第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト 二十首連作部門

遠野文弓

デッドストック

幸せを噛み締めている落ちぶれた未来と今がちらと重なる


文字だけのタイムラインで告げられた読点のない「おやすみなさい」


Exifイグジフとランドマークを削除した近況ばかりつぶやいている


私たちまだ新参の晒し台 三割り増しでかわいい感じ


破滅した人の噂を聞くたびに持ち逃げされるタイプの不安


インカメを使えなかった人生の突き当たりを背に遺影を撮る


我が母もいずれ先祖に連なるし神がバイクを禁じなさって


「止まります」並ぶ先へと進むバス 降りてく人の踵を見てる


シェード越しの光だけが柔らかく網目に沿って散り散りになり


バラバラに壊してみたら魂のデッドストックが滲んできた


ドアノブに巻きついたまま伸びている埃まみれの青いマフラー


線香とドライアイスが添えられる前に何かが逃げててほしい


曇天に張り付いているなけなしの星をきれいと言う人だった


焼き菓子を一人分だけ残してて君のひとくち分ずつ捨てる


AIと取り替えの効く自我があるならば私はバレずに消せる


想像は干からびているずぶ濡れの猫の背中もさらりとしてる


マイマイがまだら模様を見せつけて人を差し置き別荘へ這う


手のひらでからだをねじるハムスターの姿が不気味なら飼えそう


クリスマス前までそこで生きていたポインセチアの鉢の行方は


金貨さえ積めば私は蘇りダイヤモンドを探しに潜る

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第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト 二十首連作部門 遠野文弓 @fumiyumi-enno

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