第7話 新たな手がかり

翌朝、香織と涼介は、警察署で提出した証拠について坂井刑事からの連絡を待っていた。昨夜の緊張感はまだ二人の心に残っていたが、朝食をとるためにカフェ「エトワール」を訪れた。カフェには、いつもの落ち着いた音楽が流れ、香織と涼介は窓際の席に座った。


香織「涼介、警察からの連絡が来る前に、私たちも動けることをしておきましょう。健一さんに取引先のデータをもっと掘り下げてもらうように頼みましょう。」


涼介「そうだな。それが一番だ。」


カフェの店員、佐々木優香が二人のテーブルにやってきた。


優香「おはようございます、香織さん、涼介さん。今日の朝食は何になさいますか?」


香織「おはよう、優香ちゃん。私はモーニングセットとコーヒーをお願い。」


涼介 「俺も同じものを頼むよ。」


優香は笑顔でオーダーを受け、キッチンへと向かった。香織と涼介はしばしの間、静かに過ごし、カフェの落ち着いた雰囲気に癒されていた。


香織「ここで少しリラックスできるといいわね。でも、健一さんに連絡して、次の手がかりを確認しないと。」


涼介「ああ、今のうちにやっておこう。」


二人は健一に連絡を取り、取引先に関するデータのさらなる解析を依頼した。しばらくして、優香が朝食を運んできた。


優香「お待たせしました。モーニングセットとコーヒーです。何かお困りのことがあったら、いつでも言ってくださいね。」


香織 「ありがとう、優香ちゃん。助かるわ。」


朝食を楽しみながら、二人は今後の計画について話し合った。数時間後、健一からの連絡が入った。


健一「香織さん、涼介さん、データの解析が進みました。黒川の主要な取引先の一つが浮かび上がりました。ここです。」


健一が示したのは、門司港にある小さな物流会社だった。この会社が黒川の不正取引に深く関わっている可能性が高いという。


香織 「この会社ね。早速、行ってみましょう。」


香織と涼介はその物流会社に向かった。門司港の一角にひっそりと佇むその会社は、一見すると普通の企業に見えたが、中には何かが隠されている予感がした。


受付で、香織は会社の代表者と話すことを申し出た。


香織「すみません、この会社の代表者の方にお話ししたいのですが。」


受付の女性は少し警戒しながらも、香織たちを応接室に通した。しばらくして、会社の代表者である中年の男性、川上徹が現れた。


川上 「お待たせしました。川上と申します。どういったご用件でしょうか?」


香織「実は、こちらの会社が関与している取引についてお伺いしたいことがありまして。」


川上の表情が一瞬硬くなった。


川上「取引ですか?具体的にどのようなことをお尋ねですか?」


涼介「黒川浩二という人物をご存知でしょうか?彼がこちらの会社と取引をしているという情報を得ています。」


川上は一瞬の動揺を見せたが、すぐに冷静さを取り戻した。


川上 「黒川浩二…確かに名前は聞いたことがありますが、具体的な取引は存じ上げません。」


香織「そうですか。しかし、私たちには具体的な証拠があります。正直にお話しいただければ、今後の対応が変わってくるかもしれません。」


川上はしばらく考え込んだ後、深いため息をついた。


川上「わかりました。実は、黒川からの取引依頼が最近増えてきていました。私たちはただの物流会社ですので、彼の要求には応じざるを得なかったのです。」


涼介「具体的にはどのような取引内容ですか?」


川上「彼は、特定の商品を秘密裏に運ぶように要求してきました。内容については詳しくは知りませんが、何か違法なことに関わっている可能性は感じていました。」


香織と涼介は川上からの情報を元に、さらに黒川の不正取引の全貌に迫るための手がかりを得た。川上は協力を約束し、取引に関する詳細な書類を提供することを申し出た。


香織「川上さん、ありがとうございます。この情報は非常に重要です。」


涼介「私たちと協力して、黒川の不正を暴きましょう。」


川上の協力を得た香織と涼介は、新たな証拠を手に入れ、次のステップに進む準備を整えた。黒川の不正の全貌が徐々に明らかになる中で、二人はさらなる真実を追い求めて動き出した。

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