あの日助けた幼い兄妹が、怒濤の勢いで恩返ししてきます
新高/ビーズログ文庫
プロローグ
本日は晴天なり、で絶好のお見合い
少しだけ年下だけど、という話を聞いてはいたが「少しだけ」どころではなかった。
まさかの未成年。
うっそでしょ、と飛び出そうになった言葉をどうにか
が、その後もたらされた
「――貴族こわっ!!」
レナ・シュナイダーは国内でも人気の若きドレス職人である。
彼女の手がけるデザインはとても人気で、
そんな彼女を特に
そんな彼女から「
えええ、とどうにか断ろうとするも「とてもいい人よ」「きっと気に入るわ」「少しだけ年下だけど、年下の男を自分好みに育てるのも楽しいわよ」などと
これまでも何度となく
夫人との付き合いは長く、親しくさせてもらってもいるので、これ以上断り続けるのは無理かとレナは
せめて夫人の
そんな
や夜会などには、ドレスの宣伝も
新たなパトロンを
だからこそ、今日レナが着ているドレスは
白いレースをあしらった、緑色のドレス。
全体的にあまり派手にならず、かといって地味だと思われないデザインを心がけた。
デコルテを美しく見せるために
そんな打算を持って臨んだのが神の不興でも買ったのか、レナは茶会の席に着く前に不様にすっ転んでしまった。
「お
転んだレナを助け起こしただけでなく、わざわざ
黒く
筋の通った鼻、その下にある
レナの
おまけにどうであろう、彼の美しさは顔かたちだけでなく、声にまでも
そう、まだ声変わり前の、どう見たって「少しだけ年下」の域を
「ええと……アインツホルン
それに見合いとして来ているのだから、ギリギリとはいえ成人している……と思いたい。
この国では十六歳から一応の成人
だとしても現在
「エリアスと呼んでください」
呼べるか、と
レナは
そう腹を
いや、これにはエリアスの功も大きかった。
彼はとても話を聞くのが上手いのだ。レナの話を良く聞き、小さな話題も拾っては広げてくれる。頭の回転の速さがそれだけで分かり、レナはだんだんとこの場を楽しみ始めていた。
それでも気になる点は残る。時々エリアスが
自分と同じで
なんにせよ、これほどまでに
「エリアス様、今日はありがとうございました。お話しできてとても楽しかったです」
「ぼ……私もです」
また「僕」と言いそうになったのだろう、
「あの……エリアス様、一つお
「なんでしょう?」
「大変失礼ながら……今、おいくつで……?」
「じゅうご……、ななです! 十七、に、なったばかりの
じゅうご! 十五って言った!!
まさかの十五歳! 未成年ーっっっ!!
ぎょっと目を見張った後、
「貴女の貴重な時間を、僕なんかに使わせてしまって……」
「それはこちらの
シュン、と
王族やそれに連なる家系であるならば、
アインツホルン家が長く続く
「謝罪をしなければいけないのは私の方です。アネッテ伯爵夫人がきっとご無理を言ったのでしょう?」
え、とエリアスが顔を上げる。
「夫人は私がずっと独り身でいるのを心配してくださっているんです。これまでも何度かそういうお話をいただいてはいたんですが……今回は私も断れなくて」
「いえ、僕は」
「あ、でも夫人は基本的にいい方ですよ? ってああ
「はい……それは、僕もそう思います」
それでもやはり貴族としての
「エリアス様は今日のような席は初めてですか? ……私は初めてだったんですけど」
「僕も初めてでした。だから、という言い訳にしかなりませんが、上手に
「おっとそれなら私の方がひどいですからね! 初っぱなで転びましたから」
それは、とエリアスは口を開きかけたが、レナは茶目っ気たっぷりの
「それなのに笑うでもなく、
そう力説すれば、エリアスは少しばかりほっとしたような表情を浮かべた。
「こんな私にもエリアス様は
次に、ということは今回は残念ながらという話だ。エリアスもそれを理解したのか少しばかり
「そうですね……僕ではあまりにもふさわしくない」
「え、いや
まさかそう返されるとは思ってもみなかった。レナは
「貴女はとても素敵な方です。だから、やはり僕みたいな人間とはこれ以上関わらない方がいいと思います」
気を
悲しみに
「あの、エリアス様、違いますからね? 相応しくないのは私です。身分はもちろん、年が上すぎるというのもなんですが、それ以上に……あの、私の話はご存じですか?」
思い出すだに
「すみません……この年まで、ほとんど社交の場に出たことがないので……」
「いえいえいえ! むしろお耳を
はは、とどうしたって
レナは三回ほど深呼吸を
「実は私、
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