第5話 浮かび上がる真相
香織と涼介は、高橋健一の協力を得て黒川浩二の行動を追っていた。高橋は黒川とその取引相手のデジタル痕跡をさらに掘り下げて解析し、その結果を香織たちに報告するためにオフィスに招いた。
「解析の結果、黒川とその取引相手の間で交わされたメッセージが見つかりました」と高橋は言った。「これによると、次の取引場所が特定できました。この場所と時間です」
高橋が示したのは、門司港の古びた倉庫だった。この情報を受けて、香織と涼介は黒川の計画が進行中であることを確認し、次の取引現場を監視する準備を進めた。
「この倉庫なら、人目に付きにくいわね。完璧な隠れ場所だわ」と香織がつぶやいた。
「確かに。でも、油断は禁物だ。しっかりと準備して臨もう」と涼介が答えた。
当日、夕方の門司港は静かだった。古びた倉庫は港の一角にひっそりと佇み、かつての賑わいはすでになく、薄暗い灯りがところどころに点在しているだけだった。
「ここが例の倉庫か。人の気配はないな」と涼介が言った。
「そうね。でも、油断は禁物よ。しっかり周りを確認しましょう」と香織が応じた。
二人は周囲を見回し、安全を確認した上で倉庫に近づいた。倉庫の隙間から中の様子を窺うと、黒川と取引相手の姿が見えた。二人は真剣な表情で書類を交わし、何やら話し合っている。
「ここで決定的な証拠を掴まないと。山田さんのためにも」と香織は心の中で誓った。
「香織、音を立てないように近づこう。彼らの会話を聞ける位置に移動するんだ」と涼介が指示した。
二人は慎重に足を進め、黒川と取引相手の会話が聞こえる距離まで近づいた。
「計画通りに進めば、次の取引で大きな利益を得られる。これが最後のチャンスだ」と黒川が言った。
「確かに。しかし、警戒を怠るな。最近、山田の部下たちが動いているという情報が入っている。何としても彼らの目を欺かないと」と取引相手が答えた。
「やはり黒川が関与している。不正の全貌を明らかにするためには、ここでの証拠が必要だ」と香織は心の中で決意を固めた。
その時、香織のポケットに入れていたスマートフォンが微かに振動した。メッセージの通知だったが、その音がわずかに響いてしまった。黒川がその音に気づき、周囲を警戒し始める。
「誰かいるのか?ここは立ち入り禁止だ」と黒川が声を張り上げた。
香織と涼介は身を潜め、息を潜めた。幸い、黒川はその場を離れず、再び取引に戻った。
「危なかったな。もう少しで見つかるところだった」と涼介が息をついた。
「ええ。でも、今の会話は重要な手がかりよ。次の取引についてもっと情報を集めないと」と香織が応じた。
取引が終わり、黒川と相手が倉庫を離れると、香織と涼介は慎重に倉庫内に入った。彼らが交わしていた書類がいくつか残されており、香織はそれを手に取った。
「この書類、次の取引の詳細が書かれているわ。これが証拠になる」と香織が言った。
「よし、これで黒川の不正を暴くための決定的な証拠が揃った。警察に渡して、彼を法の裁きにかけよう」と涼介が決意を示した。
香織と涼介は手に入れた書類を持ち帰り、警察に証拠を提出する準備を始めた。彼らの調査は実を結び、山田の命を懸けた行動の真相に一歩近づいた。
「山田さん、私たちはあなたの意思を継ぎます。真実を明らかにして、正義を貫きます」と香織は心の中で誓った。
こうして、香織と涼介は次の行動に向けて動き出した。黒川の不正を暴き、山田の名誉を取り戻すための戦いは続く。
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