだん大人になって、恋人が出来て結婚して子どもを産むのもずーっと見守ってきた。
ずっと見ているから、生まれてきた妹の子どもも可愛いの。
愛着があって、子どももその子どもも、ずーっと成長を見守ってきた。可愛い。
それで、いつの間にか座敷童になってたの。
そんな風に、聞かせてくれました。
元々、その座敷童は『座敷童』という言葉を知らなかったそうです。
見守っている家族が、座敷童かもねー、なんて話をするから。じゃあ自分は座敷童っていう存在になってるんだろうな、と思うようになったと。
自分と同じような座敷童はたくさんいて、見守ってきた家族が途絶えてしまったり、見失ってしまった子もたくさんいる。
野良という表現もおかしいけど。
目についた家族や気に入った家に行って、その家族や家を見守る存在になっているのだと、聞かせてくれました。
今はもう、見えません。
若いころ、あまり良くない事に手を出していた時期があって。
そのせいで苦労をかけていた妹に、座敷童はついて行ったらしいです。
妹家族とは疎遠になっているので、今でも座敷童が居れば見えるのかどうかも、わからないんですよね。
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