第14話 静寂の中の記憶

夜の静かなオフィスで、香織はデスクに広げた資料をじっと見つめていた。山田の死を巡る謎が、彼女の心に重くのしかかっていた。彼の遺した証拠とメモ、それらを解読することで真実に近づけると信じていた。


香織の心の声: 「山田さん、あなたが命を懸けて残した証拠を無駄にはしない。この密室の謎を解き明かしてみせる。」


涼介もまた、香織の隣で資料を読み返していた。二人は山田の部屋の構造と、彼が残した手がかりについて考察を続けていた。


涼介: 「香織、この密室トリックの詳細を再度検証しよう。何か見落としているかもしれない。」


香織: 「そうね。山田さんが命を懸けて残したものを見逃すわけにはいかない。」


香織と涼介は再び山田の部屋を訪れ、隠された仕掛けを探し出すために細部まで調べ始めた。部屋の隅々まで調べる中で、涼介が壁の一部に不自然な反射を見つけた。


涼介: 「香織、ここを見て。何か隠れているようだ。」


香織は涼介の指差す方向を見つめ、小さなレンズが埋め込まれているのを確認した。


香織: 「隠しカメラね。これがあれば、山田さんが殺された瞬間が記録されているかもしれない。」


オフィスに戻った二人は、隠しカメラのデータを解析し始めた。涼介が再生ボタンを押すと、映像が流れ始めた。そこには、山田が部屋に入る様子と、その後の動きが記録されていた。


涼介: 「この映像を見て、山田さんが部屋に入った後、誰も出入りしていないように見える。しかし、何か不自然な点がある。」


香織: 「そうね。ドアや窓が閉じられた後に何かが動いている。これは何か仕掛けがある証拠よ。」

香織はこれまでの出来事を振り返り、山田の死がどのようにして起こったのかを再考した。


香織の心の声: 「黒川の逮捕から始まり、信用金庫内部の不正が明らかになった。でも、山田さんの死だけがまだ解決していない。彼の命を無駄にしないために、真実を突き止めるんだ。」


香織と涼介は山田の遺したメモや証拠品を再度精査し、密室トリックの謎を解明するための手がかりを探した。


涼介: 「山田さんの部屋は完全に密室だった。何か見落としているのかもしれない。」


香織: 「そうね、誰がどうやって密室を作り上げたのか、その手口を明らかにしなければ。」


映像を繰り返し確認する中で、二人はついに決定的な手がかりを見つけた。山田が部屋に仕掛けを施していたことが明らかになった。


香織: 「山田さんは部屋のドアを閉じた後、ドアに仕掛けを施していた。この仕掛けは、外から見てもドアが開閉できないように見せかけるものだったの。」


涼介: 「仕掛けの内容は、ドアの内側に取り付けられたワイヤーとプーリーシステムだ。山田さんがドアを閉めると、このシステムが作動し、ドアを完全に固定する。」


香織: 「さらに、部屋の窓には特殊なロック機構が取り付けられていた。このロックは、内部から一度セットされると、外部からは解除できない仕組みになっていた。」


涼介: 「つまり、山田さんは自分自身を密室に閉じ込めたのではなく、誰かがこの仕掛けを利用して山田さんを殺したんだ。そして、彼の死が単なる自殺ではなく、密室トリックの一部であることを示すために、手がかりを残した。」


香織の心の声: 「山田さん、あなたの死の真相を必ず解明してみせる。そして、あなたの見つけた真実に辿り着いてみせる。」

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